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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
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作戦決行

 作戦予定日はルウレ達もおかしな行動をとることはなく、実行することに決定。そして夜、俺は行動する前にシアナと一つ打ち合わせを行う。それはルウレとの対決について。一応作戦の流れができているのか気になったので質問したのだが、


「そこについては既に段取りができています。ルウレとの戦いについては、任せてください」

「そっか……ちなみにダナーが何をやっているかについてはわかっているのか?」

「はい、もちろんです」


 全ては魔王達の手のひらの上か……なんだかルウレ達が気の毒に思えるな。


「それは教えてくれなくてもいいんだけど……放置しておいたらまずいんだよな?」

「彼らが勇者バルナに何をしたかを思い出して頂ければ」


 なるほど、それに近しいことってわけか……そういうことなら遠慮無く俺達もやれる。


「シアナ達も参加するけど、何かあったらフォローするってことでいいんだよな?」

「そうですね」

「わかった。そして残る懸念は勇者ラダンについてだけど」

「こちらに来る確率は極めて低いでしょう」


 そうシアナは返答する。


「ゼロとは言えません。しかし勇者ラダンは私達の存在に気付いている可能性は十分あり、わざわざ危険を冒してこちらに接近してくる可能性は低いかと思います」

「そうだな……ということはルウレに注意していればいいか」

「はい。何か問題が生じればこちらが対処します」


 頼もしい言葉。そういうわけで俺達は解散し、改めて作戦行動に移った。


「セディ、気をつけなさいよ」

「ああ、わかってる」


 ミリーとシアナと分かれ、俺は一路ダナーの家へと向かう。メンバーは俺とクロエにカレンとディクス。他の面々は宿で待機という形に。

 夜ではあるが、これまでの調査により地図は頭の中に入っている。よって迷うことなく俺達はダナーの家へと到着した。


「明かりはついているな……さて、いくとしようか」


 クロエやディクスは頷く。そうして俺を先頭にして、家へと接近。

 周囲に人影はなく、俺達の存在が見咎められるようなこともない……ではここで手順を確認しよう。


 普通に家のドアをノックして、開けたところを俺達が押し入る。とはいえさすがに大声を出されたら面倒なので、カレンは即座に遮音の魔法を行使する。


 そこから家を調べて尋問をする……というのがひとまずの流れ。やっていることは完全に悪役なので、大丈夫なのかと思ってしまうのだが……まあこちらには勇者バルナのことについて尋ねるという大義名分もあるし……とはいえ強引なのは間違いない。カレンやミリーも危ない橋だとわかっているはずだけど、ついてきてくれるのが――


「兄さん」


 その時、ふいにカレンが俺にささやくように告げた。


「兄さんのやっていることは……間違っていないと思いますから」


 まるで俺の心を見透かすような発言だった。それに対しこちらは小さく頷く。

 たぶんカレン達なりに結論を出してのことだろう。あるいはシアナやディクスのフォローなんかがあったのかもしれない。


 ともかく、俺達は多少無理をしているが真相究明に迫る……そして扉の前に立ち、ノックを行った。

 少しだけ間があったのだが、足音が聞こえてくる。


「……はい?」


 そうしてダナーは扉を開いた――同時、カレンが魔法を使用する。


 それがどういった効果をもたらすものかわからないとは思うが、魔力を感じたことでダナーは反射的に扉を閉めようとした。

 だがそれを俺が抑え、さらに足を入れて閉められないようにする。


「な、何だあんたら……!?」


 声を張り上げるダナー。それと同時、彼は俺の顔に気付いたらしい。


「お前は……!!」

「どうも、ダナーさん」


 名を告げると同時に扉を押し開き、彼の両肩をつかんで無理矢理家へと入る。一番後方のディクスが扉を閉めると同時、俺は中を確認した。


 長屋のような家なので、当然ながら室内は狭い。魔法の実験をやるような広さはないはずだが、それでも確信することが一つ……魔力を感じる。

 それも部屋の至るところに。なおかつ家屋の壁面には何やら魔法陣が描かれた壁紙が。たぶんだけど、周囲に魔力が漏れないようにする処置か何かだ。


 そして打ち合わせ通り――クロエが扉を見張り、カレントディクスが家の中を漁り始める。


「お、お前らは一体……!?」

「勇者バルナのことについて」


 俺がそう告げた瞬間、彼は体をビクリを震わせ動きを止めた。


「情報が回っているだろうが、真実は違う……勇者バルナに施した魔法について、話してもらいたい」


 こちらの要求に対し、ダナーは顔を青くし始める。まずい――そう心の中で呟いているのが明瞭にわかる。


「と、いっても馬鹿正直に真実を伝えてくれるとは思っていない。だからこっちである程度調べた上で、話をしようか」

「お、お前達の目的は何だ……?」


 ダナーの問い掛けに俺は相手を真っ直ぐ見据え、


「勇者バルナは異形へと変化した……こう言えばわかるだろう? ちなみに言っておくが、そちらが関与していることは承知した上で言っている」


 ダナーは沈黙する。言い逃れはできないのだと悟った様子。


「……これは」


 そうした中でカレンが一つ呟いた。何か当たりを引いたのか?

 即座にディクスが近寄り確認していく。部屋の隅の方で何やらやっているみたいだが。


「俺達を、どうする気だ?」


 さらなるダナーの問い。それに俺は、


「あんなことがまともであるはずがない……そちらが国と手を組んでいるのかは知らないが、そちらの実験を白日の下に晒せば、どういうことになるのか――」

「そ、それは……」


 しどろもどろになる。どうやら後ろ暗いことに加え、自分達を守ってくれるような強い後ろ盾はいないという感じだろうか?

 ともあれ、茫然自失となりつつあるダナーの様子を見れば、彼から話を聞くことは容易いだろう。


「お前の友人……というより協力者であるルウレが主犯か? それともお前がやったのか?」


 問いには何も答えない。だがその間にカレンとディクスがこちらに近寄ってくる。


「おそらく、これですね」


 実験がなんなのか、ということについてだな。俺は相手をつかんだ状態でカレンが差し出したものを見た。



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