表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者争乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

281/428

最後の探索

 城内の探索を始め、ずいぶんと時間が経過し……夕刻になる。この段階で俺達は決断を迫られた。すなわち、戻るか留まるかを。


「バルナ、まだ目当ての物は見つけていないんだろ?」


 俺の問い掛けにバルナは「はい」と答え、


「魔力を探ってみてはいるんですが、特定まではできないんです。何やらこちらの探知魔法を拡散されるようで」


 バルナの説明を聞いているのは俺とレナ……というのも、今回討伐に参加した面々の代表者ということで、話をしている。

 現在いるのはエントランスであり、外に出ている面々は継続して周囲を監視する役目。バルナの戦士団は休憩をしており、俺の仲間も同様だ。


 さすがに神経を研ぎ澄まし、警戒し続ける……というのは長続きせず、この討伐の裏を理解している俺やクロエ、さらにシアナとディクスを除けば全員が疲労している。この状況下で魔族に襲撃されればひとたまりもない……そういう意味合いもあって決断に迫られている。


「ふむ、どうしましょうね……」


 レナが呟く。本日中に勝負がつくと考えていたためか、ジクレイト王国側の面々も悩んでいる様子。


「とはいえ外に出払っている者達も魔法の行使により疲弊しているのは事実です」


 ……本音としては切り上げたいところだろう。ただ、夜に魔族が帰ってくる可能性も捨てきれない。


 明日に回すという意見もあるにはあるのだが……俺達がうろついたという事実が克明になってしまっているため、もし夜の段階で魔族が帰還したのなら、今度こそ潜入されたとして姿を消すと考えることができる。

 バルナとしては、そうなってしまうと求めていた魔法道具がなくなるという懸念があるわけだ――あくまで建前上は。


「……バルナ、目当ての物さえ見つかれば、引き上げても問題ないと思うか?」


 俺は一つ提案する。行動しながらバルナの次の一手を予測していたのだが……疲労している仲間を見て、おおよそわかってきた。今発した質問は、その予測が合っているかどうかの確認だ。もし問題ないと答えたなら――


「そう、ですね。とはいえここに魔族がいることは間違いないようですし、ジクレイト王国の皆様が少しの間この城を観察する、という形が望ましいでしょうね」

「ええ、私もそう思う」


 レナが首肯し、話を続ける。


「しばらく監視し、ここにいる魔族の動向を探る……もし来なければここに住んでいた形跡はあるけれど、私達が来る前に姿を消したということになる」

「ただ、その場合は道具なども一緒になくなっているはずだな」


 俺の言葉。バルナは首肯し、


「はい、少なくとも私が求めている物がここにある以上、まだ魔族がいる……と、思います。ただもし姿を現さなければ、放置したということでしょうか」


 あくまでいると主張するバルナ。まあそうじゃないと固執する理由がなくなるからな。


「もし魔族が戻ってきたのなら、即座に対応しなければならない……勇者バルナ、この周辺に留まってもらうことになるけれど」

「私が構いません……が、さすがにそこは仲間達と相談する必要がありますね」


 こう語るが、作戦を遂行するまでは留まり続けるだろうな……さて、俺の方から水を向けるか。

 こちらは少し言葉を選び……バルナに言った。


「バルナ、夜に入るとさすがにまずいことになるだろうし、もし調べるのであれば日が沈むまでにしないとまずいぞ」

「わかっています……チャンスはあと一度、でしょうね」

「日が沈む前に一度ここに戻り、判断しましょう」


 レナが提案。バルナはそれに同意し、もう一度、城内を見て回ることに。

 とはいえ戦士団は疲労し、俺の仲間も同様……疲労が溜まっている面々が行動するのを避け、バルナが俺かクロエかディクスか……勇者の誰かを指名して調べるというのがおそらく彼の計略だろう。


 ただ二人で行動というのは理屈に合わない。戦力的なものを考えると、疲労が少ない戦士団の誰かを複数行動させて、といった感じになるだろうか――


「セディさん、戦士団から数名と、セディさん側からも数名で探索しましょう」


 バルナからの提案。俺はそれに頷き仲間の所へ。


「もう一度だけ見て回るということになったけど、どうする? フィンとかは見るからに疲れているな」

「確かに、神経使っているな」


 肩を回すフィン。と、ここで手を上げたのはカレンだった。


「私が同行します」

「大丈夫か?」

「はい、疲労も特にありませんし……他の皆さんは疲れているでしょうし、私と兄さんだけで良いのでは?」


 ――ここで一つ直感。カレンはバルナに俺が魔族化したことを伝えている。この状況下でこう主張するということは、もしかするとバルナとカレンはつながっているのか?


 普通そんなことはあり得ないと思うのだが……いや、バルナから何か吹き込まれた可能性は高い。例えば「魔族化は魔法を使わない限り戻らない」とか。バルナがカレンにその辺りで何かを提示していたのなら……可能性はあり得る。


 ということは狙いの勇者は俺……魔族化しているという事実を含めてバルナは俺を選んだことにならないか。

 色々と思うところはあったが……俺はクロエやシアナへ視線を送ってみる。二人は疲れた顔――といってもおそらくわざと――で頷いた。乗っかるということだな。


「そうだな。それじゃあ俺とカレンの二人ということで。全員、俺達が戻るまで気を引き締めておいてくれよ」


 その指示に仲間達は頷き、バルナと合流。


「こっちは二人だ」

「こちらは私を入れて四人です。では、進みましょうか」


 再度――おそらく最後の城内探索。ここで間違いなく情勢が動くことになる。果たしてバルナはどういう罠を仕込んでいるのか……これまでとは異なる緊張感を抱きながら、俺はカレンや戦士団と共に城内を歩み始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ