ボーリング プロボウラー・大城仁、魂の投球レッスン編【第3回:上級編】
Scene:最終レッスン日・ボウリング場(早朝5時30分)
富澤(寝ぐせMAX):「なんで!? なんでこのサークル、早朝縛りなの!? てかさあ、これレッスンってより“試練”じゃない!?」
野田(枕を抱えて座っている):「……もう、ピンが夢に出てきました……8本目だけ私を睨んでくる夢です……」
副部長:「夢に出てくる時点で“認識”が始まっている。君はピンに選ばれたんだ」
ひとり(ぼそっ):「……選ばれたくなかったなあ……」
レナ:「本日、最終決戦。全員でストライク。これは組織戦。連帯責任型スローイング。逃げ道はない」
仁、最終登場(口にタバコ、でも火はつけない)
仁:「言ったな。“ストライクとは、告白”だ。
お前たちの中で、真にピンに言いたいことがある者だけが、球を通じて語れる」
圭介:「なあそれ、告白ってピンに対してだよな? なんだこの競技、ラブレター競争かよ」
夏美:「いやでもなんか……ピン、今まで“倒すもの”だと思ってたけど、“伝えるべき相手”なのかも……」
仁:「全員一球ずつ、順番に投げろ。“語れないやつ”がいたら、合格はなしだ」
チサト:「えっ、ちょ、マジ!? 全員ストライクじゃないと、合格じゃないの!? えぐぅ〜!」
一人一球、告白の儀式
① 富澤
富澤:「あたしさあ……ボーリングなんか、まじ向いてないって思ってたけど、
でもこの球で“自分を笑ってくれる誰か”がいるって思ったら、なんかもう、投げなきゃダメって感じで――行っくよおぉ!」
(ガタン! 9ピン倒れる。1ピンだけ微動だにせず)
※センサー異常でストライク表示
仁:「……」
② 伊達
伊達(静かに構えて):「……俺はただ、ちゃんと立ちたかった。球を真っ直ぐに投げるって、案外難しいんだよな」
(投球。ストライク)
仁(静かに):「“真っ直ぐに立つ”。それだけで、球は届く」
③ 瑞稀
瑞稀(ボールに指を添え):「この子、私の第二人格って呼んでたけど……
実は私の中にずっといた、正直な子かもしれない。今こそ、まっすぐいけ」
(投球。ギリギリで全ピン倒れる)
アイボー:「角度誤差 2.7度、カバー成功。感情が、動いた」
④ ボス
ボス(ピンを睨んで):「なに見てんのよ。あたしの人生にピンみたいなもん、何本もあった。
でもこれだけは、倒しておきたかったやつ――いくわよ」
(一直線にストライク)
仁:「その殺気、悪くない」
⑤ リョウ
リョウ(目を閉じて):「……ピンに告白って言われたとき、自分が何に引っかかってたか、ちょっとだけわかった。
倒したくなかったんだよ、たぶん。“そのままでいてくれ”って思ってたのかも」
(投球……ストライク)
⑥ 野田
野田(全身震えながら):「……あ、あのっ、すみません、私、そんな、告白とかできる立場じゃないっていうか……
でも……これだけは、ちゃんと言いたいです……いつも、私の球に付き合ってくれて、ありがとうございます!」
(球がピンに届いた瞬間――全倒)
全員:「うおおおおおおおおおおお!!」
⑦ チサト
チサト:「やばい、私だけ取り残されてた!? いや待って! ちゃんと語るからっ!
えーと、ピン! 今まで避けててごめん! 君と向き合うの、ちょっと怖かったけど、今は好きーっ!!」
(ストライク)
⑧ レナ
レナ(無表情):「……告白? わかりました。“私は私のまま、ピンを倒します”」
(機械のような精密ストライク)
⑨ ひとり
ひとり(小声):「……ピンってさ、なんか、学校のクラスの真ん中で笑ってる人たちに似てた。
私、ずっと避けてたけど、今日だけは、ちゃんとまっすぐ見て……倒してみるね」
(……静かに球が転がり、音を立てて全てのピンが倒れる)
最終評価
仁(深く頷き):「……合格だ。お前ら、ちゃんと語った。球を通して、ちゃんとピンに語った」
副部長:「これはただのレジャーじゃなかった。“自己と世界の対話”だった……!」
チサト:「ねぇ!ねぇ! これって、私たち……ボウリング、好きになっちゃってるよね!?」
ひとり(ぽそっ):「……でもたまにでいいかな……」
エピローグ
仁、去り際にひとこと。
仁:「ピンは敵じゃない。倒されることで、お前たちを知る。
“対話”ってのはそういうもんだ。……じゃあな、弟子たち」
(去っていく後ろ姿に、誰も声をかけられなかった)




