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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編

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謁見と休憩

「此度の戦い、本当にありがとうございました」


 場所はジクレイト王国の王城――そこで俺と仲間達は、女王アスリとの謁見をしていた。先ほどの声は女王のものだ。

 本来ならばひざまづくべきところなのだが、女王の言葉により俺達は立って話をしている。また後方の仲間達は……カレンとミリーにフィン、それにレジウスに加えてシアナとディクス。さらにはロウとケイトという面々がいる。


「あなた方がいなければ被害は甚大なものとなっていたでしょう……受け取った報酬等については事前に伺っていますが、もしよろしければ他に要望はありますか?」

「いえ、十分です」


 俺はそう返答する……周囲にはジクレイト王国の重臣達も控えている。ここで深入りするような言動は、避けたい。

 女王アスリは俺の事情を知っているとはいえ、さすがに周囲の重臣はそんな事情を知らないし、下手すると干渉してくるからな……俺はそこから女王と雑談に近いような話を交わし、退出することとなった。


 大臣を始めとした面々は結局一言も発することなく、隙を見せなかったことで回避に成功。まあ実際他意はなかったかもしれないけど。


 玉座の間を離れると俺は小さく息をつく。そして、


「ああ……緊張した……」


 苦い顔をするミリー。そういえばあんまりこういう舞台は慣れていなかったか。


 同じような表情をしているのはフィンとレジウス。大臣クラスの権力者が取り囲むような状況というのは魔物に囲まれた時よりも辛い……そんな感情が表情から読み取れる。

 唯一俺と共に幾度か謁見の経験のあるカレンについては涼しい顔。シアナやディクスも平然としているが、


「ロウ、ケイト、そっちは大丈夫か?」


 終始無言だった二人だが……やがてロウはこちらに首を向け、


「玉座の間に入った直後から、記憶がほとんどないんですけど……」

「私も精々女王様の顔を記憶したくらい……」


 ロウとケイトは相次いで表明。ああうん、緊張が極限にまで達していたようだ。無理もない。

 まあひとまず謁見を無難に終わらせたので良しとしよう……と、ここで入口へ向かう途中でレナと顔を合わせる。


「お疲れ様です。皆さん、もしよろしければお茶でもどうでしょうか?」

「城内で?」


 こちらの問いにレナは頷き、


「お時間があれば、ですけれど」


 ……何も知らない俺なら引き留めるための口実とか見なして丁重にお断りさせてもらうのだが、今回は違う。

 ただ素直に頷くのもいつもの俺ではないので、まずは、


「カレン、どうする?」

「レナさん、さすがに城内に引き留めて大臣と顔を合わせて会食、とかにはなりませんよね?」

「心配しないでください。セディさん達の考えはわかっているので、全力で止めます」

「わかりました……兄さん、受けてもいいのでは?」

「そうだな。肩に力が入って固まった人もいることだし、一休みしようか」

「私のことかな?」


 ミリーが問う。俺は「どうかな」と茶化すように応じ、


「レナ、場所は?」

「城内の詰め所にある食堂です。今の時間は人も少ないし、落ち着けると思いますよ」

「なら、それでいこう」


 俺は決議し、一路詰め所の方向へ歩き始めた。






 ――勇者バルナとの戦いから、俺達は王都へ戻りこうして謁見を済ませた。次の敵はルウレ……勇者ラダンから神魔の力を手に入れた人物であり、ラダンに連なる最後の勢力でもある。

 既に現時点で彼の居場所については捕捉している。ただ神魔の力についてどういったものなのかなど、調査しなければならない点もあるようで魔王側はまだ仕掛けていない。


 そして彼に対し実際に動くのは、俺達。


 ルウレとの戦いを通し、カレン達に大いなる真実を知ってもらい、答えを導き出す……この中で勇者ロウについてもそうだ。重要なことを戦いの中で見出すというのはずいぶんと無茶もあるが、エーレとしては「だからこそ」という考えらしい。

 それにこれは、カレン達が勇者ラダンとの戦いに加わることができるのか、技量面においても確認する意味合いだってある……正直仲間のあずかり知らぬところでこういうことをするのは忍びないのだが、相手が相手であるし、仕方がないと割り切ることにした。


「どうぞ、セディさん」

「ありがとう」


 お茶を受け取りながら詰め所の食堂で雑談に興じる。その口火を切ったのは、フィンだった。


「しっかし、今回の仕事は謎ばっかり残ったな」


 クッキーをかじりながらフィンは呟く。


「勇者バルナの目的から、なぜあんな結末を迎えたのかまで、全部が謎ばっかりだ」

「最後の変化は、バルナが意図的に行ったものではないように見えた」


 俺が発言。結果、一同こちらに注目する。


「バルナの知らないところで、何か魔法を受けていた……そんな気がする」

「たぶん、魔族だろうな」


 フィンが言及。ここでミリーが肩をすくめ、


「あるいは、魔族とつながりのある人間か」

「その可能性もあるな……問題は、バルナに対しどういう動機であんなことをしたのか、か」

「そこについて、俺としては少し調べようかと思っているけど」


 こちらの言及。それにフィンは「いいんじゃないか」と応じ、


「けど、問題はどこから調べるのか……だな」

「それなんだよな……」

「そういえばセディが作った報告書を読ませてもらったけど」


 ふいにミリーが口を開いた。


「勇者バルナについて……凶行に走った理由として、大いなる真実というものが関係しているようね」


 その言葉に少しばかりシアナ達が反応。といっても事情を知る俺だからわかる程度のもの。


 女王などに説明するために俺は今回の事件の報告書をレナと一緒に作成した。その中で女王から依頼を受ける口実として、大いなる真実という名称について記載した。記録として残すことについて少し不安もあったのだが、これはシアナ達とも話し合った結果だし、何より女王が上手く扱ってくれるという保証もあったので、記したのだ。


「そういえばだいぶ前にもセディが言っていたな」


 フィンが追随。俺は「そうだな」と答え、


「それが何を意味するのか俺にもわからないけど……勇者バルナがああした行動に走った理由ということらしいし、そこから調べても良いかもしれない――」


 そんな言葉を告げた直後、俺達に近づく騎士の姿があった。


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