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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
賢者打倒編

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反族長の存在

 エーレ達と決めた目的を果たすためには……そういうことを色々と考えた上で、俺は相手に告げる。


「実は私達、知人に会いに来たのですが……話を聞くところによると、厄介な立場にいるらしいんです」

「厄介な立場?」

「はい。どうもデイン族長に異を唱えている面々の下で働いているとのこと……それをどうにかするつもりはありませんし、知人を止めるような真似はしませんが、一目見て無事かどうかだけは確認したいんです」

「ああ、なるほど。知人のいる反族長側の誰かと会いたいわけだな」

「可能でしょうか?」


 神妙な顔つきで俺が言うと――老人が、俺達へ近づいた。


「儂ならできるよ」

「え、本当ですか?」

「うむ、話しぶりから知人が厄介事に巻き込まれている、という認識でいるのはわかった。反族長と言うとなんだか聞こえは悪いのだが……儂達に色々と手助けをしてくれたりしておるから、安心していい」

「そう、ですか……」

「しかしそうは言っても不安は拭いきれんじゃろう。儂ならどうにかできるよ」


 なら、老人によって反族長側と接触することは可能だな……とはいえ、知人云々の嘘がバレないようにするためには、もう一つ言っておかないといけないことがある。


「それで……できれば、知人に会う前に俺達自身、どういう人物達の下で働いているのか知りたいんです」

「つまり、上のエルフを会いたいと?」

「ええ、そういうことです……無理であれば構いませんが」

「儂の知人に上の方々と話のできる者がいる。掛け合ってみよう」

「ありがとうございます……けど、認められるのでしょうか?」

「彼らを倒したのだ。そのくらいは軽く了承するじゃろう」


 老人は言うと、この場から立ち去る。その間に他のエルフや人間達が、気絶する面々をどこからか持ち出した縄で縛り始めた。


「……こいつらは、街の中を転々とし、迷惑をかけ続けていた奴らなんだ」


 最初に声を掛けてきたエルフが言う。


「証拠がまともにないから今まで捕まらなかったし、事あるごとにノージェスさん達を挑発したりもした」

「……ノージェス?」


 新しい名前だな。


「その方が、反族長派のトップだよ」


 トップか……よし、憶えておくとしよう。


「けど、旅人を狙ったとわかれば詰所だって動くさ。それに、全員お縄となったら証拠も出てくるはず……本当に、ありがとう」


 ――俺達は打算ありきで彼らを倒したのでなんだか申し訳ない気分になったが……とりあえず感謝に対し「どうも」とだけ返答した。

 で、俺はエーレとシアナに首を向ける。結果も上々だし、二人も喜んでいることだろう――


 そう思いつつ見た顔は、双方がなんだか困惑していた。


「……どうしたんだ?」

「いや、その」


 エーレは頬をかきつつ、


「その、だ……こうして人間に対し直接役立って、礼を言われることがなかったからな」

「ええ、そうですね……」

「……人助けとは、気持ちの良いものだな」

「まったくです」


 エーレとシアナがうんうんと頷き始める……なんだか大変だなと心の中で思いつつ、俺は何も言わないまま老人の帰りを待つことにした。






 結果として、俺達の行動はかなりの評価が成されたらしく、要望通り反族長側のエルフと話をすることができる状況になった。

 正直話が進み過ぎて驚くくらいなのだが……エーレが「良いではないか」と一言で結論を出し、俺達は老人から連絡を受けたエルフに案内され、街の外周部に位置する建物までやって来た。


 見た所、屋敷……という程ではないが、普通の人が暮らす家よりは大きい。外観としてはかなり古いため、建てられたのは街が発展する前だろうと予想をつけることができた。


「では、こちらへ」


 エルフの案内に従い、俺達は建物の中へ。そこは、言ってみれば寄宿舎のような場所で、入口横手には入出館を行うカウンターなどが存在していた。


「以前は客人用に使っていた宿、といったところか?」


 エーレが予想を告げると、案内を行うエルフは首肯する。


「そうです。本来要人のために用意していたもので、町が発展する前には最も大きい建物でした」

「しかし、街の中心がああいったことになったため現在は捨て置かれてしまい、あなた方が本拠としているというわけか?」

「本拠ではありません。申し上げることはできませんが、いくつかの施設を転々としています」

「一つ所に留まらないのは、族長に狙われるからなのか?」


 エーレが問うと、エルフは難しい顔をする。


「……そういう可能性があるのでは、という見解です」


 実際に、生じたことはないんだろうな……まあ装飾品店の女性の言葉から察するに、反族長側の面々も一定の支持を集めているのは予想できる。デインがそうした者達に対して粛清などをしないのは、やれば求心力を失う危険性がある……と、思っているからだろう。


 こうして考えてみると、結構複雑な状況に陥っているわけだ……思考する間に階段を上って廊下を進み、とある一室の前でエルフがノックをする。


「ノージェス様、お連れしました」


 そしてエルフが名を呼ぶ……って、ちょっと待て。


「え……トップのエルフ?」

「の、ようだな」


 俺は驚いたのだが、一方のエーレはさして気にする風もない。


「礼を言いたいということだろう? それほど厄介な相手だったというわけだ」


 エーレが断じると共に、扉が開く。エルフはその状態で扉の横に立つと、俺達に入室を促す。


 エーレが先導して部屋へと入る。中は書斎か何かなのか両脇に本棚。部屋中央にテーブルと空いている椅子が三つ。そして扉と反対側にはテラスへと続く大きな窓があるのだが、現在はカーテンによって閉め切られ、天井付近にある魔法の光によって室内は照らされている。

「ようこそ」


 そして俺達と対面するように座っていた相手が、立ち上がり声を掛けた……見た目は二十代後半といったところか。金髪碧眼に白い肌と、これまたデインと同様典型的なエルフ……なのだが、

 族長であるデインと顔立ちが似ているというのは……偶然ではないだろうな。


「ふむ、族長のご家族か?」


 同じことを思ったのかエーレが先んじて問い掛ける。すると、


「なるほど、弟に会ったことがあるのですか」


 弟……やはり、兄弟なのか。


「自己紹介をしましょう。私はノージェス=エッド。お察しの通り、族長デインの親族……兄にあたります」

「なぜ兄が、このような場所で族長に反抗を?」


 相手に礼を述べさせる暇すら与えずエーレは問う。俺としては内心大丈夫なのかと危惧したが……彼は、一切顔をしかめることなく応じた。


「兄として、弟のやり方に反対をした……ただそれだけです。街を発展させようとする姿を見て私も苛烈な言い方をした結果、兄弟の縁を切ったというわけです」


 縁を……根深い問題のようだ。


「ただ私を支持して頂いている方々も多くおり、弟は私を追放するような真似はできなかった……ですが表舞台に立つことは許されず、こうして街の端で暮らしています」

「なるほど……」

「そして今日は、あなたがたに礼を言いたいがために案内しました。本来私が出向くところなのですが、先の事情により迂闊に外へは出れないので、こういう形に」


 ノージェスは言った後、俺達に座るよう促す。とりあえずそれに従うことにしつつ、エーレが真ん中、俺が右でシアナが左に座った。そしてノージェスは椅子に座り直し、口を開く。


「さて、今回捕まえた人物についてですが……聞いているかもしれませんが、あの者達は私達が雇い入れた人間……大半はこの街を離れたのですが、ああした厄介者が残っていたわけです。捕まえてくれたことに、感謝します」

「それは構わないのだが……今はああした人は雇わないのか?」


 エーレがさらに突っ込んだ内容を訊く。


「あいにくと、そんなつもりは毛頭……無論自衛のため多少の味方は存在していますが、あくまで専守防衛。変な噂は立てないようお願いします」

「わかった……すまないな」


 エーレは謝罪する。それと共に口元に手を当てた。

 おそらく、どういう風に話を持っていくかを悩んでいるのだろう。


 とはいえ俺やシアナが介入するのも不自然……ということで黙っていると、改めてエーレが切り出した。


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