表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者襲来編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

200/428

戦士団の検証

 戦士団が使っている建物は、外観通り酒場を払下げたもののようだった。

 入り口を抜ければ広い酒場特有のホールが存在。机や椅子が点在しているのだが、その上には色々と資料などが置かれ、雑多な印象を与えている。


「申し訳ありません。本当なら片付けるべきなんですけど」

「突然押しかけたのは俺だし、平気だよ……ただ、清潔さを保つというのはこういう組織で活動する上で一種のモチベーションにもなる。できれば清掃した方がいいかな」

「肝に銘じておきます」


 何かすごく重く受け止めている気がする……考えていると、奥にある階段から下りてくる靴音が。


「……あれ? ナクウル?」


 ちょっと小太りの、革鎧を着た戦士だった。腰に下げた剣は一般的な長剣なのだが、横幅がそれなりにある彼にはなんだか小さく見えるし、あんまり似合っていない。


「ああホンク。色々とアドバイスしてくれるということで」


 と、俺を指し示す。どうやらこちらの顔は把握していたようで、ホンクは驚いた顔を見せた。


「勇者セディ……!」

「そんな改まらなくていいよ……ところでナクウルさん。戦士団は全部で何名?」

「合計して十五名です。ただ見張りを入れた人数であり、魔物と直接戦うメンバーは五、六人です」


 そうなると、実質的に魔物と戦うのは戦士団の三分の一くらいということか。

 町の規模からすると少ないようにも思えるが……国の兵士と連携しているということもあるんだろう。きちんと魔物と戦えている以上、戦力としては十分なのだろう……ここで俺は、ホンクの武器を見つつ確認する。


「ナクウルさん、例えば使用している武器なんかは、昨日ナクウルさんが使っていたような物ばかり?」

「あれは結構高級品で、あのくらい力を秘めているのは私が持つ一本しかありません」


 語りつつ彼は腰の剣に手を置く。鞘にしまわれているため気配は感じないが、昨日感じられた魔力は紛れもなく神魔の力――彼はこう語っているが、一応他の面々の装備品も確認しておかないといけないだろう。


「ふむ、わかった……ただそうなると他の面々の装備が気になるかな」

「ご紹介しましょうか」


 ナクウルが隠し立てすることなく話す。こうやってオープンにする以上、やはり神魔の力を持った剣だということはわかっていない――というより、事情を把握していないものと考えてもいいだろう。

 やっぱりここにある事自体は偶然なのか……いや、商人側が故意に持ってきたというのも否定できない以上、両方の可能性を考慮して調べた方がいいだろう。


「ホンク、武器を持ってきてくれないか?」

「ああ」


 ナクウルの指示に彼は奥へと引っ込む。


「商人から購入した武器はいくつもあるんですけど……将来団員が増えることも考慮し、使っていない武器もあります」

「そうした武器と、同じくらいのレベルの物を使っていると言いたいわけか」

「その通りです」


 会話をする間にホンクが戻ってくる。で、俺は彼から剣を受けとり確認してみる。


「ふむ……」


 一見すると、単なる魔力を加えた長剣……魔力が封じられた武器には二種類あり、魔力を練り上げつつ生み出された物と、元々作っていた武器に魔力を付与する物がある。前者は魔力が武器全体に浸透するため後者の方と比べても同じ魔力量で威力がずいぶんと異なる。

 しかし、前者の方法は非常にコストがかかるため、めったに市場に出ない。よってもっぱら戦士などが装備するのは後者の方。長剣などに特殊な魔法を加え、威力などを向上させるというわけだ。


 まあ元々の素材に魔力が存在していないので強度なども低いのが欠点だが、その分安価で量産もきく……もっとも、彼らのような小さな戦士団で購入するには相当大変だとは思う。


 じっくり観察した結果――渡された剣は後者の方で間違いない。それに神魔の力なんかは存在していない。東部でも流通しているごく一般的な魔法剣である。このくらいならばあっても普通だし、魔物を退治するくらいなら十分な武器だろう。

「なるほど、魔法剣なのは間違いないので、これなら魔物にも十分対抗できるでしょうね」

「ありがとうございます……少し自信がつきました」


 ナクウルは喜ぶ。俺は「どうも」と応じつつ、このレベルならばやはりナクウルの持つ剣だけが問題か、と思った。


 で、ナクウルの剣をどうすべきか考えてみる……最優先とすべきは剣を破壊することだろう。神魔の力を持つ存在が多くなることは勇者ラダンの目論見である……よって、それを止める。

 まあナクウルがあの剣を持っていて本当にそうなるのかは未知数ではあるのだが……その辺りはシアナ達の情報も加味して考えた方がいいかもしれないと思った時、ナクウルが告げた。


「あの、ぶしつけで申し訳ないのですが……一つ、頼みが」

「頼み? ええ、構いませんけど」

「剣の技量についても、見ていただけないかと」


 剣の技量……それはつまり、訓練を行いたいということか。


「……わかりました。構いませんよ」


 俺は同意。その流れでナクウルの剣について何か特性が判明するかもしれない……そう思っていると、

「他の仲間を呼んでもいいですか?」

「はい、どうぞ」


 仲間全員に行いたいのか……さすがに戦士団全員というわけではないだろうが、それでもこの建物の中にいる面々が対象というわけだろう。

 まあ戦力分析と俺の訓練の兼ね合いもあるし、別にやっても構わない。ナクウルは俺の返事を聞くと「ありがとうございます」と礼を述べ、ホンクに他の団員を呼ぶよう指示を出した。


「ちなみに、ここにいるのは後何人ですか?」

「私達を含めて四人です……全員、この村でクロエ達と共に戦士団を始めた初期メンバーです」


 ということは、クロエの古馴染みか……考えていると、ニコラの視線を感じた。首を向けると彼女はどこか申し訳なさそうな顔をしていた。

 俺に対し色々要求していることに対する懸念だろう。だからそれを払拭しようと俺は声を出した。


「俺の方は気にしていないから」

「……ありがとうございます。私からもお礼を」

「なぜニコラが?」

「戦士団と、私やクロエは切っても切れない関係なので」


 深い繋がりがあるということか。そうなると神魔の力を秘めた剣がここにあるという事実が非常に重くのしかかってくる。対処のやり方を慎重に決めるべきだろう。

 戦士団に何かあった場合、下手をするとクロエ達にも何かしらダメージがいく……何かが起こるとなれば、絶対ネガティブな方向なので神魔の力に対し恨みを抱くことになるだろうか……エーレ達からするとそういう感情は好都合かもしれないが、できればそういうの話にしたいところ。


 理想的なのは情報を集めナクウル達に何かしら被害がもたらされる前に対処することだが……勇者ラダンについてや、彼が力を当てた脅威についてはある程度情報を得ているが、今回のことに関与しているのは誰なのかわかっていない。なおかつ、もし広範囲にわたって起こっている出来事だとすれば面倒な話となり、対処も非常に難しくなるのだが――


 考えている間に、残り二人がやってくる。一方は女性でちょっとばかり黒髪がボサボサのスレンダー美人。もう一方は男性でやや身長が低い茶髪……ただ、年齢的にはクロエ達と同年代。

 二人が来ると、ナクウルは手で二人を示し俺へと話し出す。


「紹介します。女性の方がマルセラ。そして男性の方がガロといいます」

「よろしくお願いします」


 女性のマルセラの方が礼を示す。遅れてガロの方も同じような所作を示し、俺は「ああ」と返事をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ