第19話 違和感の正体を知った日
今日は、月に一度の通院の日だ
「今の状況、やっぱり話さないわけにはいかないよね」
今感じている違和感
それを主治医の先生に伝えるかどうか迷っていた
そうやって、いつも現実から目を背け続けてきた
でも、見て見ぬふりをするには、あまりに大きくなりすぎた違和感
「〇〇さん、診察室にどうぞ」
「はい」
今日こそ、ちゃんと話そう
今までの違和感も、全部
「…この1ヶ月の間、どうでしたか?」
「……あの、先生……私…」
喉まで出かかった言葉を、音になる前に飲み込む
どうして、ただ感じていることを話すだけなのに
こんなに胸が苦しくなるの?
「あの……私。……解離性障害…なのかもしれません」
言葉にした途端、先生の目の色が変わるのが見えた
「それは、別の人格がいるということかな?」
「あ、はい」
「ふむ……。何人くらいいるのか、わかる?」
「えっと、以前まで通っていた人とははっきり違っていて……他に、4人くらいいる気がします」
それを聞いた先生は、無言でキーボードを叩き始めた
カタカタという無機質な音が、静かな診察室に響く
「解離性障害だとすると、高度なカウンセリングが必要になるから、ここでは対応しきれないんだ。提携のクリニックで専門の治療をやっているから、そちらに転院してもらうことになるけど、いいかな?」
「はい……あの、先生」
何も言わずにこちらを向く先生
「……あ、いえ、何でもない……です」
「……それじゃ、薬は前回と同じものを出しておくから」
「……お願いします」
最後に言いかけた言葉を飲み込んでしまったのは
口に出した瞬間に
私という存在が消えてしまうような恐怖を感じたからだった
こうして、長年感じていた
得体の知れない違和感に、ようやく名前がついた
これでやっと、本当の治療が始まる
効きもしない薬を
ただ漫然と飲み続けるだけの日々から、やっと抜け出せる
このときはまだ、そんな、甘い「誤解」に安堵していた




