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パラグライダー 第2回講習:「テイクオフと涙と筋肉痛」



朝――宿舎前


風速3m、コンディション良好。

昨日は全員が草原に埋まり、風に引きずられ、体力と羞恥心を失った。

でも今日は――

“空に行けるかもしれない”という、根拠のない期待が漂っていた。


Scene 1:筋肉痛と朝の叫び


富澤(階段を下りながら):「ちょ、足! 太もも! 膝裏! 歩けないんすけど!? 何昨日やったん!?」


亀田(マッサージガンを脇に抱えて):「風のせいよ。あたしは風のせいで年齢の壁を越えたわ。昭和の腰よ、これ」


伊達(歯を磨きながら):「股関節周りが壊れてる。これは飛ぶより寝て治した方が早いな……」


たきな(黙々とストレッチ中):「回復しました。今日はテイクオフを成功させます」


チサト(やる気満々):「今日こそ“風になる女”になってやるっっ!」


Scene 2:テイクオフの儀式(助走→離陸)


教官カミシマ:「今日は、全員“本番用斜面”行くぞ。怖かったら叫べ、転んだら笑え、飛べたら泣け」


野田(顔青ざめて):「笑える転び方って、どうやったら……?」


ひとり(無言で草むらを見つめる):「……風、強くない。たぶん、いける……」


副部長:「飛翔とは“意志”の臨界点だ。風はきっかけにすぎぬ」


部長:「さっき副部長、風に煽られて転んでましたけど」


Scene 3:誰かが飛ぶ。誰かが泣く。


(助走の列、次々とスタート)


リョウ(無言で助走、ふわっと浮いたが、すぐに接地)

→ 軽く拍手。本人は「……まあ、まあ」とひとこと。


たきな(集中した顔で走る。正確な姿勢。テイクオフ成功)


→ 滞空時間:12秒。高度3m。ふわりと滑空して、安全着地。


一同、騒然。


富澤:「え、あれ本当に浮いたよね!? ドローンじゃないよね!?」


瑞稀(感動して):「……風に、乗ったんだ……あの人、ほんとに」


野田(涙目):「すごい……でも怖い……でも、やってみたい……!」


ひとり(そっとたきなの姿を見つめ):「……風が、味方してる……」


Scene 4:涙、崩壊、そして決意


チサト(走り出して転倒。5メートル草を滑る):「キャハッ☆ 風とけんかした~!」


教官:「お前、滑走じゃなくて草ソリだ! でもナイス前傾!」


亀田(滑走開始→パラシュートがふくらまない→静止):「ほら見たことか。風は若者にしか微笑まない!」


副部長(着地後に倒れながら):「“高度”とは“傲慢”だ……それがわかっただけでも、収穫だ……」


Scene 5:夕暮れの斜面、空を見上げて


たきなが一人、静かに風と向き合って立つ。

彼女が飛んだことで、空が“手に届くもの”に変わった。


伊達:「なあ……空って、なんで“行きたい”って思っちゃうんだろうな」


リョウ:「理由ないよ。浮いたときにしか、見えない何かがある。それだけ」


ひとり(静かに):「……私も……行きたい」


野田(小声で):「飛んだ先で……何が見えるんだろう。私にも、何か……見えるのかな」


Scene 6:たきな、記録ノートに記す


日付:講習2日目

飛行者:1名(自分)

高度:約3m

滞空時間:12秒

風の音:穏やかだった

心拍:異常に速かった

見えたもの:地上の皆。


地面にいるときより、全員が小さくて、でもなんだか、すごく優しかった。


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