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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
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とある再会

 ルウレの件が片付いたことで、いよいよ本題に入ることになるのだが……シアナ達もここから様々な準備をしているようで、見るからに忙しなくなった。

 表向きは砂漠へ入るための準備なのだが……どうやら密かに色々と動き回っている。仲間達はそれに気付いていないのは当然なのだが……ここはさすがといったところだろうか。


 一方で俺やクロエについては仲間達と一緒に買い出しやら情報集めに動くのでそう暇というわけではないのだが、カレンやミリーとゆっくり食事するくらいの余裕はある。


 そうした中で、俺はシアナに一つ指示をされた。大通りを勇者ロウやケイトと共に歩いてくれ、というもの。

 何があるのだろうと内心思いながらも、俺はロウとケイトを誘い町中を歩く。大通りを進んでいればいいというだけの指示なので、二人と会話をしながら散策することにする。


「セディさん、準備は順調ですか?」

「ああ。ロウ達は?」

「こちらも指示を受けた内容については問題ないです……なんというか、緊張しますね」


 そう語るロウは、肩に力が入っている様子。


「砂漠……何が起こるかわからない場所のようですし」

「現時点でこういう感じなので、もう少し肩の力を抜くように言ってるんですけど……」


 ケイトが苦笑しながら語る。俺も同意見だったので、


「ロウ、出発はまだ先だぞ」

「はい、わかっているんですが……」


 本人も苦笑するくらい。そんな様子をどこか微笑ましく眺めていると……ふと、視界に見知った人物が映った。

 それを認めた瞬間、このことかと俺は深く認識した。


「あ……」


 わざとらしく声を上げる。次いでロウやケイトも気付き――


「……え?」


 ロウの声、どこか信じられないという声音が混ざっていた。一方でケイトも言葉を失い、一点を凝視する。

 対する相手は……同様の所作を見せる。ただし相手方は十中八九演技だろう。


 そして話し始めたのは……ロウ。


「……パメラ」

「久しぶり、ロウ」


 微笑みを浮かべながら語る女性……パメラ。その傍らには彼女をロウの故郷から連れ出した存在、アミル――もとい、女神アミリースがいた。


「こんなところでどうしたの?」

「俺は仕事で……そっちこそ、どうして?」

「えっと、力について色々調べる内に、ここの研究機関がやっていることが、制御のきっかけになるって話で」

「以前と比べてずいぶんとたくましくなったみたいね」


 嬉しそうにアミリースは語る。それに対しロウは、


「まだまだですよ……えっと、その」

「そうね。こうして再会できたのは何かの縁でしょう。三人で話をしたら? セディ、その辺りはどう?」

「ああ、構わないよ。ロウ、ケイト、行ってくるといい」

「ロウはパメラと二人っきりになりたいんじゃない?」

「ケイト、お前なあ……いや、三人で話そう」

「うん、私はそれでいいよ」


 以前と比べて晴れやかな微笑で応じるパメラ。そして俺へ視線を向けると小さく会釈して、三人で場所を改め話をするべく移動を始めた。


「……パメラは、知っているのか?」

「ええ。色々と彼女に試練を課した結果、話しても問題ないと判断したわ」


 俺の質問にアミリースは明瞭に答えた。


「ひとまず現状では力の制御については問題なくできているわ。それと今後、魔界との連絡役を任せる可能性もある」

「エーレとしては構わないだろうけど、他ならぬパメラは大丈夫なのか? 魔王相手に萎縮しないか?」

「面通しは済ませてあるのよ」


 いつの間に……と思いながらもそれについては口を挟まず、


「それなら大丈夫か……えっと、パメラやアミリースも同行するってことでいいのか?」

「ええ。私のことはシアナと知り合いってことにしましょう」

「わかった。その縁で俺はアミリース……ではなくアミルと知り合いってことで」


 そう述べた後、俺は少し緊張を伴い、


「カレン達に対する試練は、アミリースも審査するのか?」

「私は単なるフォロー役。魔界側の存在ばかりでなく、神側の存在がいた方が良いということで」

「だったら天使とかでいいんじゃ……なぜ女神が?」

「私が申し出たの。口出しはしないけれど、私自身あなたの仲間達がどういう人なのかを見たかったから」


 ……なんだかこっちが緊張してくるな。


「といってもそう心配しなくていいと思うけれど」

「そうかな……パメラのことを知ったらロウ達はどう思うのか……」

「それについてはエーレ達もフォローしきれない部分だから、私がどうにかする」


 ……きっと、アミリースを始め神々も今回の試練に対し神経を張り詰めているのかもしれない。


「そっか……シアナ達に加え女神までいるんだ。道中危険はなさそうだけど……」

「砂漠の中にある遺跡へはそう問題なく行けると思うわ」

「そっか……そこからの流れは俺も聞いていないけれど、アミリースは知っているのか?」

「ええ」


 答えながらアミリースは手で俺達の宿がある方角を示した。


「まずはあなたの仲間と顔を合わせたいのだけれど」

「わかった……ここに来て仲間が増えるわけだな。でも、砂漠へ同行するって話になると、すぐには同意しないんじゃないか?」

「そこは大丈夫。私は砂漠を調査したことがあるって説明するから」

「……怪しまれないかな」

「上手く丸め込むから心配しないで」


 自信たっぷりに語るアミリース。他ならぬ女神の言うことである以上、俺としてはただ同意する他ないな。


「わかった……紹介と助力できるということだけは伝えるから、後は任せた」

「ええ、任されたわ」


 ――なんというか、楽しそうに語るなあ。


 ふと、もしかするとこの試練を見に来たのは、面白そうだからなんて理由も少なからず含まれているのかもしれない。

 視線を送るとアミリースは微笑で応じる。それが俺が放った眼差しの問い掛けを誤魔化すものなのか、それとも「そんなことはない」という否定の意味合いを乗せたものなのか。


 ただ正直、女神の心理を読むなんて芸当が俺にできるはずもなく……無言に徹したまま、仲間達がいる宿へと辿り着いた。


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