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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
313/428

至った結論

 翌日からダナーではなくルウレについて調査を開始……しかし、やっていることは非常に地味である。ただこういう作業を行わないと尻尾をつかめない以上は頑張らないといけない。

 というわけで今日もクロエと一緒に行動する……そういえばカレン達、俺が彼女と組んでいてもあまり文句など来ないな。


「私については立場的に大丈夫だと考えているのかしらね」


 そのことについて言及すると、クロエからはそんな返答が返ってきた。


「シアナさんと違うのは、私はセディに対し一定の信頼を置いているけど、どこか一歩引いた感じに見えるからかも」

「一歩引いた……?」

「セディと同じ勇者であるため、他の仲間とは違う雰囲気を出しているってこと」


 俺はそう感じないのだが……いや、もしかして、


「クロエ、わざとそういう空気を出していたりもするのか?」

「多少はね。セディから事前にあなたの仲間達について聞いていたし、特に妹のカレンさんが突っかかってくる可能性もあったから」


 シアナの時は完全にそれだったからな……そういう意味ではクロエは上手くやっているのか。


「……私が何もしていないと思ったの?」


 ふいにクロエが問い掛ける。そこで俺は一考し、


「その、多少は」

「……猪突猛進な性格なのは理解しているけどね。色々あったし、こういう世界に飛び込んだわけだし」


 ――彼女の頭の中には、魔王城へ踏み込んだ時からの記憶が蘇っているのかもしれない。結果的に、何の因果か大いなる真実を知って俺と共に仕事をしているわけだけど……。


「セディ、私と話をするのもいいけど、ルウレに注目しなさいよ」

「と、そうだ」


 視線を戻す。目線の先にはルウレの家。

 彼については現在動きはないのだが……と、家から出てきた。ただ時刻からすると、


「ダナーとの定期報告かしら」

「だろうな」


 追いかけると予想通り酒場に到着。それから他愛のない話をして、彼は家へと戻る。


「酒場と家を往復しているような感じかな……」

「そのようね」


 ――そこから調査を継続したのだが、食料の買い出しくらいで目立った動きがない。逆にそのあまりに行動していない様子が逆に奇異に映るのだが……、


「これはダナーがやっている研究的なものを任せ、本人は動いていないのか?」

「家の中で実験などをやっている可能性はあるけれど、資材などの買い出しすらないから、やっているにしろ机上の話なのかもしれないわね」

「なるほど、実務はダナーがやって、彼は理論的なものを詰めていると……そういうことなら可能性は十分考えられるな」


 とはいえ、家の中に入るのは難しそうだし、こればかりは予測しかできないけど。


「……クロエ、仮に動くとしたらどうすべきだと思う?」

「まずはダナーに照準を向けるべきね。実験をやっていることは資材を買い出ししていることからも確実だし」

「ただもしダナーに接触したら、十中八九ルウレも警戒する。つまり、短時間でルウレの所まで到達しなければならない」

「時間との勝負だけど、そう悲観的になる必要はないのではないかしら。ダナーを取り押さえて尋問して、そこからルウレの所へ……逃げる時間はさすがにないわよ」

「問題は彼らがすんなり話してくれるとは思えないけど……」

「ダナーが何をやっているかによっても変わってくるかしら。合法的な実験であったなら私達がお縄につく可能性だってあるけど」


 ……まあ、現時点では俺達の方が怪しいことをしているわけだからな。


「そこは考えても仕方がないな……ただ、酒場で意味ありげな会話をしていたくらいだし、正直合法的なものとは思えないけど」

「シアナさんを交えて相談してみましょうか」

「彼女がいけと言うなら、問題ないってことだもんな」


 なんだか卑怯な気がしないでもないけど。まあ俺達は事情を知らないにしても今回の作戦を遂行する側の人間だし、それでいいか。


「しかし、試練って気はしないけどな」

「シアナさん達は色々と動いているみたいだけど」

「え、そうなのか?」


 俺のところには情報回ってこないけど……と思っていたら、


「セディに話したら態度に出るからでしょう」

「ああ、確かにそうだけど……ということは、現在進行形で何かやっていると?」

「表立ってとか、そういうわけではないでしょう。たぶんだけど、カレンさん達の心情とかを聞いて回っている感じかしら」


 ……エーレ達にしても、今回の作戦そのものは絶対成功させたいってことなのかもしれないな。

 事実、ルウレとのことについては言わば前座みたいなもので、本命は魔王と出会った時だからな……。


「ひとまず今日、成果がなかったらダナーの所に踏み込んでみようか」

「そうね」


 結論を出し、俺達は観察を再開するけど――結局成果はなく、宿へ。


 で、ダナーについてはどうやら相変わらず資材を買い込んでいるようで、俺達は改めて相談し――結果として、ダナーと話をすることに。


「彼と接触したら短期決戦になる……覚悟はいいか?」

「はい」


 カレンが代表して返事。他の仲間達も同意見のようで……さらにシアナも承諾したので、そういう方向になった。

 以降、どういう風に動くかについて話し合いを進める。問題はルウレについて。ここで取り逃がしたらどうしようもないので、


「ルウレが家にいるのを確認してから動くってことでいいか?」


 その提案に仲間は同意。まずルウレの観察。そして家の中にいることを確認した上で、ダナーの家へと向かう。


 ルウレの監視についてはミリーがやる。彼女もまた似たような魔法を使えるので。ただ俺と比べて持続力は低いので、その辺りを考慮し、シアナなんかも帯同することに。彼女が持つ道具を使えば、魔力を供給できるらしいので。


 シアナが近くにいれば安心なので、この作戦で決定し、翌日行動に移すことにした。明日は酒場でルウレ達が顔を合わせる日なので、彼らの言動に問題が無ければ作戦を実行することにしよう。

 そういうわけで、今日は作戦に備えて眠ることに……ルウレとの対決ではどのような話になるのか。頭の中で色々と想像しながら、俺は宿で過ごすこととなった。


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