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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
303/428

パーティーの今後

 ジクレイト王国の国境を離れ、俺達は山岳地帯へと入る。道中で路銀稼ぎ(といっても旅費そのものは前回の仕事の報酬なので十分なのだが、一応)を行い魔物討伐もこなしたが、連携などは特に問題なかった。

 勇者バルナの最後……あの戦いを行った経験がどうやら生きているらしい。全員が一丸となって魔物の大軍を迎え撃ったあの戦いは、俺達の結束をずいぶんと固くしたようだ。


 さて、東部については俺達もある程度道筋がわかっているし、レナの案内などもあったので特に問題はなかった。だが大陸西部に入ればクロエの案内が入るとはいえ――なおかつ戦乱を避けるような場所に向かうとはいえ、魔物だって多く存在している。あまり油断はできない。

 ひとまず山越えについては問題なく、俺達は大陸西部に足を踏み入れることができた……そうして辿り着いた最初の町で情報収集を行う。一応俺はエーレからの報告で状況はわかっているのだが――


「ふむ、現在は小康状態ってことか」


 ギルドや酒場などで一通り情報を収集した後、俺は小さく呟く。ちなみに俺の隣にはカレンがいる。


 得た情報としては俺達が向かう目的地の周辺国家で戦争は起きていないとのことだった。とはいえ燻っているのは事実であり、下手すると小競り合いくらいはあるかもしれないと。それに巻き込まれたら面倒だし、何より俺とクロエは西部でもそれなりに名が通っている。下手に名を出して目立たないようにするのが無難だろうな。


「……この町だけ見れば、平和なんですけどね」


 カレンは周囲を見ながらそう呟く。東部と西部を繋ぐ交易の町とも呼べるこの場所は、活気があり大通りは賑わっている。露店も多く、町の人々を始め多くの商人や冒険者が買い物をしている光景が見受けられる。


「皮肉な話ではあるけれど、戦乱などがあるために人々が頑張ろうって気になるのかもしれない」

「そういう見方もできますか……ひとまず魔物などについても情報はなかったようなので、問題はなさそうですね」


 ――西部では魔物討伐なども盛んに行われている。戦乱により荒廃した大地では魔物の出現率も上がるのだが、そうした場所を放置しておけば国力が下がる。結果として国は魔物退治にも力を注ぐ必要があるわけだ。


「西部ではあまり仕事をする必要はなさそうですね」

「というよりむしろ、目立たず目的を成すにはやらない方がいいかもしれないな。ひとまず旅費については十分あるし」

「そうですね。それではここから一目散に目的地へ向かうということで」


 どうするかについて決定し、仲間達にもそれを伝えたのでひとまず問題はないだろう……ということで翌朝出発するということにして、今日は町で一日過ごすことに。

 俺はどうしようか……と思っていると、珍しく俺を誘う人間が。


「セディ、ちょっと付き合いなさいよ」

「……ミリーか」


 こちらの呟きに彼女は肩をすくめ、


「私とのデートには不満がある?」

「デートのつもりはないんだろ?」


 問い返すとミリーはあっさりと「まあね」と答え、


「何の話題を出すのかは……そちらもわかってるでしょ?」


 俺は黙って頷く……カレンのことだな。

 たぶん彼女の様子などから、一度話し合いたかったのだろう。今までも話すタイミングはあったと思うが、ここで切り出したのは理由があるのか。


 俺達は宿屋近くの酒場へと入る。とはいえ真っ昼間から酒を飲んでいる人間はほとんどいない。この店は昼間ランチをメインに出す店のようで、それなりにメニューが揃っていたし、情報収集に集中して朝食以来何も食べていなかったので、ここで食べることにする。ただミリーは注文しない。


「あれ、頼まないのか?」

「宿屋に併設する食堂で先に食べさせてもらったから……ランチが始まる前に少し重い話になるけど、構わないわよね?」

「ああ、もちろん……カレンのことだよな?」


 コクリと頷くミリー。


「ここで話題を振ったのは理由があるのか?」

「いよいよ仕事に入ることになりそうだから、最後の確認を……そう思って。率直に聞くけど、カレンのことをどうしたい?」

「どう、とは?」

「セディはここ最近、私達とは別行動が多いでしょ? それについては理由があるようだし詳しく聞くつもりはないけれど……今後も単独で動くということなら、パーティーを解散するのも一つの選択肢だと思うのよ」


 ――確かに俺が度々姿を消すという状況である以上、ミリーがそのように考えるのも無理はない。俺としても仲間を放置するより「解散する」と一言告げるのもけじめをつけるという意味合いでも有効なのはわかる。

 ただ、俺としてはそういう選択肢もあったわけだが、色々あってそれをとるか話もできなかった。ただミリーとしてはその辺りをきちんと結論づけて欲しいところなのだろう。


「まずレジウスさんは元々一人で行動していたし、解散しても問題はない。フィンもセディについていきたそうな雰囲気はあるけど、解散はすんなり受け入れるでしょう。私もフィンと似たようなものだけれど……カレンは違う。あの子は、セディのために旅を続けている」

「そう、だな……」


 俺と共に戦うために旅をしている。もし俺が解散と言い渡せば、どういうことになってしまうのか。


「最近、セディについて色々悩んでいたこともそう……結果的に勇者バルナに悩みを打ち明けて利用されてしまう形となったわけだけど、その要因の一つとして現在のパーティー状況も関係している……その、カレンは自分の口から言い出さないけれど、セディが離れていってしまわないよう、色々頑張っているのよ」


 だから、彼女は独自に行動していた……そんな結論らしい。

 カレンに直接訊いているわけではないだろうけれど、正解だと思う。ミリーやフィンは解散と言い渡されればそれに従うだけで終わるだろう。けれどカレンはパーティーにいて尽くすことが目的となっている。だからそのパーティーがなくなったら――


「……そうだな、現状で言えることは……」


 対する俺は、少し言葉を選んだ後、ミリーへ返答した。


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