ダイビング Cカード取得講習・第3回(最終回)
タイトル:「最終試験と、涙のラストログ」
サブタイトル:「浮上するのは身体だけじゃない。心も、未来も、ここからだ」
場所:房総・海洋実習ポイント(最終日)
天気:曇り時々晴れ。
波:穏やか(ようやく)。
講師:柳川インストラクター(少しだけ喋るようになった)
この日の課題
1.マスク脱着と水中呼吸の安定
2.中性浮力の調整と移動
3.バディシステムによるコンパスナビゲーション
4.緊急浮上手順(EBA)
※これらをこなせば、晴れてCカード取得。
scene 1:「誰も、完璧じゃない朝」
(宿の食堂で軽く朝食)
富澤:「あ〜胃がねじれる……今日試験って、わかってるのに全然落ち着かないっす」
野田:「私は、昨日までの復習をまとめてきたんです。16ページ……A4で……」
チサト:「野田ちゃん、海に持ってっても読めないよ〜。え?防水印刷とかしてる?」
ひとり(スーツを持ってうつむく):「わたし……今日、もし合格できなかったら……本気でバンド組みます。沈むバンド名で……」
リョウ:「“水中音波”。いいじゃん」
scene 2:「実技開始――“全身で語る日”」
(器材チェック完了。各自が海へ)
柳川:「今日は試験。だが減点より、“姿勢”を見ている。海は数字で測れない」
たきな:「了解。減点対象外なら全演目を正確にこなすだけです」
副部長:「“海は測れない”……なんという深く、しかし浅い言葉……哲学的ノートに記載……」
アイボー:「記録開始。潮流微弱。視界6m。参加者全員、心理状態やや緊張」
scene 3:「マスク脱着地獄」
(最初の難関・マスク脱着)
ひとり(呼吸を整えながら):「……は、はずします……!!」
(マスクを外した瞬間、水が鼻から入ってむせる)
ひとり(心の声):
(だめ……また、パニックになる……)
(……でも……リョウさんの手が、近くに……見えてる)
(落ち着ける。わたし、“一人”じゃない)
(→マスク装着、クリア成功。水中でうっすら笑顔)
柳川(心の中で):「……よくやったな」
scene 4:「ナビゲーション課題・野田と富澤ペア」
(コンパスで一定のコースを辿る課題)
富澤:「あれ?あたしら東に行ったはずが、北に向かってないっすか!?」
野田:「えっ!?も、もう一度正確にコンパスを合わせましょう!45度東南東!」
ボス(遠くで手を振っている):「お前たちの方向は“努力”を向いてる。それでいい」
夏美:「いやそれ褒め言葉に聞こえないって!」
scene 5:「緊急浮上――リョウの叫びなき浮上」
(残圧低下を想定した緊急浮上訓練)
リョウ(口からオクトパスを外して、ジェスチャーで“息切れ”)
(すぐにチサトが対応。オクトパス呼吸→ゆっくり浮上)
チサト:「リョウちゃん、いけてるよー!酸素は友達っ!」
リョウ(浮上中):「……案外、浮かぶのって怖くないんだね……下に残してきたもの、もうないし」
scene 6:「最後の浮上。そして、水中ハイタッチ」
(全課題を終え、海中で最後の自由時間)
(副部長が、手を差し出す→部長が静かにタッチ)
(伊達→瑞稀→たきな→夏美→富澤→野田……全員が円になって手を伸ばす)
(最後に、ひとりがゆっくりリョウに向かって手を出す)
ひとり(水中で):
「……ありがとう。これで……少しだけ、“自信”ってやつ、持てそうです」
(リョウ、静かに笑ってタッチ)
scene 7:ログブック記入「みんな、Cカード取得」
(宿のテラスでログブックにサインしあう)
柳川(ついに口を開く):「全員、合格だ。……驚いたよ。こんなに“うるさいグループ”は久しぶりだ」
チサト:「うるさいのは愛があるってことですよっ☆」
富澤:「これであたしら、もう海の女(※仮)っすね」
たきな:「正確には“オープン・ウォーター・ダイバー”ですが、表現としては受理します」
野田:「……わたし、泳げないって言ってたけど……“呼吸”って、やっぱり、地上でも水中でも同じなんですね……」
瑞稀:「なにそれ深っ。いや水中だけに」
Final Scene:「浮上のあとの沈黙」
(帰りのバス)
(みんな、眠っている。ひとり、リョウ、野田、たきな、チサト……それぞれの表情は静かだ)
ナレーション(副部長の筆記より):
“人はなぜ海に潜るのか”という問いに、科学も哲学も答えきれない。
ただひとつ言えるのは――
「そこに“見たことのない自分”がいる」からだ。




