第一話
注意・ちょっと後味が悪いです!
世界は人で溢れていた。
しかし、普通の人ではない。
彼らには目がなかった。口もなかった。鼻もなかった。
そう、顔がなかった。
だけど、この世界ではそれは不思議なことではなかった。
彼らにとってそれが普通だった。どんなに聞いてもみんなそれが当たり前だと言われた。なんなら、私に向かってなにを言っているの?っという顔を向けてきた人がほとんどだった。それぐらい当たり前だった。
それでも、私はおかしいと思った。
だって、顔がないのが普通なら絵本の世界は本当じゃないってことになる。絵本の世界は必ず正解なのに。そういうと、無視されたことがあった。殴られたこともあった。蹴られたこともあった。殺されかけたこともあった。どうやら、嫌われてたみたいだった。明確な理由は覚えてない。でも、恐らくこんなにも嫌われていたのは私が普通じゃなかったからだと思う。不思議なことに、私は顔を持っている唯一の人だった。目も、鼻も、口もすべて揃っていた。絵本に出てくるような普通な人間だった。
「今日も、顔がある。。」
昔は外に生きてたことがあったみたいだけど、今は暗い部屋に閉じこもっている。なんにも感じられない。ただただ暗い。
だから、私は本を通してしか世界を知ることができなかった。
本の中の世界は色鮮やかで美しい。登場人物も生き生きと人生を楽しんでいた。
(見てみたいなあ。私も幸せになりたいなあ。。)
いつか、外に出たいとなんども夢に描いていた。
なんども。なんども。
「そんな夢が叶うわけないのにね。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「どうでしたか?」
小さな部屋で小太りの中年の女性が目の前の白衣を着ていたわかめの男性に問いかけた。
そんな彼女の手には携帯があった。携帯には彼女の顔が誰かとのトーク顔面の上に薄っすらと写っている。
「社会復帰は無理そうですかね。」
男性はクリップボードを軽く見ながら部屋にあったであろうテレビに電源をつけた。
テレビには暗いなにもない部屋が写っている。部屋にはクタクタな服を着た少女とはもう言えない年の女性が小さな木製の椅子に座っていた。手には幼児向けの童話を握っている。
「どうやら、幻覚症状がひどくなっているみたいです。これで、思考の鈍化・記憶力の低下・幻覚症状ですよ。さすがに社会復帰は無理ですね。」
「そうですか。」
男性がクリップボードに目を通しながら言った。女性はそんな彼を気にせずに、ただ携帯をいじっていた。加工アプリを開いて、自分の醜いところを隠すように嘘で埋め尽くしていた。彼女の目線はずっと携帯一直線だった。画面に向かったことは一瞬もなかった。
本当に嫌気が差す。
画面越しの少女は見られてることにも気づかずに、ただただ歪な笑顔で童話の文字を貪るように読んでいた。まるで、化物みたい。
「はあ。こちらも大変ですよ。いつも彼女の妄想に付き合わされて。こないだだって『自分だけが顔のある人間だあ』とかいい始めたんですからね。」
男性ー医者がため息まじりに言った。(本当に面倒な親子だ)
彼女はここの隔離施設に来てから1年ほどいる患者だった。
彼女が初めてここに来た理由は自殺未遂のせいらしい。確か首を吊ろうとしたが、紐が弱すぎて失敗したらしい。その時はまだまともに会話が成立していた。まだ、普通だった。
しかし、異変が起きたのはその1ヶ月後。
彼女は物忘れが激しくなった。
なぜここにいるのか、自分の名前、母親の名前、今までのこと、すべて忘れていった。
そこから彼女が壊れたのはすぐだった。
すぐに頭が悪くなり、幼児みたいな思考になった。
そして幻覚症状が出始めて、馬鹿な世界を想像しだした。
そして今にあたる。
なぜ彼女が壊れたのかは知らない。が、恐らく外でのいじめか周りとの違いによってだろう。
しかも、顔を見せてくるのは母親だけ。父親も他の家族も友達も一切 来たことがない。それに加えて、母親も基本的には定期報告を聞くためだけ。彼女への心配は一切ない。
本当に彼女は生まれたときから不幸な子だ。
居場所のない孤独な子だ。
誰からも愛されず、求められず、覚えられず。
そして、壊れてしまったただただいらない子だ。
「まあ、そんな子たちを飼うのがこの隔離施設の役割ですけどね。」
そんな言葉は画面の向こうの彼女には届かず、ただいつも通りの狂った日常がまた過ぎただけだった。
パタン。
今日も彼女は本当の世界を知らぬままに絵本を閉ざした。夢も希望も全て絵本の中において。
書きたくなった話です。
後味が悪いかもしれませんがこれで終わりです。
読んでくれて、ありがとうございました!!




