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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者争乱編

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再訪問

 俺とクロエ、シアナはディクスと共にジクレイト王国へ向かうべく転移魔法陣のある部屋を訪れる。


「……確認だけど、ディクス。現在カレン達はどんな感じだ?」


 俺のことはフォローしていると聞いているけれど……。


「俺が戻って混乱しないか?」

「混乱、というよりは怒られることを不安に思ってるんだろ?」


 ディクスの問い掛け。うん、図星である。


「そこは上手くやっているから心配しないでくれ……それで勇者クロエ、私はセディの仲間の中では勇者オイヴァということになっているから、よろしく」


 ――魔王の弟であるディクスは勇者としても活動している。名はオイヴァで『退魔の勇者』という異名まで持っているくらいだ。


「大いなる真実の枠組みには驚かされるばかりね。勇者オイヴァのことは私も知っていたけど、まさか魔王の弟とは」

「これには色々と理由もあるけれど、時間もないからひとまず割愛させてもらうよ……それでセディ、君の仲間がおかしな行動をしているわけでもないし、ましてやそっちが前みたいに行方不明扱いというわけでもないから、混乱しているわけでもない。心配しなくていい」

「それならいいけど」

「ただカレンさんは寂しそうにしていたから、少しくらいは構ってやるべきじゃないか?」


 ……まあ、そうだよな。


「けど、今回の事件でそういうことができる時間があるのかどうか」

「ま、勇者バルナも性急に行動するってわけでもないだろうし、時間はあると思うよ。では、行こうか」


 なんだか久しぶりに仲間と合流するわけだから、緊張とかもあるんだけど……ひとまず俺は今回の敵について頭に思い浮かべ、そちらを優先しようと心の中で決める。そうした中で余裕があったら、カレンとかと話をしよう。

 俺達は転移魔法陣により移動し……ジクレイト王国領内へ。到着したのは森の中……見覚えがあった。というか前にジクレイト王国を来訪した際と同じ場所だ。


「確か、こっちの方角へ進むと首都が見えるんだよな」

「そうだ」


 ディクスは返事をしてから俺達を先導し始める。少しすると森を抜け街道が現れ――以前見た時と何も変わらない、天高くそびえる蒼き城があった。


「すごいわね」


 クロエが呟く。


「ジクレイト王国のお城は有名だから大陸西部でも話はあったけど……噂以上の迫力があるわね」

「クロエ、西部にこうした城はあるのか?」

「絶え間なく戦争が続いているから、豪華絢爛な城ってあまりないのよね。どちらかというと機能性を重視するというか……もちろん機能性を重視しながら綺麗なお城もあるけどね」

「――今回は以前と異なり、女王の協力が得られる」


 そうディクスは話し始める。


「女王との話し合いについてはこちら側が対応するから、ルオン達は勇者バルナに集中してくれればありがたい」

「わかった……まずはカレン達と合流だよな?」

「そうだ」


 ディクスが歩き始める。俺達はそれに追随し、ゆっくりと城門へと向かっていく。


「私のことは仲間にどう説明する?」


 クロエが尋ねる。そこで俺は思考し、


「仕事を続けた結果、討伐すべき魔物が西部へ逃げた。その時に知り合っていくつか仕事をした……こんなところでいいか?」

「私が東部までついてきたというのはどう説明するのかしら?」

「新たな仕事を受け、クロエもそれに協力する……ってことでいいんじゃないか?」

「わかった。セディ、私のことを説明する時にボロを出さないでよ」

「大丈夫だって……たぶん」

「不安になるようなことは言わない」

「その辺りは私などもフォローしますから」


 シアナが続く。ふむ、そういえば――


「ディクス、俺が仕事を受けて各地を転々としているって話だけど、シアナについてはどう説明するんだ?」

「いくらかシアナとも関係があった、ということにでもしておけばいい。共に同行することで最終的にセディと組むようになったと」


 ふむ……シアナの実力はカレン達も知っているから問題ないとは思うけど、組むようになったとなれば、カレン達も意見したいことがあるだろうなあ。

 ま、この辺りは仕方がないか……そんな心境の中でとうとう町に到着。特に問題なく門を抜け城下町を歩く。


 人通りの多さなどは相変わらずであり……俺は周囲を見回しながらディクスへ問い掛けた。


「ディクス、仲間はどこにいるんだ?」

「城近くにある宿の一室で待機している。実を言うと最初、勇者バルナは私に干渉してきたんだ」

「勇者オイヴァの力を欲していると」

「たぶんそういうことなんだと思う」

「もし襲われても、あなたならば問題は出ないのではないかしら?」


 クロエの問い。


「魔族とも連係して……魔族の拠点で全員を捕まえることだってできるでしょう?」

「……勇者バルナが神魔の力を持っているかもしれないって可能性を考慮しているのが一つ。もしその力を利用して勇者をどうにかしているのなら、私が無事でも面倒なことになりかねない」


 そう述べたディクスは、ここから少し声のトーンを落とした。


「それに、単独では失敗する危険性もある。もし私が無傷で対処はできても相手は健在だったら……魔族としての姿を見せているかもしれないし、そうなれば勇者オイヴァの立ち位置が危うくなる。よって仲間のこともあるセディ達が協力する……それによりもしもの場合でも対応できる」

「なるほどね、わかったわ」


 そんなやりとりを交わしながら俺達は大通りを進む……そこで俺はクロエ達の会話から一つディクスへ質問。


「ひとまずバルナもこの町にいるんだよな?」

「少し離れた場所に宿をとっているよ。勇者セディの仲間達ってことで、勇者バルナも君に会いたいのか町を離れていない」

「そうか。まずは彼と会ってみて話をするところから、だな」

「セッティングは私に任せてくれ」


 頼りになる言葉。そうこうする内に俺達はカレン達のいる宿に到着した。

 なんだか緊張するな……仲間と合流するだけなのでこんな気持ちになる必要はどこにもないのだが……色々なことがあったからな。


 カレン達と再び別れて仕事をいくつかやったわけだけど、そのどれもが厄介だった。なおかつ今はその仕事の中で大きなもの……勇者ラダンに関するものが、残っているし今その一派と戦おうとしている。

 ただ、この一派との戦いが終われば、勇者ラダンが神魔の力を伝えた人物についてほとんど決着がついたことになる。勇者ラダンに直接つながるようなことはないが、厄介な力に対処した事実は大きいだろう。


 たぶん勇者バルナとの戦いは、一派との戦いに区切りがつく……そんな予感を抱きながら、俺は宿の中へと入った。


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