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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
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真実の受け止め方

 以降、絵については似たような図柄ばっかりだったので、入口に戻って報告を行う。全員例外なく驚愕し、レナについては口元を手で覆い絶句していた。


「……さて、この遺跡に辿り着き色々と情報を得たわけだが」


 俺は座り込み、仲間達へ相談を開始する。


「この話、到底信じられるものではない……が、今までの常識はあくまで人間である俺達の主観的なものだ。魔王達が自分達こそ悪だと思わせることが目的ならば、俺達は術中にはまっていることになる」

「まず、敵が何なのかを整理しなければいけませんね」


 カレンが述べる。俺は頷いて仲間を見回し、


「過去に生じた戦争を考えれば、最大の敵は自然そのもの……そうなってしまったのは魔王と神が争ったせいだけど……ともあれ、両者はこのまま戦えば世界が無茶苦茶になると判断し、共に手を取り合ったというわけだ」

「その関係は、今も続いていると?」


 質問はロウ。半信半疑といった様子だが、これは無理もない。


「まあたぶん、そういうことなんだろうな……で、この話が本当なのかを確かめるには、一度ジクレイト王国へ戻る必要がある」

「そこで陛下に一度話を聞く……ですか」


 レナが小さな声で俺に告げる。


「陛下に今回の成果を聞かせれば、本当のことを喋り出すかもしれないと」

「そういうことだ。俺達がこの事実を受け止めていることをきちんと説明すれば、魔族か天使に会わせてもらえる可能性はある……そうなったら、確定だな」

「信じられないけど、そういう形で確かめるしかないってことか」

「……そういえば」


 ふと、ミリーは思い出したように告げる。


「魔族ベリウスと戦った後、王様が堕天使と話をしていたって情報を得て、実際そうだったけれど……」

「あれも魔王側と連絡をしていた、のかもしれない……俺はあの時正確な情報を得ることは失敗したけど、上手く魔族側が手を回したってことなんだろうな」


 こちらの返答にミリーは口元に手を当て思案し始める。遺跡で得られた情報を基に、色々と考察しているようだ。


「疑問なのは、ルウレがこの情報を得てなぜ勇者バルナを……」


 ここで疑問を口にしたのはカレン。うん、カレン達にとってそこが謎になってしまっている。


「カレン、そこは正直本人に訊いてみなければわからないけど……今は牢屋の中だ。安易に会えるわけもないし、ひとまず捨て置くしかないな」

「そうですね……兄さん、今後はジクレイト王国へ戻る、ということでよろしいのですか?」

「そういうことになるな……また同じ場所に戻るってことで長い道のりだけど、今度は真っ直ぐ目的地へ向かうだけだから行きの旅路よりは短い。依頼達成まで頑張ろう」


 俺の言葉に全員が頷く……さて、たぶんどこかのタイミングで俺達を城へ連れて行ってくれる存在が現われると思うのだが……。


「出発はどうする? 明日にするか?」


 レジウスが設営されたテントを指差しながら問い掛ける。俺は首肯し、


「遺跡探索で時間を使ってしまったし、食料も余裕はあるから今日のところはここで休もう」

「そうだな……危険もなさそうだし、今日一日は遺跡内で涼んで体を休めようか」

「ああ。皆はその間に頭の中を整理しておいてくれ……多少なりとも混乱しているだろうし」


 というわけで仲間達は行動を開始する。休む、といって座り込んだのはフィンやレジウスくらいで、他は遺跡をじっと見据えていたり、あるいは魔物がいないとわかったことでもう一度絵を見ようとする人物……ミリーなどもいた。

 俺はどうしようかと少し悩んだ後、仲間達にどういう思いを抱いているか尋ねてみようと思った。


 まずは遺跡の入口に座り込むフィンから。


「フィン、体の調子は?」

「問題ない。今すぐに出発でも平気だ」

「それは良かった。ここまで病気や怪我なんかもなく来れているけど、帰りだって気をつけないといけないな」

「確かに……で、セディとしては衝撃的だっただろ」


 フィンから水を向けてきたか。


「……まあ、遺跡の情報が真実なら、勇者という存在は根本からアイデンティティが崩壊するわけだから、な」

「崩壊とまではいかないだろ。嫌な言い方だが、魔王や神から与えられた使命……魔物討伐というのがあるわけだし」

「勇者という存在を生み出すシステムがある以上、この真実を漏らしたらとんでもないことになるだろうな」

「目標としていた存在を倒しちゃ駄目、だからな……」


 ここで、フィンは苦笑。


「ただ、セディが意外に冷静なのが面白い。勇者クロエとか勇者ロウとかもそうだが、存外取り乱していないんだよな」

「まだ情報を頭の中でまとめきってないだけさ……実際、今後どうすべきかとか、悩む未来が見えるな」

「セディは別に変わらなくてもいいだろ……それに今回の仕事で潮目が変わったのは事実。女王アスリと話をした結果、神とかと話をして仕事をもらうとか、そういう展開まであり得るぞ?」


 俺は実際それに近いことをやっているので、フィンの言及はほぼ真実だよな……。


「ま、内容的にヤバい展開にはならなそうだから、俺は逆に安心した。一生追われる身とかになったら、さすがに勘弁だったからな」

「そうだな……けど、この真実をあまり漏らさないようにしているのは理解できる。下手すれば記憶を消されるかもしれないな」

「その時はその時、じゃないか? ま、ここで女王アスリと話し合う際、どれだけ上手く立ち回れるかだな」


 陽気に語るフィン。真実の内容としてはそう厳しいものではなかったので、安堵しているという感じか。

 内心では面白くないと感じている可能性は否定できないけど……俺の前でそういう不平不満を言わないので、とりあえず考慮しなくてもいいか。


 ならば、と思い俺は別の人に視線を移す。勇者ロウやケイトの姿がない。

 アミリースやパメラはいるので、二人で遺跡内を確認しに行ったか……それじゃあ次は二人にしようかと思い、歩き始める。


 少しして、最初に絵を見つけた小部屋の入口に二人がいるのを発見。どうやら絵を確認した後らしい。


「……あ、セディさん」

「ロウ、ケイト。二人に色々と話を聞きたくて……今回の件、どう思った?」


 問い掛けに二人は沈黙。それは数秒程度のものだったが、俺にとってはずいぶん長く感じるもので……やがて先に口を開いたのは、ロウだった。


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