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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
首都動乱編
105/428

青と赤

 騎士達が悪魔と攻防を繰り広げ始めた時、俺はどう動くか迷った……このまま周囲の騎士達がやられれば、いずれは逃げられる――その時、フォゴンが口を開いた。

「まさか勇者セディまで現れるとは予想外だったが……支障はないようで安心したよ」


 彼は傭兵達と共に歩き始める。正面にいる俺達が目に入っていないような、無人の野でも進むかのような足取り――


「さて、ヴラシス。さっさと終わらせてくれ」

「はい」


 そしてフォゴンは名を呼び、騎士が反応。名はヴラシス――

 彼は左手に魔力を収束させると、光の槍を一本生みだす。そしてそれを軽く振るようにして、カレンの結界を薙いだ。


 次の瞬間、彼女の構築した結界があっさりと破砕する……一撃で!?


「なっ!?」


 カレンもまたそれに驚いた。まさか女神の結界がこうもあっさりと――

 さらに悪魔が屋敷の外へと出てくる。その中には青ではなく赤の混じった悪魔もいて……状況は、どんどん悪くなるばかり――


「セディ!」


 ふいにディクスが叫ぶ。視線を移すと、二体同時に襲い掛かって来た悪魔を横一閃している彼がいた。


「騎士達の援護を……シアナ!」

「はい!」


 ディクスの言葉に応じ、シアナが彼の隣まで来る。先ほど悪魔から一撃受けたが、外傷は特にない様子。


「破れ――精霊の剣!」


 続いてカレンの魔法。状況を読み光の剣は騎士へ襲い掛かろうとしていた悪魔の直撃し、滅んだ。


「二人で相手するというのか」


 フォゴンはディクスの様子を眺めながら、興味深そうに呟いた。


「オイヴァ殿とはいえ、それはいくらなんでも見くびり過ぎではないか?」


 ディクスは答えず、黙って剣を構え相手を見返す。その間にも悪魔は四方に散らばり、俺はフォゴンやモーデイルのいる場所から距離を取りつつ、兵士達の援護を行う。

 ディクスとフォゴンは互いに睨み合い、僅かな時間動きを見せなかった。その間に俺は悪魔を二体倒し、やがて――


「……まあいい。君の仲間がしもべを倒すのに時間はかからなそうだ。さっさと突破しよう」


 一方的な宣告。それと同時に、ディクス達が戦闘を開始した――俺は付近にいる悪魔を倒しながら、場合によっては援護をする心積もりでディクス達の戦闘を観察する。

 先に仕掛けたのは悪魔。けれどディクスは横にかわし、シアナもすり抜けるように拳を避け、掌底を放った。


 悪魔は胸部に一撃を受け消滅。次いでディクスも剣で一薙ぎして、見事打ち倒した。

 けれど後続からさらに青混じり――青き悪魔が襲来する。今度は正面に加え左右から襲い掛かる――さすがに一撃受けてやられることはないはずだが、大丈夫なのか不安になった。


 攻撃に対し先んじて動いたのはシアナ。は一番最初に接近してきた正面の悪魔を間合いを詰めて倒し――さらに後続から悪魔が来る。


「ふっ!」


 けれどそれに、ディクスが反応した。空を切るように一閃すると、シアナに接近していた悪魔が吹き飛び、空中で消滅。風の刃か何かを放ったようだ。

 今度は二人の左右から悪魔が襲い掛かる。けれどディクス達は同時に攻撃を避けると、恐ろしい程的確な動作で悪魔に一撃叩き込み、倒した。


「……勇者オイヴァだけでなく、その仲間も中々の技量だな」


 フォゴンは感心した様子で呟く。ディクス達が悪魔と交戦を開始して以後、彼らは動かなかったのだが――


「しかし、腕はわかった……勇者オイヴァ、悪いが突破させてもらうぞ」


 自信ありげにフォゴンは告げ――今度は赤を含んだ悪魔が、走り込んだ。

 ディクス達は新たな敵に対し僅かながら警戒を抱いたようで、迫る悪魔に対し正面から相対する。数は二体。一体ずつディクス達へ仕掛けるようだが……自身に満ちたフォゴンを見て、一体何があるのか気になった。


 考える間にシアナへ向かった悪魔が攻撃を行った。手段はやはり拳――対するシアナはそれを避け、青き悪魔と同様間合いを詰め、掌底を叩き込んだ。

 倒した――そう思ったのだが、目前の悪魔――赤き悪魔は僅かに身じろぎしただけで、ほとんど反応がなかった……効いていない!?


「な――」


 シアナもまた驚愕の声。その間に悪魔が反撃に移る。接近していたシアナへ向け、体当たりを仕掛けた。


「シア――!」


 ディクスは援護したいのか名を呼ぼうとした。けれど彼にも悪魔が接近し、ディクスはそれに対応する他ない。

 悪魔の攻撃がシアナに迫る。彼女は間合いを詰め過ぎたため避けられないと判断したらしく、腕に魔力をまとわせガードする構えをとり、


 攻撃が、シアナに直撃した。それにより、彼女の体が宙に浮く。


 俺は思わず声を上げそうになり――その体が傾き、なおかつ背中から地面に倒れる様を、しかとその眼に焼き付けた。


「シアナ――!」


 俺は思わず叫び、近くにいた悪魔を薙ぎ倒すとディクス達の援護へ走る。一方のディクスも赤き悪魔からの攻撃を受け、横に吹き飛ばされていた。

 その光景に驚愕しながらも、所持している能力に戦慄する――全力から程遠いとはいえ、ディクス達を押し返す能力を持つ悪魔を生み出すなど……驚異的だった。


「勇者セディも、容易く捻れそうだな」


 近づく俺に対しフォゴンはそう告げ――別の赤き悪魔を俺に差し向けた。

 シアナやディクスの攻防を見て、攻撃を受ければ最悪戦闘不能になる可能性がある――そう心の中で断じ、俺は放たれた拳を回避した。


 間髪入れずに悪魔から攻撃が来る。完全に防御を捨てた攻撃であり、俺の斬撃を耐え切れると踏んでいるのがありありとわかった。


「――おおっ!」


 対する俺は雄叫び同然の声を上げ、剣に魔力を集める。確かに目前の悪魔は強力。しかし、高位の魔族や魔王を打ち倒したこの力をもってすれば――


 自身の力を信じ、魔力を結集させ剣を薙ぐ。


 悪魔は避ける素振りすら見せず、一撃をその身に受ける――結果、斬撃が悪魔の体に入り込み、両断した。


「――何?」


 そこでフォゴンが声を上げた。顔は訝しげなものとなり、俺を奇異な目で見据える。


「一撃……となれば、その実力は噂通りというわけか」


 どこか憮然とした表情を伴いフォゴンは語る。一撃で倒せば動揺でも見せてくれるかもしれないと期待していたのだが、そうはならず逆にこちらが肩透かしを食らった気分だ。


「そしてまだ改良の余地はありそうだな……まあいい、ヴラシス」

「はい」


 フォゴンの声に騎士は応じ、先行し始めた。吹き飛ばされたディクスやシアナが体勢を整えようとする中、彼は手近にいた騎士や兵士へ攻撃を開始する。


「死にたくなければ、逃げろ」


 冷酷な声音と共に騎士の一人へ斬りかかる。俺は援護に入りたかったが、今度はディクスを吹き飛ばした赤き悪魔が接近し、交戦を余儀なくされる。

 魔力を結集し、悪魔に相対。その姿をモーデイルやフォゴンは一瞥し……やがて興味を失くしたか、ヴラシスの後を追う。


 くそっ……胸中毒づきながら俺は赤き悪魔の攻撃を避け、一撃叩き込んだ。やはりよける構えは見せない。どうやら一定の命令を受けて、変更は効かないらしい。

 そして悪魔は消滅する。全力攻撃ではあるが、俺の剣で悪魔は倒せる――ならばと、標的を残り一体の赤き悪魔へ向けようとした。


 その時、ヴラシスの姿が俺に目に留まった。騎士の一人を倒し、剣を血に染め――その視線の先には、カレンの姿があった。

 まずい――彼女は魔法で的確に青き悪魔を倒している。それを見て、ヴラシスは警戒したに違いなかった。


 即座にそちらへ向かおうとしたが――目の前に最後の赤き悪魔が阻んだ。俺はすぐさま魔力収束を行い、一気に片を付けるべく間合いを詰める。

 けれどその時間は、ヴラシスがカレンに近づく大きな好機となる――彼は淡々とした足取りで、悪魔を滅ぼしたカレンに迫った。


「っ……!」


 そこでカレンも気付き、両手をかざす。しかし魔法を撃つよりも早く、ヴラシスはカレンを間合いに入れた――


「させないさ」


 そこへ、横から割って入るようにしてディクスが援護する。ヴラシスの放った剣はディクスと衝突し、双方剣が噛み合いしばし動きを止めた。


「セディ様!」


 次に、シアナが俺の近くへ来ようと走る。俺はそれに応える前に、眼前に迫る赤い悪魔の攻撃を回避し、斬撃を見舞った。結果消滅し――シアナが俺の所に辿り着いた。


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