表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者争乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

278/428

古城へ

 翌日以降も旅程通りに進み、いよいよ俺達は魔族の居城近くの町まで到達する。


「ここを明朝出発すれば、昼くらいには居城に辿り着く」


 そうバルナは述べる……この時点でレナを始めとしたジクレイト王国騎士団とも合流。態勢は整った。


「――いよいよ、ですね」


 バルナが言う。彼の言葉通り、敵の拠点に向かう日となった。


 さて、彼が魔族の拠点としてている場所にいくつもの仕掛けを施したことを知っているわけだが……彼の行為を白日の下に晒し拘束するには実際に行動に移してもらう必要性がある。場合によっては拘束し、彼が知っている勇者ラダンの情報を教えてもらう……いいように言っているが、実質やることは尋問か。


 秩序を維持するには当然ながら、後ろ暗いことだってやらなければならない。ましてや今回の件はこの秩序そのものを破壊しようとする存在に対するもの。こちらも心を鬼にして対応しなければならないし、俺はそう強く決心する。

 ただ……これをもしカレン達が知ったなら、どう思うのか……そんな考えを巡らせながら俺は仲間達と共に街道を進む。


 やがて、大きな街道から逸れて農村地帯へと入った。もう少しだと認識すると同時、先頭にいるバルナが声を上げる。


「騎士の方々、確認ですが――」

「周辺に村民はいない。思う存分やってくれ」


 バルナの声に騎士が答える。それに彼は深く頷き、


「では……いよいよ、決戦だ」


 その時、俺達は目に森の覆われた小高い山が映った。あれだと認識すると同時、ミリーが声を上げる。


「一見した感じだと、魔物の気配はないように思えるわね」

「俺も同感だ」


 彼女に続きフィンも発言。さすが二人、鋭いな。実際に魔物はいないからな。


「逆にそういう方が怖いんじゃないか?」


 これはレジウスの意見。それにフィンは肩をすくめ、


「魔族は自身の存在を誇示することがほとんどだからな……でもまあ密かに何かやっているために気配を殺しているのだとしたら、面倒かもしれないな」


 そうした会話を成す間に、俺達は山の麓に到達。獣道のようなものが続いているだけで、進行方向はひたすら森を突き進む形となる。

 バルナは居城に誰もいないことがわかっているので、仕込みをする場合は空中を浮遊して城内に入っていた。よって彼が訪れた痕跡などは見当たらない。


「結界の類いも感じない……このまま進んでも問題なさそうです」


 バルナは言う。ここでカレンは何か魔法を使用し、


「探知系魔法の類いもありませんね。もっとも、森の中を進む音で誰かが来たと魔族は気付くはずですが」

「でしょうね……よし、では入りましょう」


 声のトーンが落ちた。剣を抜き、バルナは神経をとがらせ前だけを見据える。


 ……ここはさすが、というべきか。まあ演技力を称賛しても仕方がないんだけど。

 彼の態度に戦士団に所属する勇者――ロウやケイトも含まれる――は、彼のように剣を抜くと表情を引き締める。次いで騎士達もまた警戒を始め、後方支援役のレナも部下に指示を送る。


 仲間達も同様に武器を抜き、戦闘態勢に入った。先ほどまで気配がないと語っていたフィンだが、表情は魔族と戦うような時のものとなっている。

 そしてバルナがゆっくりと、最初の一歩を踏み出す。歩くのに邪魔な草を剣で切り払いながら、少しずつ、確実に進んでいく。


 隊列は二列となって、俺やその仲間達は一番後方を進むことに。こういう場合、森の横手から襲撃があるとかなり面倒なことになるが……それを仲間も警戒しているようで、ミリーなどはせわしなく森に視線を送っている。

 俺もまた、彼女と同じように注意を払うように視線を色々と向け……バルナが仕込みを行ったのはあくまで城のみで、さすがに森に手は入っていない。ひとまず城に到達するまでは安全と考えていいだろう。


 そうして俺達は徐々に山を登っていく。とはいえあくまで小高い山であるため、草を払いながら進まなければあっという間に山頂まで到達できる。

 とはいえ気を引き締め直し……やがて隊列の先頭を行くバルナがどうやら、城へと到達したようだった。前方から声が聞こえる。おそらく城に対し警戒するよう戦士団に呼び掛けたのだろう。


 次いで騎士達も歩む速度を上げ警戒に入る。そして最後に俺達……抜けた先には、外壁などが多少崩れた古城があった。


「……敵は、いないな」


 ポツリとフィンが呟く。周囲の気配を探ってみるが、当然ながら敵はいない。


「逃げた、わけではないよな?」

「――潜伏している可能性はありますね」


 そこで発言したのは、レナ。


「森を進んでいる最中に、魔族が逃げ出すような気配は感じませんでした。よって考えられるとしたら、城内のどこかに隠れたか」

「既に魔族が去った、という可能性もありそうな雰囲気だが……」


 それは騎士からの発言。だがそこへ、バルナが指を差す。


「あれを見てください」


 その先にあるのは、城の壁面。古城であるためずいぶんとボロボロになっているのだが……ずいぶんと真新しい、補修した形跡が。


「少なくとも、古城に何かが存在するのは確かでしょう」

「なるほど……確かに」


 騎士も納得の表情――ここで俺は少しばかり感心した。


 というのも、壁の補修はバルナがやっていたもの。報告書に記載してあったのだが、何のためかと疑問だったのだが……どうやらここに魔族がいるということを示す情報にするつもりだったらしい。

 まあ何かがいるという痕跡があるのなら、当然調べないわけにはいかない……そうして俺達に対しここから離れないようにする、というわけだな。


「……潜伏している可能性があるというのなら、慎重に城内を調べましょう」


 そしてバルナが指示を出す。結果、俺達は古城内へ入ることに。

 さて、ここまではバルナにとっても予定通りと言えるだろう。ここから果たしてどう動くのか……俺はクロエと一度視線を合わせる。彼女は小さく頷き、さらに隣にいたディクスも首を縦に振った。


 準備はできている……そういう意思表示だ。俺は二人の様子を確認した後、バルナが歩み出すのを確認し、仲間達と共に古城の中へと入り込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ