表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
323/428

砂漠の戦い

 始めて踏み込むという砂漠に対し、俺達は万全かどうかはわからないがそれなりに準備を行った。結果として入り込んだ一日目と二日目については特段問題なく進むことができた。


「昼と夜の温度差が一番体に堪えるかな……」


 そんな感想をフィンが述べる――現在、俺達は装備を砂漠仕様に変えており、武器を除き金属製の物は身につけていない。一応耐久性のある装備にはしているのだが、魔物と交戦した場合は怪我しないように注意しなければならない。


「ただ、しっかり情報を集めたことで砂漠における問題は事前に対処できているな」

「そうだな……後は食料と水が尽きる前にオアシスに辿り着けるかだ」

「そこが一番問題だよなあ……」


 砂漠を突き進む以上、迷ったら終わりなので常に死がつきまとう状況。最悪シアナ達やアミリースの支援があるから問題ないとわかっているが、気を引き締めなければならない。

 仲間達も自然が相手である以上、仲間達も細心の注意を払ってはいるが……遺跡へ辿り着くまでずっと張り詰めていることは難しいだろうし、かなり疲労も溜まっているはずだ。


 ジリジリと肌を焼くような暑さが衣服を通して実感しつつ、俺達は砂漠をひたすら進む。大きい砂丘がいくつかあり、時には迂回し時にはそのまま直進するような案配だが、現状アミリースが言うには問題なく進めているとのこと。


「さて、もう少しで辿り着くはずだけど……」


 アミリースは前方を見据えながら呟く。砂漠に入って三日目。予定では今日遺跡へ辿り着くことになっている。

 魔物などと遭遇することもなく、俺達はここまで来たわけだけど……たぶん魔物よけとか密かに使っているとは思うけど、大型の魔物とかには通用するかどうかわからないし、運も味方になっているのだろう。


 俺達は一つ砂丘を越える。その先に見えた似たような砂丘を見て、アミリースは声を上げた。


「あ、見えた。あの砂丘の向こうにあるわ」


 確信に満ちた声。正直地形は全部同じように見えるのでその確信は本当なのか疑ってしまうくらいなのだが……、


「あと少しってことか……ただ、ここからが長そうだな」


 目に見えた先みたいだけど、まだ距離がある。今は朝の時間帯だけど、辿り着くにはたぶん昼前くらいになりそうな雰囲気。


「とはいえ、まだ油断はしないでね」


 アミリースが述べる。それに仲間達が全員頷いた矢先――異変は起こった。

 ゴゴゴ、と足下から何か足を震わせるような感覚が。一瞬地震かと思ったが、シアナ達はそれが何なのか理解できたらしい。


「魔物、ですね」


 地中にいる魔物刺激したってことか。


「いきなり砂が巻き上がってデカい魔物に食われるとか、そういう可能性はないよな?」


 フィンが少し怖々としながら声を上げる。それに対しアミリースは、


「魔物探知の魔法を使っているし、大型の魔物が近づいてきたらこちらも察知はできるからそうはならないけど……魔物と距離はあるけれど、私達が砂漠の上を歩くことで、気付いてしまったのかも――」


 彼女が言い終えぬ内に、真正面の地面が突如、盛り上がる。何事かと剣を抜き放った直後、砂が派手に舞い上がった。

 カレンやシアナ達が魔法準備を始める中で、砂塵を巻き上げ魔物が姿を現す……それは砂漠の荒涼とした色の鱗を持つ、砂竜だった。


 胴長かつ、まるで砂漠を海のように泳ぐ巨体の竜。その視線の先には明らかに俺達。アミリースの語った通り、砂漠を歩む俺達の足音などを察知したのか。

 そして、砂竜は明らかに敵意を放っている……これは間違いなく、


「やるしかなさそうだな」

「けど近づかれたら誰かが食われてお仕舞いよ」


 と、横にミリーがやって来て助言する。


「あれだけの巨体を接近させたら、例え倒したとしても体の下敷きになるとかだってありそう」

「なら、接近される前に仕留めるしかないな」


 ここで俺はアミリースに首を向ける。


「ただ、俺が全力出して倒す場合……他の魔物を刺激しないか?」

「可能性は十分あるわ。けれど、だからといって目の前の砂竜を無視することはできないし」


 いざとなれば、シアナ達が上手く動いてくれるかな……よし、ここは、


「なら俺がやる……他の皆はフォローに回ってくれないか?」

「わかりました」


 カレンが先んじて応じる。他の仲間達も異存はないようで、戦闘態勢に入りながら魔力を高め始めた。

 刹那、砂竜も反応する。それにこちらも剣に魔力を集中させると同時、砂竜は口を大きく開け、雄叫びを上げた。


 巨体にふさわしい太く、どう猛な音。その声は俺達の体さえも震わせるほどのものであり、この声で他の魔物達だって動き出しそうな雰囲気だ。

 俺はシアナ達を見据える。それにディクスも彼女も小さく首肯。何かあってもこちらが――というわけだろう。


 視線を戻す。砂竜がいよいよ突撃を開始しようとする。それに対し俺はさらに魔力を高めると同時、白波の剣を放つべく剣を構えた。

 俺が剣を掲げ、技を放とうとした――それに応じるべく砂竜もまた動き始める。蛇のように胴体をくねらせてこちらに迫る様は大きさもあって相当迫力がある。


 ただ、動きは直線的で俺としても狙いを定めやすい。よって、こちらは容赦なく全力で剣を振り下ろした。それと共に地面に剣の魔力が迸り、砂竜と相対すべく駆け抜ける。

 直後、轟音が周囲に轟いた。粉塵を発生させ砂竜の姿を覆い隠す。


「直撃はした……な」


 間違いなく砂竜の頭部に当たった。俺は気配を探ってみるが、少なくとも近づいてきそうな気配はない。


「たぶん、今ので倒せたと思います」


 シアナがそう呟いた。こちらは「良かった」と小さく答えながらも、警戒は一切緩めない。

 派手な攻撃であったため、地中にいる他の魔物を刺激した可能性は高い……オアシスへ辿り着く前にどうやら面倒な試練が現われてしまったが、やるしかない。


「全員、戦えるか?」


 確認の問い掛け。仲間達は全員頷き、戦意をみなぎらせる。

 士気は高く、問題はなさそうだ……やがて砂煙が晴れる。俺達へ向かってこようとした砂竜は横倒しとなり、動かなくなっていた。


「倒したようだな」

「頭部が裂けているから、おそらく大丈夫」


 アミリースが補足。一撃で吹き飛ばすことには成功したが……どうやら第二陣がある。

 理由は明白――足下から、微弱ながら震動を感じ始めたからだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ