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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
322/428

仲間の提言

 アミリースを加えた旅は順調で、砂漠の前までは特に問題もなく進むことができた。そして砂嵐が生じているということで少しばかり町で立ち往生ということに。


「数日で止むとのことだから、まあ待てばいいでしょう」


 そう語りミリーは水を口に運ぶ。


 現在俺とミリーの二人で町を散策し、昼食をとっているところ……ちなみにカレンなどはアミリースと一緒に行動している。どうやらアミリースがカレンなんかを誘っているため。これは試練的な意味合いではなくカレン達がどういう存在なのかを知るためにやっていることなのだろう。


「砂漠については焦る必要もないし、路銀もあるしゆっくり待てばいいでしょう」

「そうだな……しかし今回の相手は自然だ。ある意味魔物なんかよりも厄介だし、準備をしたとはいえ大変そうだ」

「アミリースさんを捕まえられて良かったわね」


 コメントに俺は頷き……一つ質問を行った。


「ミリー、アミルについては結構仲良くやっているみたいだけど」

「あら、あっさり信用するのがまずい?」

「いや、そうじゃない。ほら、シアナを仲間に加えた時、ちょっとばかりいざこざがあっただろ?」

「ああ、前例があるからか」


 と、ミリーは苦笑する。


「少なくともカレンの機嫌が悪くなったわけではないし、それにアミルさんの言葉は説得力があったしね。それに勇者ロウの知り合いとくれば、渡りに船って感じよ」

「そうか……」

「ただ」

「……ただ?」


 聞き返すとミリーは肩をすくめ、


「あの人に戦闘能力とかはなさそうだから、守ってあげないと。その辺りがネックと言えばネックかな」


 ……一番心配しなくていいんだけどな。女神だし。無論その辺りのことを説明するわけにはいかないので、俺は同意するように頷き、


「人数も多いから砂漠で魔物と出会った場合、どう立ち回るのか決めておいた方がいいかもしれないな」

「ああ、そうね。具体的に案はある?」

「そもそも砂漠で交戦なんてしたことがないからな……それに気候条件とか懸念は色々とある」

「アミルさんが戦闘経験あるわけでもないから、ここは私達が頑張らないといけないわね」

「ならそれに関して情報を集めようか。さすがに砂漠で魔物と戦った経験を持つ人なんて少ないと思うけど、やれることはやっておいた方がいい」

「決まりね。それじゃあこれ食べたら早速行動開始するということで」


 ミリーは語りながらパンを口に運ぶ。話はまとまったので俺は一時沈黙したのだが、


「……ねえ、セディ」

「どうした?」

「この仕事が終わったらだけど……いや、無事に終わったらだけど」

「縁起でもない……終わったら、どうした?」

「一度故郷に戻らない? あ、別に今の仲間達と別れるわけじゃないけれど」

「ミリー達は俺が一度姿を消してから戻ったんだったか?」

「そうね。郷里の皆はセディのことを心配していたわよ。カレンが文を送ってセディの無事を伝えていたからその辺りで気を揉んでいることはないと思うけど」


 ……その辺については俺も全然配慮できなかったな。


「けど、心配させたのだから顔を出しなさいよって話」


 うん、ミリーの言葉は理解できる……けれど、


「ああ、確かにそうだな」


 俺はそう返事をする。しかし俺のやっていることや大いなる真実に関する説明をすれば、故郷に帰るような暇もなくなるだろう。

 少なくとも、勇者ラダンとの戦いを終えるまでは……それがいつになるのかわからないのだが――


「……この仕事の結果も加味しないといけない」


 そう俺は前置きをする。


「だから確約はできないけど、落ち着いたら顔を出すことにするよ」


 もし勇者ラダンとの件が落ち着いたら……エーレの許可も出るだろうし、故郷に戻ることができるだろう。


「そうね。で、セディ。もしよければそこで一度腰を落ち着けてもいいんじゃない?」

「旅を止めると?」

「色々と旅をして、セディは十分頑張ったと思うし」


 ……ミリーの視点からは魔王を倒すことはできていないけれど、十分やったからこの辺りで剣を置いてもいい、なんて考えているのかな?


「……なあ、一ついいか? 以前のミリーならもっと頑張れと語るくらいだったはずだが、どういう風の吹き回しだ?」

「別に私はセディに魔王を倒すまで頑張れとか言うつもりはないわよ。けど、魔族を倒し続けて……少し、休む時間も必要かなと思っただけ」


 純粋に心配してくれているのか……もしかするとこれはミリーだけの意見ではなく、カレンやフィンといった仲間達の総意なのか?


「カレンとかはどう思ってるんだろうな?」


 その問い掛けにミリーは首を傾げ、


「どうだろうね。けど、カレンもフィンも少しを体を休める時がいるんじゃないとは語っていた」

「……そうか」


 俺はそう相づちを打った後、


「心配してくれてるのはわかるから、意見を参考にさせてもらう」

「ええ、そうね……さて、それじゃあ改めて聞き込み開始といきましょうか」

「そうだな」


 俺達は揃って店を出る……とはいえ、なんというかミリーの提言と俺が真逆に進んでいるんだよな。

 少しは休むべき、と言っているのに俺は決戦のために頑張っているからな……もちろん勇者ラダンとの一件が長引く可能性もあるのだが――なんとなく予感もある。


 ――勇者ラダンとの戦いが近いのでは。そう経たずして決戦になるのでは。


 神や魔王に監視されている以上、ラダンもさすがに限界が来るだろう。それは相手もでわかっているはずであり、今のような膠着状態はそう長く続かない。

 そんな予感を抱きながら俺はミリーと聞き込みを開始する。同時になんとなく感じ始める。もしかすると、この砂漠越えを終えた時、戦いが始まるのではないか――


「セディ、どうしたの?」


 ふいにミリーが問い掛けてくる。少し考え込んでしまったらしい。


「いや、なんでもない……さっきの話が気になっただけだ」

「そう」


 素っ気なく返答するミリー。たぶん俺がどういう決断をするのか待っている感じかな。

 俺は思考を中断し、怪しまれないよう聞き込みに集中することにする――そうして町に数日滞在し、俺達はいよいよ砂漠へ挑むこととなった。


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