6 異世界からの客
我が家に帰ってきた。
「おー、すごい。手錠が外れてる!」
いやー、手錠抜きで転移できないかなあとは思ったけど、まさか本当にできるとは。
「ここは」
「あ、リシュール様。ようこそ、我が家へ」
「ニャー」
「なるほど。ここがナルの故郷、の家の中というわけか」
リシュール様が玄関を見回す。
「まあ、どうぞ。ひとまず靴を脱いでください」
「む、なぜだ」
「家では靴を脱ぐ。それがこの国のマナーなんです」
「む、そうか」
「ニャー」
「ナゴメルも足裏拭くぞー」
俺はひとまずリシュール様を居間にあげた。
「お茶は、ないですけど。ビールならありますよ」
「いや、私はビールはいい」
「えっと、では。すいません、水出します」
「ああ。わかった。いや、私はくつろぎに来たわけではない。お前の言葉を確かめに来たのだ」
「というと?」
「まずはここがどこかを確認させてくれ」
「あー。ナゴメル、説明してもいい?」
「ニャー」
よし。ナゴメルはオーケーだそうだ。ならもうちょっと説明しよう。
「あのですね、リシュール様。ここにはまず、プルーメも、レイアール国もありません」
「は、何を言っている?」
「そもそも、モンスターや魔法もありません。ここは地球という星で、俺は地球に住む日本人なんです」
俺とリシュール様は見つめ合った。
「そんなまさか」
「ニャー」
「これで伝わるかはわかりませんが、今現在位置をお見せしますね」
「ああ」
「ニャー」
「ん、ナゴメルどうした?」
ナゴメルが俺の眼の前に来て尻尾を振り始めた。
め、し。
「ああ、ごはんね。わかったよ。リシュール様。ちょっと待っててください。今ナゴメルのごはんをあげます」
「ああ、わかった」
そう言いつつ、リシュール様も台所についてきた。
俺はナゴメルの餌容器にごはんをよそる。
「ナルよ、おそらくそれは米だろうが、その釜は少し特徴的な形をしているな」
「ああ、これは電気釜です。電気で動いてます」
「電気? 動く?」
「簡単に言うと、この中に入っているごはんをずっと温め続けられるんです。炊いた後も冷たくならないんですよ」
「そんな馬鹿な」
「なんでしたら、リシュール様も食べます?」
「ああ、いただこう」
「じゃあ、ちょっとまって下さい」
俺は手早くねこまんまを作ってから、今度はリシュール様の分のごはんをよそった。久しぶりに母の茶碗を出した。箸も母のでいいだろう。
「後はふりかけをかけてと。おかか味とさけ味、どっちがいいですか?」
「なに、よくわからん」
「じゃあ2つともかけよう。はい、どうぞ」
「ああ。だが、フォークがないな」
「え、あ。じゃあ今出しますね」
すぐに洗ってフォークを出す。
「はい、どうぞ」
「今、水が勝手に出たな」
「勝手じゃありません。水道から出したんです。これも技術です」
「そうなのか」
「本当は、ていうかこの国ではこの箸を使って食べるんですよ」
「は? どうやってだ?」
「こうやって使うんです」
俺はリシュール様に箸の持ち方を見せた。
「ふむ、難しそうだな」
「ではフォークを使ってください」
「うむ。いただきます」
リシュール様はふりかけごはんを食べた。
「むっ、なんだこれは。美味いな!」
「良かった」
「この魔法の粉はなんと言ったか」
「ふりかけです。これらは主に、魚等を小さくすりつぶしてかけてるんです」
「これが魚とは。なんと。このような食べ方があったんだな」
俺はせんべいでもかじってよう。
軽く食事を済ませた俺は、次に現在位置を見せることにした。
「なんだ、この魔法道具は。急に光を放ち始めたな」
「リシュール様。これはパソコンです。これも電気で動く機械です」
「そんなまさか」
「起動したパソコンで、インターネットにアクセスしてですね。現在位置の住所とかを入力すると、ほら、周辺の地図が出てきました」
「確かに地図のようだが、実際に光景を見てみないことには確信できないな」
「リアルな光景が見えるマップもありますよ。ほら」
「なんと、リアルな風景が出てきた。これは魔法か?」
「いいえ、科学です。電気、技術の力って言った方がいいですか?」
「そんな技術どこにある」
「この国では普通なんです。海とか山の光景も、画像として見れますよ」
「むう、不思議だ。そしてこれが、普通? ありえん」
「あと何か知りたいことはありますか?」
「この光景はどうやって映した?」
「えっと。カメラで撮って、その映像をこのパソコンで見ているって感じですね。ああ、衛星っていう機械を宇宙、上空にとばして、そこから撮っている映像とかもあります」
「上空にカメラをとばす? なるほど。いや、それだとこんなに詳細な光景は映せないのではないか?」
「画像拡大っていう技術があって、それで一部分を大きく見ることができるんです」
「信じられん。が、お前の言っていることが正しいとすると、お前は凄まじい力を持っていることになる」
「俺がやってるわけじゃないですよ。どこかの会社が作って、やって、それを俺たち国民が借りているって感じです」
「どのみちこのような力を借りれるだけで凄いことだ。これでプルーメの情報も得られるのか?」
「いえ、残念ながらプルーメは別の星なので調べることはできません。この技術はこの地球限定です。でも俺からすれば魔法も凄いですよ。それにパソコンは、俺の力ってわけじゃないですから。あ、俺が商品を集めている力も紹介しますね」
「ああ、うむ。それが肝心だった」
「はい、これが通販サイトです」
「一瞬で映像が変わるな。もう商品を集められるのか」
「はい。外にもスーパーという店がありますけど、基本これで商品を仕入れますね。まず欲しい商品を探して、それを購入。後日購入した商品が家に届く。という流れになります」
「ふむ。ということは、すぐに商品がくることはないのか」
「はい。事前注文ですね。ここで、食料とか、ノートとか、いろいろな物を買えます」
「なるほど」
「俺が説明できるのはこのくらいですが、あと何か知りたいことはありますか?」
「お前の言い分はわかった。だがまだ何も証拠はない。だから、もう一つこの目で確かめさせてほしい」
「はい、何をでしょう?」
「この家の外の様子をこの目で確かめさせてほしい。それでここが本当に異国、いや、異世界であることが確認できれば、お前の言い分を信じよう」