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第10話 The Memory of Music
私は子供の頃から歌うことが好きだった。
カラオケが目新しい娯楽として芽吹き始めた時代。
家族でカラオケに行くことがひとつのレジャーになっていた頃の話。
小学生の頃好きだったのは、いわゆるビーイング系のアーティストだった。
中でも「ZARD」と「DEEN」は、なけなしのお小遣いアルバムを買って、擦り切れるほど聴き込んでいた。
坂井泉水さんの描く瑞々しい恋愛ソング。
不器用な少年のような、どこまでも純粋でまっすぐなDEENの歌。
あの殺伐とした家庭の重たい空気を、一瞬で洗い流してくれるような、爽やかな旋律に浸る時間だけが、当時の私の唯一の「癒し」だった。
そして、中学生になった頃、一人の「歌姫」に出会った。
当時、女子高生のカリスマと呼ばれ、時代の象徴となった、あゆ(浜崎あゆみ)。
「あなたは一人じゃない」
孤独を抱えていた当時の私の心に、あの痛切で、けれどそっと心に寄り添ってくれるような歌詞が深く突き刺さった。
ある時、私の地元であゆのライブが開催されることを知った。
普段、気持ちを表現するのが苦手だった私が、勇気を振り絞って母にお願いした。
「あゆのライブに行きたい」
それが、私の人生初の「ライブ参戦」となった。
あの夜、ステージ上で光り輝いていた彼女の姿を、私は一生忘れない。




