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WRCラリー・ジャパン、グラベルステージ開幕!


ナレーター:小雨がぱらつく日本の山間部、WRCラリー・ジャパンのグラベルステージ。路面は泥と砂利が混じり合い、タイヤが巻き上げる土煙が視界を遮る。スタートラインでGRヤリスRally1が轟音を響かせ、千束のヘルメット越しにもその興奮が伝わってくる。


千束:「(ニッと笑って)たきな、準備OK?最高のドライブ、見せてあげるからね!」


たきな:「(冷静に)ええ、万全です。ペースノート、読み上げます。『5、4、3、2、1、ゴー!』」


ナレーター:けたたましいスキール音と共に、ヤリスはスタートを切る。瞬く間に路面を掴み、猛然と加速していく。


たきな:「右4、タイト、インカット注意。その先80、クレストからの左3、アクセルオフは短く。路面状況、ウェット、小石あり。」


千束:「了解!…っと、少し滑るね!」


ナレーター:千束は瞬時に左足ブレーキングを使い、フロントに荷重を移しながら微妙にオーバーステア気味に持ち込み、コーナーの向きを変える。泥を巻き上げながらのパワースライドが、まるで水の波紋のように後方に広がる。


たきな:「右2、すぐ左1、ウォータースプラッシュ!水深注意!」


千束:「ひゃっほー!ここが一番楽しいんだよね!」


ナレーター:車は躊躇なく水たまりへ突入し、巨大な水しぶきを上げながら駆け抜けていく。視界が一瞬ホワイトアウトするが、千束は体で車の挙動を感じ取り、ステアリングとアクセルを微調整し続ける。


たきな:「(声のトーンを上げて)ジャンプ!30メートル!」


千束:「おっしゃー!飛ぶぞ、たきな!」


ナレーター:ヤリスは、まるで空を舞う鳥のように宙に浮き上がる。短い滞空時間の中、千束は次の着地点と、その先のコーナーを既に脳内でシミュレートしている。完璧な姿勢で着地すると、すぐにグリップを取り戻し、次のコーナーへ向かって加速する。


たきな:「左5、ロング。アウトから入れ、すぐに右ヘアピン、サイドターン推奨!」


千束:「サイドターンね!任せて!」


ナレーター:千束はコーナー進入と同時にステアリングを切り、左足でブレーキを踏み込みながら、素早くサイドブレーキを引く。リアタイヤがロックし、車体は勢いよくイン側へ向きを変える。


たきな:「完璧です、千束!次のストレート、全開で!」


千束:「おうとも!やっぱラリーは最高だね!」


サービスパークの戦場

ナレーター:過酷なステージを走り終え、サービスパークに帰還したヤリスは泥まみれだ。エンジンは熱気を帯び、タイヤは削れてボロボロになっている。限られた時間で、車を次のステージへ向けて万全の状態にしなければならない。


圭介:「(ため息をつきながら)はぁー…見てみろ、このタイヤの摩耗具合。千束、いくらなんでも攻めすぎだろ!こんなにサイドウォールが削れてるなんて…!」


夏美:「圭介さん!グダグダ言ってないで、早くタイヤ交換ですよ!フロント右のサスペンションからも異音がしてます!あと10分!」


圭介:「わーってるよ!全く、こんな雨の中、泥と砂利で車体もボロボロだ…!」


ナレーター:圭介は、雨に濡れて泥だらけになった髪をかき上げ、顔には飛び散った泥が張り付いている。だが、その目は真剣だ。夏美はテキパキと工具を準備しながら、タイヤとサスペンションの状態を同時にチェックしている。


圭介:「おい夏美、このハブナット、泥噛んでるぞ。丁寧に外せよ。無理矢理やるとネジ山潰す!」


夏美:「分かってますって!あ、ブレーキダクトにも泥詰まってますね、これじゃ冷却できない!」


ナレーター:タイヤが外され、圭介は即座にサスペンションの異音の原因を探る。ダンパーを触り、ロアアームのブッシュを確認する。「(ボルトを締め直し)よし、増し締めだ。多分、泥噛んで緩んだだけだろ。大きなトラブルじゃなくてよかったぜ…!」


夏美:「(新しいタイヤを取り付けながら)リアのデフオイル、漏れてないか確認しましたか?それと、アンダーガードの点検も忘れずに!」


圭介:「(別の工具を手に取りながら)やってる、やってる!マフラーのステーも点検しとけよ、ジャンプで衝撃あったはずだ!」


ナレーター:彼らは息の合った連係プレーで、次々と整備を進めていく。まるで外科医のような正確さで、短時間のうちに車のコンディションを最適化していく。


サポートの影、そして祈り


ナレーター:そんな喧騒の片隅で、チームのサポーターであるひとりは、傘もささずに小さく震えていた。メカニックたちの怒号にも似た指示、轟音を響かせて駆け抜ける他のラリーカー。あまりの迫力に、彼女は思わず持っていた応援フラッグを胸に抱きしめ、うずくまってしまう。


ひとり:「あ、あの、が、がんばってください…千束さん…たきなさん…(蚊の鳴くような声で)」


ナレーター:その声は、もちろん誰の耳にも届かない。彼女の背後には、大雨による濁流と化した川が見え、空は依然として重い雲に覆われている。


ひとり:「(小さく震えながら)ど、どうか、晴れてください…お願い、神様…!これ以上、路面が荒れたら…せん、千束さんたちが…」


ナレーター:時折、コースの方向をチラッと見ては、猛スピードで泥を巻き上げながら走るラリーカーに、心の中で叫ぶ。


ひとり:「ひっ…速すぎ…(でも、カッコいい…!)」


ナレーター:彼女の表情は恐怖と、わずかながらも憧れと、そして心配でぐちゃぐちゃになっていた。それでも、彼女はチームの一員として、精一杯の「がんばれ」を念を送る。その声にならない祈りが、きっとドライバーたちの力になると信じて。


ナレーター:最終チェックを終え、圭介と夏美がOKサインを出す。千束は笑顔でヤリスに乗り込み、たきなは冷静にペースノートを再確認する。


圭介:「よし、完了だ!行ってこい!」


夏美:「次も頑張ってくださいねー!」


千束:「サンキュー、圭介!夏美ちゃん!じゃあ、行ってきまーす!」


たきな:「(小さく頷き)失礼します。」


ナレーター:ひとりも勇気を振り絞って、はためくフラッグの向こうから、精一杯の「がんばれ」を念を送っていた。ヤリスのエンジン音が、雨上がりの山々に響き渡る。彼らのラリーは、まだ始まったばかりだ。そして、次のステージではどんなドラマが待っているのだろうか。


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