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9 打ち首

ブックマークしてくださった方がいらっしゃったので、もうちょっと長く投稿します。感謝!

 対策なんて考えつかなかった。

 まあ捕まったら基本ゲームオーバーだからな。もうなるようにしかならないか。

 ひょっとしたら異世界錬金術が終了するかもしれない。その覚悟だけは固めておこう。

 あまり不安にならずに、我が家で安眠する。ナゴメルも同様に、ショック等は受けていない模様。

 そして翌日も俺は、騎士団本部でコランタさんと取引をした。本部にはメレンナさんも来てくれた。

「ナル様、ご無事ですか!」

「はい。メレンナさん。ご心配おかけしてすいません」

「いいえ。ナル様がご無事なら良いのです!」

「ではどうぞ、こちらが本日分の商品になります」

「ナル様、普段とおかわりない様子ですね」

「ええ。ただちょっと捕まってるだけで、支障はありませんから」

「では、確認いたします」

 コランタさんとメレンナさんは商品数をチェックして、お会計を済ませた。

「ではナルさん。後は魔法ギルドへ用があるでしょう。メレンナを置いていきますので、どうぞ彼女の馬車を使ってください」

「ありがとうございます」

 コランタさんは商品を受け取り、すぐに去る。それじゃあ俺も、メレンナさんの好意に甘えて、すぐに魔法ギルドへ行くとしよう。

「あの、お待ち下さい。ナル」

「はい、どうしました。アルツさん」

「あ、いえ、あの。ノートとかいう物もそうなのですが、特にカップ麺と即席麺を我らにも売っていただけませんか?」

「あ、それは、どうしよう。コランタさんとの取引もありますし」

「では、コランタさんよりもお金を出します。それでコランタさんから買う額より低ければ、我らにも利がありますし。それと、よければまたハンバーガーなるものも食べさせてほしい」

「なるほど、わかりました。では、少しでいいなら故郷で買ってきますね。申し訳ありませんが、あまり量をそろえることはできないんです。コランタさんとの取引もありますし」

「ああ。わずかでもやってくれるならありがたい。どっちみちお前が持ってくる商品は、お前からしか買えないからな」

「あの、ナル様。ハンバーガーとはいったい?」

「ああ、そうですね。では、今度、明日にでもメレンナさんにハンバーガーを紹介します」

「いいのですか。すみません」

「なんてことありませんよ。それより、どうか魔法ギルドにつれてってください」

「ニャー」

「はい、わかりました」

「俺も監視役としてついていくからな」

 こうしてアルツさんも一緒に、魔法ギルドに向かった。


「ようこそ、ナルさん。ところで、この方はいったい?」

「ああ。フィーコさん。彼はアルツさん。ちょっと訳あって、俺の見張りをしてもらっているんです」

「それは、どういうことでしょうか?」

「実は、俺が転移を使えることがばれてしまって、その結果今ちょっと、騎士団に厄介になっているんです」

「え? それは、どういうことなんでしょう。転移魔法の発覚といえば、重罪ですよね?」

「それについては、俺から説明します。実は、これこれこういうわけなんです」

 アルツさんが事の経緯を簡単に説明した。

 するとフィーコさんが感心する。

「なるほどお。転移のスキル、それも限定的なものなので、従来の刑罰には値しないんですね」

「まあ、転移先が限定されているというのは、彼からの証言でしかないわけですが」

「ですから、本当なんですよ。もしできてたらメレンナさんに馬車でここまで送ってもらいませんって」

「そういえば、ナルは以前から馬車で魔法ギルドへ行き来していたのか?」

「はい、そうですよ」

「私はギルド内でしかお会いしたことはありませんが、必ずメレンナさんとご一緒でした」

「なるほど」

 アルツさんはうなずいた。

「その証言は、ナルの言葉の信ぴょう性を増すものとして受け取っておこう」

「あ、ありがとうございます!」

 俺は思わず、お礼を言った。

「ニャー」

「まあ、ナルの判決を決めるのは、転移魔法使い専門官だ。だが、本当にナルが言ったことまでしかできないなら、そう重い処罰もくだされないだろう」

「それなら安心できます」

「ニャー」

「ところで、その猫はお前の使い魔なのか?」

「いえ、ナゴメルはただのペットです。ただ、来たいっていうから、こっちにもつれてきてるだけで」

「そうか。ならいいが、もし何か特別な力を持っているとしたら、今のうちに言っておけよ。でなければ、再度お前を疑う必要が出てくるからな」

「えっ」

 俺は思わずナゴメルを見た。

「ニャーアー」

 ナゴメルは首を横に振った。

 これは、喋っちゃダメ。ということか。

「ははっ。そうか。力なんてないか。賢いやつめ」

 アルツさんはそう言って笑顔だ。

「ナルさんの猫は本当賢いですねえ。それではナルさん。付与魔法をつける道具と、料金をください」

「はい。わかりました」

 こうしてコランタさんとの売買も、魔法道具の仕入れも、順調におこなわれた。

 ウレルナの方でも、魔法道具の売れ行きは順調。まったく問題なかった。

 だから、やっぱり捕まっても、そんなに大変なことにはならなかった。そしてもうすぐ解放されるだろう。

 そう思っていた、数日後。

「ナル。お前の処罰が決まった」

 リシュール様が魔法ギルドから帰ってきた俺にそう言った。

「はい。どうでした?」

「打ち首だそうだ」

 ん?

 え?

「すいません。今、なんと?」

「ナルは打ち首だそうだ」

 ちょっと数秒あけてから。覚悟完了。

「ぜってー上司」

「まあ待て、ナルよ」

 俺はもう二度と異世界に来ないことを決意して、最後の転移をしようとしたところ、リシュール様に止められた。

「なんでしょう?」

「この判断は、私としても不服となるものだ。よって、私としてはお前に協力して、この処罰の内容を覆したい」

「ぜひ協力してください!」

「うむ。そちらもそういう態度なら助かる。既に我が騎士団の幹部達も、お前を生かす方針を固めた。というわけで、こちらが抗議する内容として、王都セイテアに行き、国王陛下にナルの有意性を示すことにした」

「ということは、つまり?」

「これからセイテアに行く。そこで打ち首という決定を覆してもらうぞ」

「ありがとうございます。リシュール様マジ女神っす!」

「ニャーア!」

「ふふ。そうおだてるのは、無事に助かってからにしろ。そういえば、ナルはいつでも故郷へ転移できるのだったな」

「はい」

「そのことももう一度提言しよう。専門官では話にならないから、もっと上の人物にかけあってな」

 リシュール様が頼もしい。

 俺、このプルーメに来て良かった。

「では、すぐにセイテアへ向かうぞ。同行部隊も急遽編成する」

「はい、よろしくお願いします。あ、でもその前に、コランタさん達にその旨を伝えておきたいんですが、いいですか?」

「ああ、そうだな。では、こちらから連絡しておこう」

「ありがとうございます」

 ちょっと波乱がまき起こっているが、良い人達と出会えたおかげでなんとかなろうとしている。

 世の中捨てたもんじゃないな。


少しでも面白い、先が気になると思った方は、評価、ブックマークをお願いします。

ちなみに、14話より先のプロットはまだありません。

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