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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
312/428

膨らむ疑問

「仮に王様と関係を持っているにしても」


 シアナは俺達を一瞥しながら口を開く。


「それを用いて対処するのは最後の最後、といったところでしょう。現状はこちらが無茶をしない限りは大丈夫かと思います」


 彼女は提言すると同時に俺へ視線を一瞬だけ投げた。


 たぶん問題はないと言いたいのだろう。ルウレと城側とは繋がりがないか、あるいは王が大いなる真実を知っていて、既に協力済みか。万全を期すのなら後者だろうか。どちらにせよシアナがそう視線で主張している以上、何かあっても対処はできるということ。

 ならば、少し突っ込んだやり方をしても問題はなさそうか。


「……ひとまず、相手に気付かれないよう情報を集められるだけ集めよう」


 俺からの言葉。それに同調するかのようにディクスが口を開く。


「こちらも同意見だ……ただ大人数で動き回るのはまずいか」

「そうだな。とりあえず俺が彼らの身辺を探ろう。ただ場合によっては戦闘……さすがに町中でそういう事態は避けたいけど、万が一に備えて同行者……そうだな、クロエ、いいか?」

「実際今日も私と一緒に動き回っていたしね。いいんじゃない?」


 結果、カレン達もこちらの意見に同意し、今後の方針が決まる。カレンやミリーは都を見て回りどこに何があるのかなどを確認する役目を担い、買い出しなどはロウや他の仲間達に任せることにした。


「セディ、慎重になりなさいよ」


 ミリーからの助言。先走るなと言いたいのだろう。


「ああ、わかってる」


 頷き、作戦会議は終わる……気付けば一気に展開が進んでいる。ともあれやることは明確になったので、今までよりは精神的にも楽だ。

 その代わり、肉体的な大変さを伴うけど……そんなことを思いながら、俺達は行動を開始した。






 ルウレ達は進捗報告を一日おきにしているらしく、二日後にはルウレの後をつけることに成功し、その居所を割り出すことができた。ダナーについては普通の家だったのだが、ルウレについては屋敷とまではいかないが、柵に囲まれた小綺麗な一軒家だった。


 ただ、双方の家は例えば地下などに大規模な実験場があるといった風には見えない。特にダナーの家については長屋に近いもので、あれだと下手な魔法実験をすれば周辺住民が大騒ぎするだろう。

 問題はダナーのやっていることは、家なのかそれとも別所なのか……次はそこについて調べることになった。


「セディ、カレン達にルウレのことを調べさせないの?」


 隣にいるクロエが訊いてくる。ちなみに今日も魔法を使い二人で行動している。


「カレンやミリーも俺みたいな魔法を使えるけど、ルウレは魔法使いだからな。俺の方が気配を隠す精度が高いし、それに下手に行動してこっちの作戦通りに進まなかったらまずいだろ」

「そんなものかな……ま、ルウレ達が何をしでかすにしても時間がいるみたいだし、ゆっくりやればいいけど」


 そんな会話を行っている間に、ダナーが家を出る。今日は一日彼の行動を追うことにする。

 連絡は一日おきなので今日は酒場には向かわないのだが……まず立ち寄ったのは冒険者ギルド。どうやらそこで仕事の物色を行い、特にめぼしいものがなかったのか建物を出る。


「そういえば、出会った時も仕事を探している様子だったな」

「といっても昼からお酒を飲んでいたりしているし、仕事をしているとは言いがたいけどね」

 クロエの指摘に俺は「そうだな」と同意しつつ、後を追う。


 次に立ち寄ったのは道具屋。ただそこは魔法関係の物を扱う店で、当然ながら普通の人が入るような場所ではない。

 店内は手狭だったのでさすがにリスクは避け外で見張ることにする……やがて出てきた時、彼は紙袋を一つ携えていた。


 で、そこから市場に向かう。魔法実験の材料でも買うのかと思ったら、野菜などを買っている。食料の買い出しか。


「あの紙袋の中身、気になるわね」


 クロエが言う。ふむ、ここは人通りも多いし――


「クロエ、魔法を維持したまま近づいて中を見るぞ」

「いいけど、バレたらまずいでしょ?」

「この人混みだ。例えぶつかっても近くの人に当たったとか、そういう感じになるさ」


 少し危険だが、ここは頑張った方がいいところだ……そう考えながら俺達はダナーへ接近。露天商と話をしている彼の横に立って、紙袋の中を確認した。

 俺達は完全に気配を断っているので、当然周囲に見咎められることもない……中身は、魔石だった。


 用途としては魔法実験などの際に魔力供給などを行う。あるいは俺達のような冒険者であれば、魔力が尽きかけた際に魔石を用いることで、緊急魔法などを行使する。

 ただ後者は保険としては弱いので、もっぱら実験などに用いられることが多いのだが……おそらくルウレと語っていた何かにまつわるものだろう。やはり魔法実験関係か。


 しかし、彼の家に大規模な実験は到底できないが……いや、彼の家でもやれるようなものなのか?


「セディ」


 名を呼ぶクロエ。俺は小さく頷きダナーに気取られないよう静かに引き下がる。

 そこから彼はいくらか食べ物を購入して、帰宅する。仕事をしていない……収入源などについては謎のままだが、とりあえず何かしら実験をしている可能性は高そうだった。


「クロエ、魔石が入っていたけど何か思い当たることはあるか?」

「剣士の私に聞かないで」


 それもそうか――以降、彼については一切動きがなかったので、夕刻になって俺達は宿へ。夜に行動するという可能性もなくはなかったので、彼が動いたらわかるような仕掛けを施しておく。

 また魔石についてカレンやシアナに相談したのだが、


「魔石を何日ごとに購入しているのかなどを検証しないと、判断ができませんね」


 そういう結論に至った。加え、ルウレについても調べなければいけない。


「兄さん、昨日ルウレについて追っていた時、怪しい点はありませんでしたか?」

「家の周辺に魔力は感じなかったな……どうする?」

「ダナーという人物については、魔石の購入が気に掛かるところです。店の出入りを観察するくらいなら私達でも問題はありませんので、ひとまず兄さんはルウレのことを調べてはどうでしょう?」


 カレンの提案にシアナも頷く……なら、


「わかった。それじゃあ明日からはルウレについて――」


 これは長丁場になりそうだ……そんな心境を抱きながら、夜は更けていった。


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