第3.3話:満月を見ている
長くなりそうなので二回に分けることにしました。
まだ『恥ずかしい』と言っていたところには入っていませんが、今回は今回で結構アレです。
それではどうぞお楽しみ下さい。
…テーブルの上に軽い食べ物とたくさんのビンが並んでいます。
見ているだけで悦びのため息が漏れてしまいそぉです。
あぁ…色とりどりのビン…今すぐ、あぁ今すぐに…
「ぜぇんぶ飲んであげるからねぇ!!」
…ワインさん、エールさん、ウィスキーさん、ブランデーさん、ヤムタ国から取り寄せたショーチューさんにヤムタ酒さん。
「わったっしっのっ、いっとっしっい、おっさっけっさぁぁぁんんんっ!!」
「…あの、ガルザさん?」
「…何も言うな、言わないでくれ。」
…むぅ?愛しの旦那様がしけた顔していますねぇ…
「あぁなぁたぁ、そんな顔してたらお酒がおいしくないですよぉ?お酒がおいしく飲めないなんて大犯罪ですよぉ。」
「お前な…」
むぅ、ダメダメです。こうなったらアレです。
「そっちがそーゆーんだったらお月様のお話をしちゃいますからねぇ!」
「?お月様のお話…ってなんですか?ガルザさん。」
「あたしも初耳。」
「…っ!!待てっ止めろっ!」
ふっふーん。慌ててますねぇ、でもダメです。お話するって決めたんです。
「あのですねぇ、私がアサシンやってた時のお話しでぇ、更にその次の日にはミーナちゃんも一緒っていう出来事でぇす。」
「「……それって…」」
「ーっ!!」
瑞祥さんとミーナが驚いた顔をして旦那様の方に視線をスライドしましたねぇ。あ、逃げた。まぁいいや。
「ガルザさん逃げちゃいましたねぇ。」
「その内帰ってくるでしょ恥ずかしがってるだけみたいだったし…それよりお母さん、話の続き!」
ふふふふ、こういう話をするのも悪くないかもねぇ♪
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「厄介な仕事を受けた。」
アサッシンギルドの頭領が渋い顔、というより悲痛といっていい顔で言った。
マリアの冷笑み(ほほえみ)といえばこの国どころか、大陸一とも言われるアサッシンだ。
そんなアタシの前でそんな顔をするのだから、それこそチェーンソー持って神様殺す程度じゃぁ済まないんだろう。
「どんな仕事さ、西の山の黒鱗竜でも殺して来いってのかい?」
この国においてアサッシンの仕事は裏と表がある。
裏はまぁ殺しだ。他の国と同じ。
おもては…冒険者やら勇者さまがやるような、モンスター等の討伐や、戦争時の傭兵等だ。
ついでに言うと、裏の仕事も相手を選ぶ。
早い話が主に悪人しか殺さないということだ。表の仕事があるからそれでも十分やっていけるわけだ。
そして、このアタシにとって厄介な仕事なら十中八九表の仕事だろうと踏んだのだが…
「いや、裏だ。とりあえずお前に調査を頼みたい。」
調査とは、本当にそいつが悪人かを確かめるために仕事の前に行う。
基本的に新人と中堅クラスが二人でやる仕事だが、相手によっては上級クラスが担当することもある。ちなみにアタシは特級クラスでアタシを含めギルドに四人しかいない。
ということは…?
「相手は魔狼のナンバー2、ガルザ・J・グレイだ。」
正直心臓どころか小腸まで吐いちまうところだった。
魔狼ってのはこの国の誇る三騎士だ。言われてるだけのアタシと違って本当に大陸最強の男共だ。
その魔狼のナンバー2だと!?
「ちょっとまてよ、なんで魔狼を殺さなきゃぁならないのさ。一度だけ見たことあるけどあいつら悪人には見えなかったよ?」
ナンバー1にして国王、レイザン・D・リードミストは典型的な紳士だし政治能力も高い。
ナンバー3のグラード・K・レオンは厳格な老騎士だが融通も効き人望も厚い。
そして今回のターゲットとされる、ナンバー2、ガルザ・J・グレイはなんというかどこか庶民臭い男だった。威厳はあるのだが騎士や貴族にありがちな近寄りがたい空気がまるでないのだ。故に彼は魔狼の中で最も国民に愛されている。そんな男を殺す理由が分からない。
「俺もよく分からん。なにやら殺さなければこちらが殺されるとか言っているんだがひどく取り乱していてな。この時点では断ることもできん、殺すか否かは別として調査はせねばならんのだが、それができる人間というとうちにはお前とジョン位しかいない。」
…ジョンの野郎は今竜頚湾の海竜討伐に行ってるんだっけ…シット!
「そんなわけでお前に任せたいというわけだ。」
いまや頭領の表情がアタシにまで伝染していた。
「嫌だと言ったら?」
この国のギルドは結構自由で仕事を断ることもできなくはない。
「そう言うな。…ヒューネラス産20年もの。」
「引き受けた。」
頭領はアタシの弱点をよく知っていた。当然だ生まれてこのかた17年の付き合いだ…こんちくしょう。
さぁさぁ次はきついですよ。鳥肌が立つこと間違いなし!
ちゃんちゃんこでも着て読みましょう。では、また会いましょう。