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第22話 Lost Memories -記憶を探して-

「こんな感じかな…」


もう一度、状況を整理するために

覚えていることを書き出してみた


幼稚園:工事現場の事故

小学校:キティちゃん、乳液、ピアノ、美容院、三つ編み

中学校:身体の変化

高校:図書室

20代:声優学校、ミュージカル、yasu様の歌声、整形

30代:仮想通貨


「……仮想通貨」


その言葉を口に出すと、胸がざわつく

触れてはいけないパンドラの箱のような響き


「怖い…」


ふと口からこぼれた本音


「仮想通貨」と書いたものの

考えを巡らそうとすると

自分が消えてしまいそうな恐怖が襲ってくる


他の記憶もそうだ

思い出そうと必死になる程

サイレンの音が鳴り響くように落ち着かなくなる


「……はぁ」


深いため息と共に、深呼吸をして気持ちを切り替えた


書き出した思い出を、もう一度俯瞰してみると

自分の人生がどれだけ穴だらけなのかを痛感する


そういえば、高校のときは、よく図書室で本を読んでいたっけ…


『おいしいコーヒーのいれ方』

『蹴りたい背中』


当時の本の手触りや、どの辺りで読んでいたのかも覚えてる

まるで、そこだけアルバムから切り出したみたいに鮮明だ


「そうだ、図書委員をやっていたこともある」


そこまで思い出して、ふと手が止まる


だけど、志望校は東工大…だった?


「おかしい…」


私がそんな大学、選ぶはずがないのに…

でも、合格したのは「私」だった……?

どうして、そんな支離滅裂な行動を…


「DID…」


自分でも実感が湧かない

言葉にしてみたものの

夢の中にいるような奇妙な浮遊感がある


何か、昔のことを思い出せる手がかりは……


「……そうだ、卒業アルバム」


たぶん、実家に置いてあるはず

それを見れば何か思い出せるかも


「お父さん…」


母とは、ずいぶん昔に別居している父の姿が、目に浮かんだ

たぶん、今も一人で暮らしているはず


母は昔から父を嫌っていた

父が子供と関わるのを嫌がっていた


以前、母からこんな話を聞いた


両親とプールに行った時のことだ


父に、私を見てるようにと頼んだ母が

用事を終えて戻ってくると

溺れている私の姿が目に入った

母は慌ててプールに飛び込み

私を助けたあと、父に向かってこう言った


「見ててって言ったでしょ?!」


父は答えた


「だから、見てた」


想像するだけでぞっとする話だけど

私は何も覚えていない


「……はぁ」


そんな父に会いに行くと思うと、気が重い

それでも、ここで目を逸らしたら

私はまた、何も思い出せないまま生きていくことになる気がした


「帰るしかない……よね」

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