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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編

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面談

 俺達に情報が回ってくるまではひとまず暇なので、とりあえず仲間達の現状を確認するべく面談をやることにした。というのも、大いなる真実……それを聞いた時どういう反応をするのか、現時点で色々と推測してフォローしてやる必要があると思ったからだ。

 俺は試練に直接関わるわけではない。よってできることとしては、仲間の精神的なケアだ。カレンなんかは勇者バルナに騙されていたわけだし、なおさら今の時点で話をしておくべきだろう。


 ただ、まずは他の面々から……というわけで椅子に座り対面したのは、


「私から、というわけ?」

「そういうこと」


 ミリーだった。俺はひとまず意図を説明すると、ミリーは肩をすくめる。


「ま、セディがパーティーから外れている期間も長かったし、なおかつ人も増えた。ここで一度立ち止まって、状況を確認するのも悪くないわね」

「そうだろ? というわけでミリー……これからヤバい事案に首を突っ込むわけだけど」

「正直、私は今までとスタンスを変えるつもりはないよ」


 ピシャリとした物言い。俺はどういうことか説明を求めようとしたら、彼女が先んじて口を開いた。


「私としては今までやって来たことだって命を賭けてきた。よって今回もそれと同じ……まあ、記憶を失うかもしれないっていうのは少し事情が違うから微妙な気持ちになるけど……正直、今回は動き方が特殊なだけで、いつものようにやればいいんじゃない、ということよ」

「これまでも命を張ってきたのだから、変わらずか……」

「そうね」

「……ミリーに聞きたいんだが、大いなる真実ってのは何だと思う?」

「んー、ちょっと想像もつかないわね。神と魔王が双方で関係しているかもしれない……しかもそれを人間が知ってはいけない雰囲気がある」


 ――さすがに双方が繋がっている、などという解釈はできないか。そもそも神は味方、魔王は敵という常識の枠外だからな。


「私が思うのは、例えばお宝のありかだとか、俗物的なことはではない……人間にとって不都合な真実である可能性がある」

「不都合な真実?」

「人間というのは基本、利益があるから領土を拡大したりするわけでしょ? 大陸の西部なんかは覇権を握るべく気の遠くなるほど戦い続けている……大いなる真実というのは、そうした人間の所行に対し真っ向から対立するようなもの……なんとなく、そんな気もする」


 ……決して的外れ、というわけではない。エーレ達が管理する世界というのは、それこそ世界の秩序維持を優先としており、人の利益などを度外視することになる。

 真実が仮に広まったとしても、おそらく「そんなものは単なる憶測だ」と断じてひたすら世界を壊しながら領土拡大などに走る国も現われるだろう。面倒この上ないが……ある意味それが人間の性と呼べる面もある。全否定はできない。


「わかった……ミリー、深刻な話で悪かったな」

「別にいいわよ。セディ自身が危険だと思うことに首を突っ込もうと認識している……だからこうやって仲間の心境を確認しておきたいってことでしょ?」

「そうだな……」

「ま、仲間に目を向けるようになったということで以前よりは物事を見れるようになった、かな?」


 ミリーの言及に俺は苦笑……そこで話を終え、次はフィンがやって来た。

 で、こちらが面談の概要を説明すると、


「あー、俺は基本ミリーやカレンの言動に従っているだけだからな。首を突っ込むのなら俺はそれに従い、なおかつ頑張るだけだ」

「……そうやって今までフィンは共に戦ってくれたよな」

「不謹慎かもしれないがそれが俺としては楽しかったわけだ」


 ニカッと笑うフィン。


「魔族との戦い……それこそ怪我してのたうち回るなんてこともしょっちゅうだったが、セディ達と関われて楽しいと感じているし、だからこそ良かったと思っている。今回の件は……ちょっと趣が違うけど、まあなんとかなるだろ」

「ずいぶんと楽観的だな……」

「そうか? でもそれはセディに対する信頼の裏返しでもあるんだぜ?」

「俺の?」

「なんだかんだやって来た結果、セディは全部物事を解決してきたからな……あ、だからといってヤバいことをやっていたならそれを止めるくらいのことはするさ」


 そう言ってからフィンは顔を横へ向け窓の外を見やる。


「セディが無茶やり始め、それに続くようにカレンやミリーが奮起する……で、俺が最終的にストッパー役が回ってくる。けどまあ、今はレジウスさんいるし、その役目も少なくなりそうだが」

「俺とカレンはそれでも止まらなかったりするけどな」

「だな」


 互いに笑い合う……そこで俺はミリーと同じ質問をぶつけてみた。


「フィン、大いなる真実というのは何だと思う?」

「んー、無学な俺には見当もつかないが……俺は魔王と神々の因縁にまつわることって気もする」


 因縁……か。形は違うが管理世界というのはそれに近いのかもしれない。


「俺達は魔王に関することなんて断片的にしか知らない……いや、それ自体も真実なのかどうかわからない。加え、神々は武具などを人間に提供しているけど、人と接触するのはそのくらいで、俺達はわかっていないことが多すぎる」


 そう述べたフィンは大げさに肩をすくめた。


「だから、俺達の知らない面が神や魔王にあるってことだろ……ただ例えば魔王の配下が商売やったりとか、荒唐無稽な想像はしないけどさ」


 いや、実際商売やってるやついるぞ……と内心ツッコミを入れるが、口には出さない。


「でも、魔王や神が重大なこととだと感じているけど、人間にしてみれば何のことはない……みたいな可能性だってあるけどな」

「かもしれないな」


 そんな同意を受けてフィンはまたも笑う。それで彼との話も終わった。

 フィンとミリーについては、今回の依頼について最後までやり遂げる気でいるようだ……大いなる真実の内容を聞いても、最後まで付き合ってくれるだろう。


 なら、他の仲間はどうか……そう思いながら次に呼び出したのは、ロウとケイト。二人には現状どう考えているかに加え、勇者バルナが消え去ってどう思っているか、確認しておきたかった。

 仲間達より、メンタル的にはキツイはずだし……そう思っていると二人が部屋に入ってきた。


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