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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
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主との戦い

 作戦が開始し、俺は今だ空を見上げる砂竜へと向かう。その間にリーデスやパメラは地上と空に展開し、魔法陣を構築する準備を始めた。

 この間に砂竜が動き出せばまずいことになるし、魔力に反応する可能性もある……のだが、そのフォローをエーレやアミリースがやるらしい。


「ひとまずリーデス達が準備を終えるまで私とアミリースで牽制役をやる」


 そう述べた後、彼女達は砂竜へと向かった。俺はその後ろにつける形なのだが……、


「正直、近づいてどうにかなるとは思えないよな……」


 というか、接近して大丈夫なのだろうか? 魔力強化によって移動し砂丘の上に立つと、砂竜の全景が見えた。

 巨大な砂漠を突き破り姿を現している胴長の魔物。見上げるほどの体躯ではあったが、やはりそれは一部分であり、おそらく体の大半は砂に埋まっているようだ。


 とはいえ頭部を破壊すれば機能は停止するはず……その時、砂竜が動く。視点を変え、何かを探すような動きをした。

 餌でも探しているのか、それともエーレ達の魔力に反応したのか……エーレによるとこれほどの砂竜になった場合、最早他の砂竜とは身体構造からして違うらしい。


 そもそもあれだけの巨体を維持するだけの食料がこの砂漠には存在しない……普通の砂竜は魔物の一種であるため魔力を得られれば生きながらえることができる。通常の個体であれば砂漠の生物などを喰らうなどして維持できるのだが、大きくなると無理だ。

 よって、あれだけの大きさになると地中に存在する魔力を取り込んで生命を維持するようになる……地上に出ることなく地中にいるのもそのためで、しかも余計な力を使わないようにできる限り動かずにいるらしい。


「ただし、勇者セディによってどうやら目覚めた……というより、警戒したという方が正しいか」


 そうエーレは作戦説明の間に語った。


「長らく外敵など存在していない場所だ。砂竜の王とも言える存在は、その変化に少しばかり警戒をしたのだろう。といっても現段階ではあくまで様子を見に来たくらいのものだが、魔力を発する人間がいるのなら狙ってくる可能性は十二分にある」


 動きが緩慢なのは、目覚めて間もないため動くための準備をしているため、とのこと。


「あの大きさで俊敏ならばあなた達を助けることはできても遺跡崩壊は免れなかったが、図体がでかいからこそ動きが鈍い。砂竜としては外に出たはいいが、できる限り体力を消費したくないため、目標を定めて動くつもりなのだ……というのも、あれだけ大きい状態で派手に動けばそれだけで相当な体力を消耗する。地中に戻れば魔力を取り込めるわけだが、その間に消費するエネルギーは膨大であり、砂竜としては仕損じるわけにはいかないのだ」


 そうした言葉を思い出す間に、エーレ達が砂竜へ迫る。そして彼女とアミリースは軽やかに空中を駆ける。

 空中浮遊というよりは、空中に足場を作って上っていくという感覚に近い動き。うん、あれなら砂竜の上にも到達できそうだな。


 程なくしてエーレ達は砂竜と対峙……正直このまま勝負が決してもおかしくない状況だが、エーレとしては倒しても遺跡に被害が出る可能性がある……よって作戦まで時間を稼ぐつもりのようだ。

 大丈夫なのか、と考えてしまいそうになるが、正直俺が心配する方がおこがましいか。何せこの世界における最強の戦力……魔王と女神なのだ。むしろ俺が大丈夫なのか心配されるくらいだろう。


 砂竜が口を開ける。何をするつもりなのかと思った矢先、砂竜の頭部に魔力を感じた。


 直後、その口から音が漏れる。雄叫びのようなものであるとわかったが、それはまるで音で生物を殺すような兵器――砂漠が鳴動し、声を直撃していないにもかかわらず、全身が強ばった。

 なおかつ魔力を含んでいるため、直接当たれば殺傷能力もあるだろう……無論のこと魔王や女神には通用しないが、砂竜はそれによりさらに警戒したようだ。


 その時、足下から地鳴りが。たぶん声に反応した砂竜……そう思った矢先、俺は地を蹴った。そしてアミリースから受け取った腕輪により、空中浮遊を行う。

 刹那、俺が立っていた場所の周辺から砂竜が多数出現する。大きさはそれほどでもない……いや、訂正しよう。巨大な砂竜を見て感覚が麻痺してはいるが、現われた個体は俺が倒したほどではないにせよそれなりのものだった。


 俺はリーデスやパメラに視線を移す。双方は最速で準備を進めている様子ではあるが、まだ多少時間が必要みたいだ。となれば、


「あっちの砂竜を倒すか……!」


 剣を振る。刀身に乗せた斬撃は魔力の刃と化し、砂竜へ直撃した。

 悲鳴が上がる。不意打ちを食らったためか直撃した砂竜はそのまま倒れ伏した。途端、周囲にいた砂竜達が一斉に俺の方を見る。


 空中に浮いているので喰われる危険性はないだろうけど……そんなことを思っていると、遺跡側から援護が来た。クロエとレジウスだ。


「そらっ!」


 クロエの大剣が一閃する。手近の砂竜に刃が入ると、勢いそのままに振り抜き、両断する。


「さすがだな」


 称賛しながらレジウスもまた交戦を開始する。彼の剣戟は一撃はそれほど重くないが正確無比で、確実に砂竜の体を抉り、仕留める。


「やれやれ、前線に駆り出されてしまったか」


 どこか面倒そうに語るレジウスだが、目つきは鋭く警戒を怠ってはいない。


「セディ、準備までまだ多少なりとも時間が必要……遺跡には勇者ディクスがいるからたぶん大丈夫だとは思うが、ここで砂竜の数を減らしておきたい」

「なら俺は空中から援護するよ」

「その腕輪便利そうよね。私にもくれないかしら」


 クロエは語りながら近くにいた砂竜を打ち倒す。それにより生じた隙は、レジウスが埋める形。いつの間にやら上手く連携できるようになっているな。

 よし、俺も――そう思いながら魔力の刃で砂竜の一体を撃破。倒すペースは早いとはいえ、数が結構多い。この場で全てを倒すというのは難しい。


 ただ、こちらの動きに反応し向かってくる砂竜もいるのだが……やはり遺跡へ突き進む個体も。そちらについてはディクスに任せることにして……俺は目の前の敵に集中することにした――


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