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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者襲来編

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207/428

町への襲撃

 まずはエーレに報告を行う……が、こういう事態は予想していたらしく、反応はひどく淡泊なものだった。


『こちらは、そっちがどのような状況になっても対応できるようにはしておこう』

「……エーレ、ずいぶんと冷静だな」

『勇者クロエの言動を二人から聞いて、そういうトラブルを招き入れる人物なのだろうと推測していたまでだ。おまけにセディまでいる。何かあると思っていてもいいだろうに』

「ちょっと待て、俺は関係ないだろ?」

『そうか?』


 一応、色々と騒動に関わって来たのはそれなりに理由があってのことだし……と思ったのだが、エーレから言及が。


『確かにセディには事件に関わる理由もあったためトラブルメーカーだと考えるのは早計かもしれない。だが、二人の勇者が合わさったことによる相乗効果は計り知れない。それによって、相手は引き寄せられたと考えることもできるだろう』

「エーレ、ちょっと面白がっていないか?」


 冗談のような内容の解説に言及すると、エーレは「そんなことはない」と大真面目に応じる。


「人というのは、こういう人自身が引き寄せる何かというものを偶然などと言っているが、そういうことを私自身多少ながら考慮に入れているというだけの話だ」

「……なんだか胡散臭いけど、まあいいや。ともかく、俺達はこの騒動を解決すればいいんだな?」

「ああ。勇者クロエに関する判断はもう終了していいだろう。降って湧いたような神魔の力に関する騒動だが……よくよく考えれば相手だって謀略を張り巡らしている。そういう場所に近づけば関わる可能性は少なからずあっただけという話。セディ達はこの戦いに注力してくれ」

「了解……ただ、今回故郷がこうやって狙われている以上、クロエが今後関わってきそうな気がするけど」

『その辺りについては私も考える。もっとも、この騒動がどう終わるかで変わってくるため、今は何とも言えないな』


 それもそうか……現状クロエは当事者となってしまったので、大いなる真実について明かすかどうかは今後の事件の進み方次第だろう。


『私はテスアルド帝国に関してもう少し調査を行う。両者共気を付けてくれ』


 会話が終わる。俺達はエーレの姿が消えた後、同時に息をついた。


「……始めるか」

「そうですね」


 同意し、俺達は宿を出た。






 戦士団の拠点に向かうと、その場にはクロエが立っていた。


「待っていたわ。かなり深刻な状況になっている」


 腕を組み話す彼女。深刻なのは理解できるので、俺も難しい顔をして、


「それを聞く前に……兵士の方は?」

「状況を説明したら、すぐさま駐屯地へ向かったわよ」

「……どういう状況だ?」


 問い掛けると、クロエは険しい顔をして話し始める。


「南にある森……そこに魔物が出現した」

「あの場所は度々出現しているみたいだけど……」

「問題は、その数」


 深刻な表情で語るクロエ。となると――


「……どの程度だ?」

「ニコラが魔法で気配を探った結果、具体的な数までは解明できなかったけど十や二十ではきかない数が存在している」


 なるほど。その数だとさすがに手に余るだろう。


「問題は、その魔物はどうやって動いているのかよ」

「さっきの人間が操っているのか、それとも何か別の要因があるのかってことか?」

「あの人間ではなく、例えば人間と手を組んだ魔族という可能性もあるでしょ?」

「そうだな」


 同意した時、戦士団の拠点からニコラが姿を現した。


「ナクウルの持っていた剣の処置は終わりました……これからどうしますか?」

「やはり鍵は、先ほど俺達の目の前に現れた奴だろう」


 こちらの言葉に、クロエも同意するかのように頷く。


「あいつを見つければ事態は好転するかもしれないけど、町を出ている可能性の方が高いわよね」

「いや、そうとも言い切れませんよ」


 シアナが口を開いた。


「魔物の発生したメカニズムはわかりませんが、相当な数を出現させたということは、故意に魔物を生み出していると考えてもおかしくないでしょう。そして町を狙うように魔物が動いているとしたら、命令されているのは確定。魔物の動きをある程度制御するには、近くにいないとできないですし」

「なるほど、となると魔物を制御するために町の周囲にいる可能性はあると」

「町の中の方が隠れやすいので、その線もありかと」

「わかった……セディ、魔物の方はどうする?」

「二手に分かれるか? さっきの男を見つける役割と、魔物を倒す役割」

「男性を追う役目は、私が請け負いましょう」


 またもシアナ。その言葉にクロエが少なからず驚く。


「あなたが? 大丈夫?」

「私はセディ様と共にそれなりに修羅場もくぐってきました。単独行動で魔族と相対した事もあります。男性を追うくらいは難しくありませんよ」


 ――まあ、シアナなら問題なく相手を追うことができるだろう。問題は神魔の力を相手が所持していた場合。そうなると彼女も危ない気がするのだが。

 そう思い視線を投げてみると、彼女は「平気です」といった感じの視線を返してきた。もしや神魔の力を検証した段階で、何かしら対策を講じることができたのか?


 こちらの眼差しに、シアナは頷いた。俺の考えを読んでいるような雰囲気であり、神魔の力について策があると主張しているようだ。


 そしてシアナは、クロエ達に続ける。


「ニコラさんは、他の場所から魔物が出現していないかを確認するべきでしょう。南はあくまで陽動などという可能性もゼロではありませんから」

「なるほどね……ニコラ、できる?」

「わかった。そういうことなら伝令役に戦士が多少欲しいけれど」

「なら、知り合いの誰かを使えばいいわ」

「けどそれじゃあ、魔物に対抗できる人が――」

「数が数だから、戦士団の助力は逆に足枷になるわ」


 ――そのセリフを告げたとほぼ同時、ナクウル達戦士団の面々が拠点の建物から出てきた。


「魔物との戦いは、私とセディの二人だけでやる」

「……クロエ!?」


 いち早く反応したのは、ナクウル。


「ちょっと待てよ! 魔物の数は相当なんだろ!?」

「だからこそよ。変に助力があるよりは、むしろ一人の方がいいわ。その方が気兼ねなく力を出せるし」


 ――これについては正直俺も同意だった。ナクウル達の技量では、さすがに俺達と共に戦うのは危険すぎる。


「ナクウル達は、町の人達に警告し、避難させて」

「避難……」

「私は避難方法とかわからないから、ナクウル達にやってもらわないといけないの。あと、四方で目視を行う見張りがいるわね。現在も張り付いているんでしょ?」

「あ、ああ。厳戒態勢ということで二人一組で東西南北に設置した高台から見張るよう言い渡している。他の面々は連絡役にしようかと」

「一人か二人はニコラにつけてあげて。それと、シアナさんは――」

「私は大丈夫です。町も多少ながら歩き回って地理感覚もある程度掴めています」


 彼女の方も変に助力が無い方がやりやすいだろう。魔王の妹であるその力を発揮することはできないが、騒動の発端となった男性と一戦交えても問題はないはず。


「大丈夫なの?」


 クロエが再度問う。シアナの実力がわからない以上、不安はもっとも。だから俺がフォローを入れる。


「彼女の技量は相当なものだよ。俺が保証する」

「わかった……シアナさん。捜索は任せるわ」

「はい」


 どう行動するかについては決定。俺とクロエで魔物の処理。ニコラが状況把握とサポート。そしてシアナが当該の男性を捜索。

 町の中にいる可能性があることを踏まえると、魔物をけしかけるだけでは終わらないかもしれない……そんなことを考えつつ、俺は行動するべくクロエと共に歩き出した。


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