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第21話 塗り替えられる常識
「お母さん、お母さん」
私を置いて早足で先を歩く母
「ねぇ、お母さん待って!……あっ」
追いつこうとして走り出した途端
足がもつれて転んでしまった
……痛い、泣きたくなるほど痛い
いつもそうだ
母は私のことを見ていない
身体の痛みよりも先に
心の方が悲鳴を上げ
涙が頬を伝った
どれだけ月日が流れても
母は何も変わらない
東京駅のホームに
発車ベルの音が鳴り響く
私が遅れていることに気づいた母が
閉まりかけたドアに足を入れていた
こちらを睨んだ母の目は
遅れていた私を急かしているようだった
なんて非常識なんだろう
そんな疑問を挟む間もなく
居合わせた人々の視線まで
遅れた私が悪いのだと言っているように感じる
その痛みと共に
母の醜態までも、当然のように受け入れてしまう
いつもそうやって
私の常識は、母の身勝手な理屈で塗り替えられてきたのだ




