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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者争乱編

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しもべの出現

 魔物の咆哮により、これからしもべを生み出すのだと確信した直後、いち早く動いたのはカレン。

 見れば彼女は魔法を放つ準備を整えている。何か仕掛けようとしていることを察し、機先を制する形。


 しかし――彼女の魔法が直撃しても、魔物は咆哮をやめなかった。そればかりかさらに音は増し、勇者バルゴを始め仲間達に畏怖を与える。


「何をする気だ……!?」


 フィンが叫ぶ。同時、魔物の周囲に黒い影が生まれ始めた。

 それは魔物の周囲でわだかまったかと思うと、形を成し魔物本体と同じ大きさを持った猿型の魔物が数体、出現した。


「魔物を生んだ……!?」


 驚愕し声を発したのはミリー。それと同時、再度天高く魔物が咆哮を上げると、しもべが一斉に動き始める。


「――結界を維持する者を狙う気だ!」


 しもべが動く方向から、レジウスが察したか叫ぶ。同時、カレンを狙おうとしていたしもべに対し、フィンとミリーがフォローに入った。

 しもべの手には鋭い爪。それが振りかざされたが、フィンが攻撃をまずは受けた。


「ぐっ……!?」


 予想以上の威力があったか、フィンは呻く。そこでミリーがカバーに入り、事なきを得た。

 他は――レナに狙いを定めていたしもべはレジウスとジクレイト王国の騎士達が援護に入る。だが騎士はしもべの攻撃を受けると吹き飛ばされ、即座に別の騎士がレナの前に立つ。


 そしてシアナについては――ディクスとこちらもジクレイト王国の騎士が援護に。しかしディクスが単独で応じることができており、問題はない様子……まあ当たり前だけど。

 しかしまだしもべはいる――その矛先は、勇者バルナ。


「バルナさん!」


 ロウが叫ぶ。その彼もしもべが迫り、慌てて剣を構え直した。そこにケイトや他に帯同する勇者が応戦する構えを示す。

 そしてバルナ――彼の周辺にも勇者はいるが、しもべの力に及び腰になっており、応じる気配を見せるのがバルナだけとなっている。


「勇者バルナ!」

「セディさん達は魔物の本体を!」


 彼は叫ぶと前に出た。そこで魔物本体も反応し、俺とクロエは動き始める。

 魔力を高め、倒す気概を込めて剣を振る――その間にいよいよバルナも交戦を開始する。


 しもべの能力はどの程度か断言できないが、フィンが攻撃を受けて呻く以上は相当な力を所持している。さて、どうなるか。


 まずは真正面からバルナは相対し、しもべの爪を受けた。ガギンと重い音が響くと、一時せめぎ合いとなる。

 どうやらフィンとは異なり、彼は対応できている……すると爪を受け流すと反撃に出た。放ったのは横薙ぎ。しもべの脇腹を正確に狙ったもので、当の魔物は回避に移る。


 バルナの斬撃は空振りに終わるが、追撃を仕掛ける。流麗な足さばきであっという間に間合いを詰めると、その胸部へと剣を叩き込んだ。

 一瞬の出来事で、その動きだけを見ても歴戦の勇者であると確信できる……ただこれは、他の勇者から力を奪ったことによるものなのか――


 しもべはさらに怯み、バルナはなおも攻める。剣戟を次々と決めていくわけだが……見た目に派手さはほとんどない。けれど技術に裏打ちされた強さはある。


「ふっ!」


 そしてわずかな息づかいと共に振り下ろされた刃が、しもべの体を上から下へ一閃する――それによりとうとう敵が耐えられなくなり、動きを止めた。

 これで決めれば終わり……そう確信した直後、バルナは刺突をしもべの頭部へ決める。中心を正確に射抜いたそれは頭を貫通し、しもべを粉砕した。


 周囲を見ればフィンやミリーはいまだ交戦中だが、息の合った攻撃により魔物に攻撃させる猶予を与えていない様子。どうやらそのまま一気に畳み掛けるようで、こちらも問題はなさそうだった。

 またレジウスは騎士と連携してこちらも終わらせようという状況。火を噴くように攻め立てるのは師匠であるレジウスの真骨頂だが、それを見事に体現している。こちらも問題はなさそうだ。


 そしてディクスも……こちらは容赦なく剣を見舞い、しもべの撃破に成功。周囲にいたジクレイト王国の騎士が感嘆の声を漏らすほどで、さすがといったところだろうか。

 さらに勇者ロウを含めた面々はどうにかこうにかしもべと斬り結んでいる。とはいえこちらは攻め続けるといったことは無理なようで、犠牲者とはいかなくとも怪我人くらいは出るかもしれない――


「ロウ!」


 そこへしもべを倒したバルナが迫る。背後からの攻撃で、挟まれたしもべは多少ながら動きを鈍らせた。

 いける、と確信した直後、バルナとロウ達の一斉攻撃が始まる。おそらくバルナは戦士団に入っている勇者達と連携できるよう指導や訓練をしているのだろう……そう確信させるくらいに動きは正確で、短時間でしもべを沈めることに成功した。


 順調だな……ここれ俺はクロエへ視線を投げる。彼女は小さく頷き――潮時だと判断した。

 エーレ達がおそらくバルナの戦いぶりから色々と分析するだろう……動きそのものはシンプルだし、どの程度情報を得ることができたのかわからないけど――この辺りで終わらせよう。


「クロエ、もう一度さっきのような形に」

「了解」


 俺の言葉に呼応しクロエは前に出る。次いでこちらは魔力を高める……先ほど以上に、目の前の魔物を一蹴する気概で。

 それは先ほどとは異なる、全身全霊という表現が正しいもの。それを見た勇者や騎士達が「おお」とどよめくのを俺ははっきり耳にした。


 彼らを……そして勇者バルナを少しばかり意識しながら、俺は駆ける。クロエは魔物に対し攻め立て動きを封じる形。そして魔物はさっきと同様こちらに意識を一瞬向けたようだが、先ほど以上に苛烈なクロエの攻撃に対応できていない様子。


 ならば、終わらせる――そう決断し、俺は魔物へ肉薄する――!!


「食らえ!」


 声と共に放たれた斬撃。それは一撃目と同じく横原へ狙いを定めたもの。だが威力が違う。剣が魔物の体に入った直後、これで決まったと確信した。

 刹那、俺の斬撃により魔物の体が上下に分離する――最後に聞こえたのは断末魔。魔物は俺を見据えなんだか恨みを持ったような視線を投げたが……俺はそれを冷たく見返し、魔物は完全に消え失せた。


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