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第14話 ミュージカルに涙して
私は演劇が好きだ。
のめり込むほど、というわけではないけれど、宝塚や劇団四季を人並みに愛するくらいには、その世界に惹かれている。
でも、悲しいことに…
そうやって情緒を激しくかき乱される物語には、甘い蜜と少しの「毒」が混じっている。
私はその「毒」がどうしようもなく苦手だ。
観劇した後のあの独特の高揚感と、迫真の演技に涙した後にやってくる、あの言いようのない孤独。
その天国と地獄のような落差が、いつしか私を演劇から遠ざけていた。
最近では「涙活」なんて言葉が、ストレス解消やポジティブなイメージとともに語られているけれど、私にとって涙を流すことは、抑えていた心の蓋まで無理やりこじ開けられるような恐怖に近い。
一度開いてしまったら、何が溢れ出してくるか分からない。
「いつか、心の傷が癒えたら、素直に楽しめるのかな…」
私にとっての演劇とは、そんな淡い希望と底知れぬ絶望が背中合わせになった、アンビバレントな世界。
そして…
かつての私が、傲慢にも夢見た世界。




