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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編

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仲間との相談

 仲間達の所へ戻ると、まず事情を説明する前にレナが勇者ロウへ呼び掛けた。


「ロウさん、すみませんが武器を少し見せて欲しいのですが」


 彼は首を傾げたが、何か考えがあるのだろうと渡してくれた。そこで彼女は色々と魔力を込めたりして調べ、


「……ひとまず、この武器に観察する魔法などは仕込まれていないようです。しかし神々の技術となると――」

「魔力を使っている以上、そこは大丈夫だと思うぞ……みんな、女王アスリから依頼を受けた。聞いてくれ」


 そして仕事内容を伝える……それにより、女神から直接武器を賜ったロウについては複雑な表情になる。


「つまり、この剣に神々の魔法……動向を観察するものがないか調べたわけですね」

「不快に思うかもしれないが、注意はしないといけないと思ったんだよ……で、だ。さすがに人間の動向をつぶさに観察しているとは思えないけど、大いなる真実とやらについて聞き込みでも行っていたら、目をつけられる可能性は否定できない」

「神々が調べていると知ったら、どういう態度を示すのでしょうか?」


 カレンの疑問。それに俺は肩をすくめ、


「さすがに俺達を始末、とはいかないだろ。やるとしたら魔法か何かで記憶を消す、とかかな」

「穏便に済ませるには、それが一番ですね」

「……この辺り、対策については一応思い浮かんでいる。現在女王アスリが調べて欲しいと依頼しているわけで、もし記憶を消されても女王からは依頼は継続しているわけだ。よって仕事内容を忘れているのなら会いに行け……そういうメモでも懐に忍ばせておけば、例え忘れても仕事は続けられる」

「なるほど、確かにそうですね……しかし二度目はないですよね」

「まあ記憶を消してなお調べているのだから、神々も相応の態度をとってくるかもしれない……だから見つからないようにしないといけない。そしてこの仕事についてはこの場にいる面々だけでやることになる」


 ――これは、大いなる真実についてこれ以上漏らさないようにするための処置だ。ここまで言い含めておけば、仲間達も他に人を募るという提案はしないだろうし、内々で秘密を守ることができる。


「で、さすがに馬鹿正直に聞き込みで調べようとは思わないし、そんなことをしても情報を得ることはできない……ただ手がかりがゼロというわけじゃない」

「勇者バルナについて、ですか」


 カレンの指摘に俺は首肯し、


「勇者バルナ……彼の最期については色々と疑問が残っているけれど、とある仮定を加えると、ある程度理屈が通る」

「兄さん、それは?」

「つまり――大いなる真実を他者に漏らさないために、ああいう風にしたっていう可能性だ」


 その言葉に「なるほど」と声を上げたのはミリー。


「勇者バルナの行動を観察していて、何やら真実について話されそうだったから、口封じされたと」

「ああ。それに加え俺達が何かしら情報を得ているかもしれない……それを考慮して魔物を暴れさせた――こういう説明なら、魔物の大軍についても一応説明はできる。かなり強引だけど」

「神々がああした魔物を招いたってこと?」

「いや、さすがにそうは思わない。あれを実行したのは、魔王側なんじゃないか」


 その言葉にミリーは眉をひそめ、


「うーん、魔王も大いなる真実ってものに関わっているってこと?」

「神々に関する情報であるとしたら疑問かもしれないけど、俺は魔族ベリウスが滅ぶ寸前にこの単語を聞いている。魔王側と神々側……この二つが同じことを意味しているのかはわからないけど、同じ単語なんだ。関係があると考えていいだろ」

「対立する勢力同士で同じ単語……?」

「それぞれの勢力で意味合いが違っているのかもしれません」


 そこで口を開いたのは、シアナだった。


「女王アスリが言うように神々が戦わないことが大いなる真実であるとしたら、魔王側としてはその情報を得てもうすぐ侵攻し始めるのに、ここで死ぬわけには……そういう意味合いで呟いた可能性だってありますね」

「ああ、確かにそうね……ただこうなるとなんとも面倒な話ね。場合によっては魔王と神々、両方に目をつけられない?」

「可能性はゼロじゃないな」


 俺はそう告げると肩をすくめ、


「もっとも現段階では全て仮定の話だ。今はこの大いなる真実という単語については口外せず、また怪しまれないよう調査をするってこと……そして手がかりは勇者バルナについてだ」

「彼の素性を調べてみるってことか」

「ギルドに所属していたし、女王アスリからバックアップも保証してもらったから、調べるのはそう難しくないと思う。まずは勇者バルナの調査依頼から……彼の顛末を知っている俺達なら、調べようとしてもおかしくはないし、まあ大丈夫だろう」


 ひとまず説明としてはこんなところか……仲間達も納得しているみたいだし、ひとまず問題が出ることはなさそうだ。


 そこから俺達は調査が終わるまで待機ということに決定し、仲間と共に城を出た。ちなみに勇者バルナの戦士団については既に解散している。団員の面々は意気消沈としている者も多かったけれど、団長がいなくなったため半ば仕方なく、バラバラになった。中には新たに戦士団を結成した者もいたようだけど……とりあえず自暴自棄になるような人がいなかったことは幸いだろう。


 で、俺は宿に戻ると仲間と雑談を重ねた後、シアナ達と話し合うことにした。適当な理由を付けて外出すると、町中でシアナと合流する。


「こちらです」


 彼女の案内により、別の宿へ案内される。作戦会議をするためにあえて別の場所に宿を取っているわけだ。

 そこには既にディクスとクロエが待っており、部屋の中央にある空間に歪み、エーレの姿があった。


『ご苦労だな、セディ』

「エーレも……ひとまず女王アスリからの依頼ということで、大いなる真実について調べることにした。まずは勇者バルナについて」

『ああ、それでは試練を始めることになるな……セディ、不安はあるか?』

「正直俺もどう転ぶかわからないからな。不安しかないけど、こちらは尽力するよ」

『その意気だ。では早速、話し合いを始めるとしよう――』


 そうしてエーレは、今回の作戦について概要を語り始めた。


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