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あき来ぬ月よ  作者: 木創たつみ
飽きこぬ月余(20BC年)
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エピローグ

 望千が現世に戻ってきたことを報告する為に、心槻と望千は陽守を付き添いにして榛上家を訪ねた。二人の両親は大変驚き、同時に望千の帰還をこの上なく喜んだ。

 これで自分に背負わされた期待は幾分無くなり楽になるはずだ――と、心槻は内心喜んだが、それはこれから決まっていくだろう。


 そして十月一日の夜。蓮隅市内にある燐伎の家に、住人の燐伎と朔一はもちろん、陽守と心槻、そして望千と月予を含めた六人が集まっていた。

「それじゃあ始めようぜ、お月見パーティー!」

 無事に全てが終わったことを祝う為のパーティーを開く為だ。必要な準備は朔一と燐伎が、燐伎の親のサポートも受けながら頑張って行った。

 庭にテーブルが出してあり、そこに料理が並んでいる。料理を食べる者、子どもたちを見守りながらお酒を飲む者、都会故に星が見えづらい中どうにか星座を探しはしゃぐ者……朔一の声で幕開けが宣言されたパーティーを、皆思い思いに楽しむ。

「こづちゃん! あれ秋の四角形じゃないか⁉」

「えっ、どれ? ……もしかしてあれ? えっ、違う?」

 その可愛らしくも必死な後ろ姿が面白く、望千と陽守はお酒を片手に二人を微笑ましく見守る。

「太丞くんも入っていっていいんだよ」

 若干からかい混じりの提案だったが、陽守はご機嫌に承諾した。

「ん……じゃあ行ってくる。――燐伎さん、心槻さん、私も混ぜてください」

「陽守のおじさん! 陽守のおじさんは秋の四角形ってわかる? ほら、あそこ!」

 燐伎が指差してどうにか伝えようとするが、陽守もいまいちわからないようで。

「あぁ……星座にはあまり詳しくないのですよ」

「何だ、大人のくせにわからないんだ」

「わからないのは心槻さんもお揃いですよ……」

 そんなやり取りがおかしく、燐伎は思わず声を上げて笑った。

「……にしても、よく考えたら九月の初めに陽守のおじさんと会って、そこからこの一ヶ月、すっごく忙しかったね! 退屈な時間なんて無かった!」

「一ヶ月と言いますか、十月に突入したので一月余り……月余と呼ぶのもいいですね」

「急に知識ありますムーブするじゃん。流石教祖様、話術での盛り返しは得意なんだね」

 心槻の変わらぬ毒舌に陽守が刺される。それも笑いのツボを刺激し、燐伎はまたもや愉快そうに笑う。そんな彼女を不思議に思う心槻と陽守だったが、楽しいならそれでいいかと釣られて笑い出した。


 これにて、月と祈りの二つの物語……秋が来た月夜の物語と、飽きが来なかった月余の物語はおしまい。地上で彼らがはしゃぐ今も、空に月が浮かんでいる。あぁ、今日も夜空が綺麗だ。

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