二つの再会
買い物を終え一度宿に戻り、昼くらいになったので俺とシアナとクロエで昼食をとる。他の仲間達はまだ外に出ているようなので、用を済ませておくことにする。
「詰め所に行ってレナに手紙を渡す。それと勇者バルナの戦士団の面々と顔を合わせる……やっておくのはこの二つだな」
というわけで行動開始。まずはレナの所へ向かおう。
シアナやクロエを連れ、俺達は都の大通りを進む。前訪れた時と同じく商店は賑わい、平和を謳歌している。
実際のところ、俺達が活動していることが人々のところまで影響が出る……ってことは、勇者ラダンが『原初の力』を手に入れない限りないだろう。ただそれでいい……というか大いなる真実の枠組みは、人知れず活動し、騒動があれば誰も知らないまま解決することが望ましい。
「……昨日勇者バルナと顔を合わせたわけだけど」
俺は歩きながら口を開いた。
「その様子から、俺達が大いなる真実に関わっていることは知らない雰囲気だったよな」
「そもそもそれを知っていたらセディの所へ来ないと思うわ」
クロエの意見。それもそうだ。
「勇者ラダンと関わっていた以上、大いなる真実について知っているのは確定でしょうけれど、セディとラダンが会ったことまで知らないでしょうね」
「情報共有していないというのは、勇者イダットと同じってことかな……ま、それならそれでやりやすいからいいとしよう」
会話をしながら俺達は城近くの詰め所へ。見上げないと上が見えない位置まで到達し、俺達は建物の中へ。
そこは詰め所……というか役所という表現が近かった。職員らしき人々が動き回っており、なんだか忙しなく思えてくる。
俺達がレナについて訊くと、受付の人は客室に通した。門前払いって感じではなさそうだし、この調子なら手紙は簡単に渡せるだろう。
程なくして、扉が開く。そうして現れたのは、前と変わらない姿の――といっても少しばかり疲れた様子の――レナだった。
「セディさん、お久しぶりです」
「ああ……まあ前の騒動からそんなに経っていないけど」
「そうですね」
クスリと笑うレナ。
「カレンさんを含め、他の方々が都に入ってきているのは知っていますよ」
「となると、勇者オイヴァのことや勇者バルナのことは?」
「もちろん知っています。城側でも何事かと話題に出たことがあるので」
……ふむ、その様子なら協力を得ることは容易いか?
「ところで、その方は?」
レナはクロエに視線を注ぐ。そこで彼女は自己紹介を行い……本題に入ることにした。
「えっと、俺とクロエは西部から東部へやって来た魔物の討伐のためにジクレイト王国を訪れた。加え、勇者バルナと魔族討伐に対し共同戦線を張ることも……そこで、国側でも協力してほしいと思い、こうして手紙をしたためてきた」
「相手は、女王ですね?」
「そうだ。直接女王に文書を渡すのはどうなのかと最初考えたけど、魔族討伐については少々事情もあるから、女王に直接伝えて対応したい面もあるんだ」
「権力の乱用にも思えるけどね」
クロエが言う……そもそもそっちが提案したんだけどな。
「わかりました。手紙については私が責任を持ってお渡しします」
レナは同意。俺のことを信用して、ってことだな。
「ただ、意見が通り期待通りに騎士が協力するかはわかりませんよ?」
「駄目元でやってるところもあるから、そこは心配しなくていいさ。なければないで相応の動きをする」
「そうですか、わかりました……手紙については必ずお渡ししますので、安心してください」
言ってから、レナはほのかに笑みを浮かべる。
「協力する場合、私がセディさんと手を組むかもしれませんね」
「以前、共に魔族と戦ったことがあるから?」
「はい」
……まあレナなら俺の能力とか知っているし、こっちとしてもやりやすい。
「そうか。もしそういうことになったらよろしく頼むよ」
「はい、こちらこそ」
そうして俺達はレナと別れた……ふむ、成果は上々といったところか。
「よし、では次の目的地……勇者バルナが率いる戦士団について、だ」
「勇者達が集まるっていうのだから、知ってる人とかいるかしら」
クロエの疑問。俺はそれに肩をすくめ、
「どうだろうな……シアナ、その辺りの情報はあるのか?」
「いえ、ありません。お姉様が調査しているみたいですが、こちらに調査結果が届いていませんね」
「そっか。ならまずは顔を知っておくところから、だな」
俺は先日バルナに教えられた宿へ。そこは俺達が宿泊する所よりも大きい建物だった。ただランクはそれほど変わらないかな。
「よし、入るぞ」
俺は二人に呼び掛けながら室内へ。さて、お目当ての勇者は……。
と、そこで――予想外の人物がいることに目を留めた。
「え……」
「どうしましたか?」
シアナが小首を傾げる。けれど俺は答えられず……やがて相手がこちらに気付いた。
そして、
「――セディさん!?」
相手もまた驚き、こちらへ近寄ってきた。
「お久しぶりです。まさかまたこうして出会えるとは……!」
「あ、ああ。そうだな」
俺は頷き――さらに後方からその人物の仲間と思しき人もやってくる。
――知っていないはずがなかった。その人物達は、俺が大いなる真実を知り仕事をしている時、出会った面々。
女神アミリースと共に活動した場所で出会った……勇者ロウと、仲間のケイト。
「えっと、二人はどうしてここに?」
ここにいる以上答えは決まっているが問い掛ける。彼は、
「実は勇者の方と手を組み魔族討伐をすることになりまして」
やはり……彼は戦士団の一員なのか。
そこでラウンジにいた幾人かがこちらに笑みを浮かべてくる。どうやらロウの仲間――つまり戦士団の勇者が結構いるらしい。
「そうか……実は俺も勇者バルナと協力することになったんだ」
「え、そうなんですか!? まさかまたこうして共に戦うことになるなんて」
「ずいぶんと面白いな」
「はい」
元気よく頷くロウ……純粋に再会を喜んでいる様子だが、こちらは少し事情が違う。
まさか、彼も……女神側はこれを知っているのか? 俺はエーレだけではなく、アミリースとも連絡をとって確認したいと率直に思った。




