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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
307/428

報告と調査

 翌日、仲間達と話し合って決めた方針としては、まずギルドでルウレという名前について調べてみる、ということだった。


 ギルドで、というのは理由がある。一つはもちろんギルドに所属している可能性――秘術なんてものを提示するわけだから魔法使いの類いであることは間違いなく、そうした人物が戦乱の情報などを得るためにはどうしたってギルドなどの情報機関が必要になる。研究にも資材がいるし、仕事などをしている可能性は高く、それなら研究機関かギルドか……その辺りで名前が存在しているという可能性に行き当たったのだ。


 他にも理由があり、それは勇者バルナがルウレと出会った経緯について。これは俺も深く考察していなかったのだが、大いなる真実を話した勇者ラダンとバルナの接点はどこにあったのか……バルナとしては『原初の力』を所持するのに足る人物に目をつけて……という根拠はあるが、その目星を付けるにも何かしら情報が必要なはず。なおかつバルナにとって大いなる真実――彼にとってはねじ曲げられた内容だが――は、荒唐無稽とも思える内容であるため、話をする人間に対しある程度信頼を得ていなければそれが真実だと断定はできないだろう。


 つまり話を信じるくらいに交流を深めた……勇者ラダンであるということを明かして信用を得るというやり方そのものも、根本的にラダンが存命であるということが信じられない内容なので、結局のところ人となりを信じてもらわないと真実については語ることができないはず。勇者ラダンとしても下手に真実を話した相手が他者に漏らすのは避けたいだろう。勇者と話をしてみて、口が硬くまた自分の思惑通りに動くであろうと推測してから事に及ぶに違いなく……よって、両者の接点はどこかと考えたら冒険者ギルドだろうという結論に達したのだ。


 ただ、さすがにこの人数で行くわけにもいかない。よって今回帯同するのは俺とミリー、そしてクロエの三人。残るは留守番で、カレンがバルナの生家管理者であるロブと話をして、数日滞在してもいいか確認をとることにした。まあ家の掃除などと引き換えにということになるだろうから、家に残ったメンバーには草むしりなどをやってもらえばいいだろう。


 で、俺達はギルドに到着。一応ギルドについては大陸東部、西部関係ない形になっているが、やはり山脈で隔てられているため多少なりとも違いはある。俺は東部のギルドでは名が知れ当たっているし、たぶん西部の人にとっても名は聞いたことあるだろうけど、個人名などを引き合いに出して情報をもらえるかと言われると微妙。


 そこで登場するのがクロエ。彼女は大陸西部で相当名が売れているので、こういう交渉については問題がない。

 俺達は冒険者ギルドに到着し、受付へ。クロエが名を明かしギルド証を示すと、受付で対応する女性が息を飲んだ。


「……少々お待ちください」


 内容はまだ語っていないが、名のある勇者が来たということで相応の対応をしなければ、ということだろう。少し待っているとここのギルド長らしき中年の男性が現われた。


「どうぞこちらへ」


 そう言われ案内されたのは客室。ソファに座り、対面する形で話をする。


「クロエ=ガレット様……このような場所にご足労いただきまして、ありがとうございます。それで、ご用件は?」


 ――ルウレについてどう尋ねるかは、クロエに一任してある。といってもどうするかは俺でも想像がつくので、黙って見守ることにする。


「この町の出身者……勇者バルナのことについて」

「彼、ですか。戦士団を結成し様々な功を立てている彼について私達も我が事のように喜んでいますが……彼が何か?」

「結論を言うと、彼は亡くなった……私を含めてこの場にいる者達が証人よ」


 その言葉にギルド長は息を飲む。


「それは……なんと……」

「大陸東部の出来事であるため、まだこちらに情報が来てはいないのでしょう。けれど報告はしているから、いずれギルド登録などについて連絡書が回ってくるはず。それが正式に来てから手続きをしてもらえればいいけれど……彼について、気になったことがあって」

「亡くなった際に、でしょうか?」

「ええ。簡潔に言えば……彼は謀略に近い形で殺されたの。私達は彼と共に仕事をしていて、その謀略について調べている。ここに来たのはバルナについての報告と、情報を求めて」


 ギルド長は固まる。まさか、という感じだろうか。


「……唐突な内容だけれど」

「いえ、なるほど、謀略……それは魔族絡みですか?」

「そうなのかどうかを現在調べている。確実に言えるのはそれに、人間が関わっていること」

「魔王に魂を売り渡した存在が関与、ということですか」

「かもしれない」

「なるほど……それで、彼が亡くなった真相を知るために動いていると?」

「そう。共に仕事をして、どうしても調べたいと思ったのよ」


 まあ嘘は言っていないな……ニュアンスはだいぶ違うけど。

 ギルド長はクロエの説明に「わかりました」と答え、


「ここを訪れた理由は理解できました……手がかりがギルド――というより、ギルドメンバーにあると?」

「ええ、そう。たぶん彼と交友関係にあった人物が大なり小なり関わりがある……個人情報を要求しているので、ギルド側としては少し躊躇う内容かもしれないけれど」

「確かにギルド内で保有する情報を安易に提供することは、情報を管理する組織としては良くないのですが……もしクロエ様の仰る内容が真実であるなら、ギルドメンバーの仲に魔王や魔族と手を組む者がいるということ。それは由々しきことではあります」


 ギルド長としては決断が難しいところだが……少し沈黙を置いて、


「勇者バルナが倒れたということもありますし、こちらとしても裏切り者を探し出したいという考えもあります……できる範囲で調べようとは思いますが、どうでしょうか?」

「ええ、それでいいわ。無理を言ってごめんなさい」

「いえ、こちらにも相応のメリットが存在する話ですからね……」


 勇者バルナがなくなったことについて、ギルド長としても思うところがあるのだろうな……こちらは沈黙していると、ギルド長はなおも問い掛けた。


「では、本題に入りましょうか……知りたい情報とは何でしょうか?」


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