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白と出会う

はじめまして、枯らし鴉です。

さて、早速ですがこの作品が良い作品になるかどうかは皆様の評価にかかっています。

悪い評価でも関係なく指摘してください。それを元に自分も作品を見直して、腕を上げていきたいです。

でも、たまにはいい評価もくださいね?

じゃないと、自分ヘタレなもので心が折れちゃいます……

では評価、感想待ってます。

あとがきって邪魔だよね…?

 人である事に疑問を持った事はないか。

 自分を根底から変えてみたいと思った事はないか。

 刺激のないつまらない日常から抜け出したいと思った事はないか。

 そして、そんな日常をぶち壊すような運命的出会いとは、いつも何の前触れもなく突然やってくる物だ……

 僕の場合が、まさにそうだった――


   †◆◆†


 僕が彼女と初めて出会ったのは、毎日毎日より良い高校に入るために夜遅くまで塾で勉強していた、中学三年の冬の暗い闇夜の日の事だ。

「クスクス……キミ、見た目はどこにでもいるつまらない人間達と変わらないのに、中身は随分と変わってるね?」

 変わり映えしない日常に心底呆れ、家にも帰らず街の風景に埋もれた小さな公園のベンチで微かに見える星をボーっと眺めていた僕は、上から下まで真っ白なエプロンドレスを着込んだ少女に突然、僕の顔を覗き込むようにそう話しかけられた。

「ん、どうかしたの? ずいぶんと驚いた顔してるよ?」

 腰まで伸びた白くて艶のある髪、汚い物など何一つ知らないような澄んだ琥珀色の瞳、そして不思議な魅力を持つ勝ち気な表情。

 そんな少女が僕の目の前で、面白そうに笑っていた。見た目、僕よりも少しだけ上のように思える。

「………お前、いつからそこにいたんだ?」

 僕はこの時、物凄く驚いた。僕がこんな時間に公園に来たのは誰の顔も見たくもなく、少しばかり一人になりたかったからだ。

 だから公園に入る時はもちろん辺りに誰もいないのを確認したし、それに誰かが近くを通ったら分かるように辺りにも気を使っていたつもりだ。

 それなのに、だ。僕は彼女が話し掛けてきたその時まで、彼女の存在に気付く事さえ出来なかった。

「ふふふ、さぁ? いつからだろうね?」

「………………」

 僕には彼女が声と同時にいきなりそこに現れたように思えた。まるで瞬間移動でもして来たかのように……

「まぁ、私の事なんて今はどうでもいいよ。それよりも今はキミよ。私はキミに興味があるの」

 彼女はベンチに座った僕の膝に両手をついて、ずいっと僕の顔に自分の顔を近づけた。それこそ、あと少しでお互いの鼻先が触れ合ってしまう程……

「な、何なんだお前は……?」

 綺麗だ、この時素直に僕はそう思った。そして、あまりに近すぎる彼女の顔に動悸が速くなる。

「だから、私の事はいいって言ってるのに……」 

 彼女が僕の言葉に少しばかり呆れたようにため息をつく。彼女の吐息が僕の顔にかかった。

「まぁいいわ、特別に教えてあげる。私はレミナ…そうね、私の事を“純白の魔姫”って呼ぶ人もいるけど私は好きじゃないんだよね」

 彼女が自分の事について語ったのは、その彼女の名前だけ。

その時はまだそれ以上の事を彼女は語ろうとはしなかった。

「さぁ、次はキミの番よ。キミの事を私に教えて?」

 僕はこれ以上質問する事を諦め、次の事について思いを巡らした。はたして、彼女に僕の事について語ってしまってもいいのだろうか?

 僕の頭は、今だ止まる事のない胸の高鳴りとは別に酷く冷静だった。彼女を認識した瞬間から僕の中で鳴り響いていた警報のお陰で……


 彼女は何かが違う。

 普通ではなく“異常”だ、気をつけろ――


 だいたいよく考えてみれば、こんな深夜近い時間にこんな少女が一人で出歩いている時点で普通ではないだろう。それに会った事も見た事もないはずの僕に、いきなりそんな事を聞く理由もまるで分からない。

 そうやって、僕がいつまでも口を開く事もなく彼女の事を訝しんでいると、彼女は目を細めて再び口を開いた。

「ふぅん、やっぱりキミって面白いね。普通ならとっくに私の“歪気”(きょうき)で理性なんか消し飛んでるのに、キミはまだそうやって私を疑うだけの理性を保ってる。でも、これならどう?」

 彼女の言葉の意味はよく分からなかった。だが、その時たしかに辺りの雰囲気が変化したのを僕は感じ取った。

「三つだけ、私の質問に三つだけ答えて。今はそれだけで十分だから」

 それは教会やお寺のような神聖な場所特有の張り詰めた冷たい空気、だがそれにどこか俗な甘くどろりとした感じの物が混ざり合った形容しがい不思議な雰囲気だ。それが彼女を中心に辺りに渦巻き、僕の中の何かに絡みつく。正直、かなり気持ち悪い……

 今すぐにでもここから逃げ出した方がいい、脇目も振らずに逃げ出せと頭の中で警報が最大音量で鳴り響く。

「最初は名前、親から貰ったキミの大切な身体の名前を教えて」

 だけど僕の身体は金縛りにあったように動かない。自分の身体の異変に恐怖を覚えた僕は、心の中で必死に絶対に何も喋るまいと決意する。

 だが……

霧綜境都(むそうけいと)だ」

 気が付けば僕は、僕の意志とは関係なくあっさりと自分の名前を吐露していた。すでに、僕の身体の支配権は彼女に握られてしまっていた。

「ふぅん、境都……いい名前じゃない。じゃあ境都、次は真名(まな)よ。身体の名ではなく、魂の銘を教えて」

 今度の質問は本当に意味が分からない。真名? 魂の銘? そんな物を突然聞かれて即答できる人間など恐らくいないだろう。

 いや、仮に考える時間があったとしてもまともな答えを返す事などできないだろう。

「そ、そんな物は僕にはない……!」

 僕は気力の振り絞って彼女に抗議すると、彼女は少しばかり驚いたように表情を変えた。

「うわっ!? その状態でまだ理性を保ってるなんて、境都ってやっぱり精神の抵抗能力が高いのね。あと一つだけ教えてあげるけど、真名って言う物はこの世に生きる物なら誰もが持っているのよ。境都、キミは忘れてしまっているだけ……」

 彼女が、おもむろに僕の鼻先に人差し指を突き出す。その指の先端では、なにやら真っ白い光が蝋燭の燭のように灯っていた。

「お、おい!? 一体、何するつもりだよ……!?」

「真名を思い出すためのお手伝いよ。ほらっ!」

「いっ!?」

 彼女がその白い光の灯った指先で軽く僕の額を小突いた。その次の瞬間、僕の中に衝撃が走った。

 それはまるで“心”という名の泉に、石を思いっきり投げ入れたかのような衝撃。そしてその時、確かに僕の中の奥底で何かが揺らいだ。


「………朽ち果てぬ永遠の灰燼。紅き血を劫火に焼かれ、在るべき形を失った灰の亡骸――」


 口が勝手に動く。その揺らぎは僕の中で言葉に変換され、意識する事なく僕の口から紡がれる。

「そう、それは境都の魂が形成されてから脈々と受け継いできた魂の系譜。そして、その一番最後に連なる言葉……」

 言葉を紡ぐ僕を、彼女が嬉しそうに眺める。

「それが、それこそが真名。魂の根底を形成するための最重要パーツ」


「魂の銘は、“終焉の白”(エターナル・グレー)




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