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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者争乱編

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勇者の行動

 俺達はエーレと作戦会議を終えた後、ひとまず仲間達がいる宿へと戻り、そこでクロエと簡単な打ち合わせを行う。内容は先ほどエーレからもたらされた指示……勇者バルナに大いなる真実について打ち明けて反応を見る――それをどう違和感なく、怪しまれることなく行えるか。


「ツオルグという魔族について調べた結果の時、話し合うことになるからそこで、というのが違和感もないか?」

「けどいきなり大いなる真実について喋るのは変よ」

「そうか……なら打ち合わせの後に食事の席でも設けて、そこで魔族や魔物について話を振る。そこで大いなる真実について言及、かな?」

「それが一番良さそうね。話を振るのはどちらにする?」

「俺の方がいいだろうな。俺は以前仲間へこの単語を口にしたことがあるから、バルナが仲間に尋ねても問題はない」

「そう……私はセディに教えられて興味を持った、といった感じでいいかしら?」

「ああ、それでいいよ」


 口裏合わせは完了したので、ひとまず作戦会議はここで終わり……あとは勇者バルナと話をして、どう反応するか。

 それによってもしかすると今後の対応なども変わってくるか……ただ結論は変わらない。彼が勇者を殺めている事実に変わりがない以上は。


「もし、彼が何かしら使命を抱き活動しているのだとしたら」


 ふいに、クロエが口を開いた。


「私達は悪役ってことになるのかしら」

「そうだな……けれど、俺達からすれば彼は悪だ。秩序を乱す勇者ラダンと手を組み、なおかつ勇者を殺めた」

「そうね」


 クロエは返事をして、俺から離れる……それと共に俺は考える。


 悪――確かにエーレやアミリースからすればそう解釈できるだろう。だが俺はどうなのか? 勇者を殺めた以上、許すわけにはいかない。けれどそれが正義の下で、とは到底思えない。


「……ただ秩序を乱しているのは間違いない、よな」


 そう呟いて、俺もまた動き出す。勇者バルナとの話し合い。それがどう変化するのかを想像しながら――






 二日後、魔族についての情報を交換するべく俺とクロエは彼がいる宿へ向かう。ちなみに今回は同行者――シアナが一緒にいる。


 表向きの理由としては彼女が情報を得たため……そして本当の理由としては、俺やクロエが気付かないような彼の変化を捉えるためだ。


「シアナ、魔族の気配を出したらアウトだから慎重に頼むよ」

「任せてください」


 シアナの言葉に俺は一つ頷き、宿の中へ。バルナはラウンジで待っており、そこでひとまず話し合いということになった。


「私からですが……ツオルグという存在について、やはり情報は得られませんでした」

「こっちも似たようなもの……といっても、シアナがほんの少しだけ成果を得た」


 俺が告げるとバルナはシアナへ視線を送る。


「本当ですか? どんな情報を?」


 ――彼からすれば本来魔族がいない場所に関する情報だ。仮にシアナが何かしら言及したとしても「それは違うのでは」とか、あるいは「情報に値しない噂話程度」とか、否定するだろう。まあ実際城主がいないわけで、本来なら情報などあったものではないし。


「ツオルグ、という魔族についてではなく、居城にしている土地についての情報といったところです」


 そうシアナは語り始める。


「簡潔に言えば、バルナさんが仰っている場所には過去領主がいたそうです……その方が亡くなくなられて以降、その地域を直接的に支配する存在がいなくなりジクレイト王国が統治するようになった……と。ここまでならそう大した話ではありませんが、気になることがありまして」

「気になること?」


 眉をひそめるバルナ。そこでシアナは続ける。


「その領主は魔法の研究をしていたそうで、今もその成果があの土地に眠っている、かもしれないと」


 ――こんな説明をするには、一つ理由がある。もし俺やクロエに対しバルナが仕掛けてきた場合、何かしら対処方が必要となる。無論それは何かしらの魔法なわけだが、当然魔族の力を使うのはまずい。そこで事前に彼の策に対抗できるような魔法を予め準備しておこうとエーレ達は考えた。


 結果、過去に領主が研究をしていて、その力が城に残っており、それを利用し危機に瀕した時、助ける……そんな筋書きというわけだ。領主がいたという事実はきちんと踏まえた説明であり、勇者バルナも歴史について否定するようなことはしない。だからこそきちんと納得できるものだと考え、話したわけだ。


 この情報についてはバルナだけではなく仲間達にも伝えてある。これで公然ともしもの場合に対応できても説明がつくようになった。


「ほう、それは興味深いですね」


 バルナは応じ、口元に手を当てた。


「もしかすると魔族ツオルグが、その力が何なのかを探るために、城にいるのかもしれません」

「……魔族が人間の研究に対して興味を持つなんて、あまり聞かない」


 そこで俺は口を開く。


「そうなると、よっぽど特殊な研究……あるいは、魔族にとって危険なものだった、か?」

「わかりません。ただ一つ言えるのは、魔族は何かに吸い寄せられて城に入ったということでしょう」


 ――この数日間、彼は動き回っていた。情報を集めていたという理由があるので別段不思議ではないが……ファールンなどが監視し、その結果ツオルグの居城と呼ばれる場所に赴いていることが判明した。

 魔族がいるのならば、単独で行くことなど考えられない。よって彼は城が誰もいない場所だとわかっている。ファールンは下手に接近したらバレる可能性があるため彼が城で何をしているのかはわからなかったが……やったことは間違いなく、俺達の力を奪うための準備だ。


「ツオルグという魔族についてはさしたる情報が出てこない……力の強さとしては不明瞭な点はありますが、何かしら力が眠っているとすれば、そこに注意を向けるべきかもしれませんね」

「はい。警戒すべき案件なのは間違いないと思います」


 シアナが力強く頷く。俺やクロエも難しい表情となり……けれどバルナは穏やかな表情を崩さなかった。


「大丈夫です……皆様のお力があれば、必ず突破できますよ」


 それは、俺達の実力を信頼した上での発言か……こちらは「頑張るよ」と告げ、ひとまず打ち合わせは終了。次はいよいよ大いなる真実についての話だ――


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