2 お菓子とマジックバッグ
今日は朝の内にコランタさんと会った。今バッグの中には、炭酸ジュースとポテチ、棒状のチョコ菓子が入っている。
「コランタさん、おはようございます。ちょっとお時間をいただけますか?」
「ニャー」
「はい、なんでしょう。ナルさん」
「この商品を見てください。売れるか売れないか、まず確かめてほしいんですけど」
「はい。わかりました。ではすぐに確認させていただきます」
俺はすぐにテーブルに、炭酸ジュース、ポテチ、棒状のチョコお菓子を広げる。
テーブルにはメレンナさんもついていた。折角なので誘った次第である。
「さすがナル様。珍しいですね」
「はい。お好きなものからどうぞ」
「では早速」
コランタさんはグレープ味の炭酸ジュースと、ポテチを手に取った。メレンナさんはオレンジ味の炭酸ジュースと、チョコ菓子を手に取る。
ふたりともまずはお菓子を食べた。
「サクッ」
「ポキっ」
「こ、これは美味い!」
「まあ、なんだか楽しい味です」
二人はそう言って、次に炭酸ジュースを飲んだ。
「ん、これは良い!」
「凄い、甘いのに辛くて美味しいです!」
ほっ、良かった。ふたりとも反応は良い。
「ナルさん。これはなんという食べ物と飲み物ですか!」
「それは、ポテチと炭酸ジュースです。メレンナさんのはチョコ菓子です」
「ポテチ。炭酸ジュース。なるほど」
「これがチョコなのですね。ですが、チョコはドロドロの飲み物なのではないのですか?」
「ああ、チョコは冷えると固くなるんです。暑いところに置いておくとそれも溶けてしまうので、注意が必要です」
「なるほど」
「では私も、チョコ菓子をいただきます」
「あ、私もポテチをいただきます」
「はい、どうぞ」
「うむ、これも美味い」
「美味しいです」
「ポテチは、ただポテトをチップにしたものなので、大したものではないのですが、のり塩味なので珍しいはずです」
「は、これがただポテトをあげただけ?」
「はい」
「こ、これは凄い。大発明だ!」
「喜んでいただけて光栄です。俺の国では一般的なものなんですけどね」
「たしかにこれは売れるでしょう。これらも保存できるんですよね?」
「はい。半年くらい、いや、2ヶ月はもちます」
「なら、これも高く売って、4百、いえ、5百クエンはお渡しできれば」
「あ、いえ。これは高く売れなくていいんです」
「はい、よろしいのですか?」
「はい。これはメレンナさんに紹介してもらった、喫茶店癒しの花におろしてもらおうと思いまして。俺が利益をもらって、コランタさんと癒しの花でも利益を得たら、お金は3分割でしょ。それでしたら俺の利益は低くなってもかまいません」
「なんと、そういうことですか」
「ナル様。そのようなことにまでお心を配っていただき、ありがとうございます」
「いえ、ですが、その商品にも元手がかかってます。ですので、3点とも、一つ2百クエン程利益をいただけないでしょうか?」
「それならば簡単に払えます。癒しの花の利益にも十分なるでしょう。それに、商品の仲介を私がしてもよいとなると、その他の売り道も用意しでよいと?」
「はい。その通りです。俺が用意できる限りなので数に限りはありますが、コランタさんがおろしても良いと判断した店等に紹介していただいてかまいません。俺にあまり負担が出ない程度に、自由にお売りください」
「ありがとうございます、ナルさん」
「ありがとうございます、ナル様」
「では、すぐに商品を用意しますね」
「わかりました。では、私はこれから仕事に行きますので、お昼ごはん時に私にお売りください」
「はい。わかりました」
こうして、炭酸ジュース、ポテチ、棒状のチョコ菓子も売りつけることにした。
これからは定期的に癒しの花に行って、売れ行き等を聞いてみよう。全然売れてなかったら、提言したかいがないからな。
その日魔法ギルドに行くと、受付嬢にご高齢の魔法使いを紹介された。
「ナルさん。こちら、マジックバッグを作成していただいたラハッツ様でございます」
「あ、それはどうも。初めまして。ナルです」
「ほっほっほ。ワシがラハッツじゃ。自分で作った魔法道具は自分で手渡すことにしていてのう。ほれ、これがお前さんのマジックバッグじゃ」
「ありがとうございます」
俺はラハッツさんからマジックバッグを受け取った。
「早速使ってみるとよい」
「では」
俺は手に小銀貨と大銅貨を持って、それをマジックバッグの開き口に近づけた。
「入れ」
おお、お金がマジックバッグの中に吸い込まれていく!
「少銀貨を出せ」
おお、小銀貨だけ俺の手に吐き出された!
「ありがとうございます。これで満足です!」
「ほっほっほ。後で容量の方も確認するといい。樽3つ分は入るはずじゃ」
「わかりました。早速試してみます」
っていっても、樽3つ分なんてよくわからん。後でまた文房具50万円分、いや、25万円分買ってみるか。
「でも、マジックバッグを作成できる魔法使いはいたんですね」
「ああ? それはどういう意味じゃ?」
「っ」
「ニャー」
「あ、ナゴメル。後にして。えっとですね。今までリフレッシュとパワーアップの付与魔法をしてくれる人を探してたんですよ。でもフィーコさんしかいなくて、ちょっと注文数を制限していたんです。ですがラハッツさんは、付与魔法できますか?」
ていうか、できるよね? だって、マジックバッグを作れるくらいだもんね?
「なにい?」
ラハッツさんが受付嬢を見た。
「ワシ、そんな話は聞いておらんが」
「わ、私も初耳です」
「え? フィーコさんにはいつも人が集まらなくてごめんなさいって、謝られてますけど」
あ、なんか受付嬢が青ざめた。
「わかった。その話は後にするとしよう。ナルよ。付与魔法の依頼なら、ワシの弟子が3名程暇しておる。そやつらなら呼べるぞ」
「いいんですか、ありがとうございます。じゃあ、明日から4倍道具を持ってきますね!」
今までの売上が一日最低4万だったから、それが4倍で16万。10日で160万の売上がみこめる!
今の所ウレルナでは即日完売だから、期待値は高い!
「わかった。明日からじゃな。では弟子たちに伝えておこう」
「はい。わかりました。ではこれから、フィーコさんにまた依頼してきますね!」
「うむ。これからも魔法ギルドをよろしくな」
「はい!」
そして話し合った通り、翌日から百個以上の魔法道具を作れることになった。
なんでも、ラハッツさんの弟子はフィーコさん以上に魔力があるらしい。
その日から一日百個以上、地球で魔法道具が売れることになった。
こうして俺の人生逆転チャンスが、ほぼ成功し始めた。
「あの受付嬢がフィーコの魔法道具依頼の注文を握りつぶしておったんじゃよ」
「へえ、そうなんだナゴメル。なんでわかったの?」
「天使ゆえの能力じゃな」
「でも、なんでそんなことしたのかな?」
「さあな。人間というものは稀に理解不可能なことをする生き物じゃ。今回もそういうことなんじゃろう」
「ふーん」