表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

10 王都へ向かう

 俺と十数人の騎士達が、王都セイテアに向けて出発した。

 俺はずっと馬車の中。一応罪人扱いなので、外に出ることはダメとされた。

 まあ、転移ができるからそこはあまり苦痛ではない。大事なのは、王都についてからだよな。

「そういえばナゴメル。俺馬車の中から我が家に転移するとするじゃん?」

「うむ」

「その後またここへ転移される時、馬車の中に転移されるの? それとも転移した地点に戻ってくるの?」

 もし転移した地点だったら、先に行った馬車や皆においていかれることになるんだけど。

「あー。後者だといろいろとめんどいし、馬車の中転移でよいよ。その方がめんどくないじゃろ」

「さすがナゴメル。それじゃあ極論、馬車が王都につくまで地球にいてもいいな」

「まあそうなる」

「でも一応、朝と夕の2回はちゃんといるアピールしとくか」

「まあ、それでいいんでない?」

「騎士の人達も空の馬車を護衛してると思わせたくないしな。でも、俺の考えはちゃんと伝えておこう」

 馬車の中にいながら、騎士に、基本は地球にいるから。と説明して、了承を得る。

 そして出発して翌朝。状況を見に馬車の中へ転移すると、あろうことかコランタさん、メレンナさんと会った。

「ナル。喜べ。コランタとメレンナが来てくれたぞ」

「コランタさん、メレンナさん、どうしてこんなところへ!」

「ナルさん。ナルさんの一大事と聞いて、駆けつけました!」

「良かった。ナル様。まだご無事でいらっしゃいますね!」

 コランタさんとメレンナさんは、俺を見るなりホッと一安心して、それから一気に喋り始めた。

「ナルさんが打ち首の刑になり、それを覆そうとプルーメの騎士団の方々が動いてくれたというのは聞きました。そして、私達にもできることはないかと思い、せめてナルさんの事情の参考人となるため、セイテアまでついていこうと決心したのです」

「ナル様。私達は、ナル様の無実を訴えます!」

「コランタさん、メレンナさん。ありがとうございます。でも、俺なんかのためにそこまでしていただかなくてもかまいません。俺には騎士団の方々がいます。コランタさん達はついてこなくてもいいんですよ」

「そんなつれないことを言わないでください。私達が困っていたところを助けてくれたのはあなたです。そんなあなたを、ここで助けなくてどうするというのですか」

「ナル様がこのまま無実の罪をきせられては、穏やかに眠ることもできません。どうか、私達も力にならせてください!」

「コランタさん。メレンナさん。ありがとうございます。ではどうか、このままセイテアまでお付き合いください」

「はい!」

「喜んで!」

「ニャー」

 こうしてコランタさんとメレンナさんも、セイテアに行くことになった。

「ですが、このままコランタさん達をセイテアまでご一緒させるのは心苦しいです。そうだ、このままいつものように商品を売買して、移動しながらコランタさんを稼がせることはできませんか?」

「それは、できるかもしれませんが、よろしいのですか?」

「はい。むしろこちらからよろしくお願いします」

 俺は騎士団ともかけあって、村や町に寄る度に、コランタさんに商品となる物を売りつける許可をもらった。

 これでコランタさんとメレンナさんは路銀を稼ぐことができる。俺もちょっとは心苦しくなくなる。

 俺をつれてく間も、騎士団達はたびたび食料等の補給が必要そうなので、コランタさんが商品を売っている暇はあるそうだ。

 こうしてセイテアまでの旅に、コランタさんとメレンナさんも加わった。

 そして、もう一人。

 コランタさんとメレンナさんに遅れて、夕方頃にフィーコさんが追いついた。

「ナルさん。私、ナルさんが打ち首にされると決められて、それを覆すためにセイテアに向かったということを聞きました!」

「あ、はい。でもフィーコさん、なんで」

「ナルさんが悪い人ではないことは、私もよく知っています。なので、私もナルさんのことをよく知る参考人として、つれてってください!」

「フィーコさん。ありがとうございます。では、騎士団の方に許可をもらえたら、一緒に来てください」

「はい!」

「それと、フィーコさんさえよければまた毎日、俺の道具に付与魔法をかけてくれませんか?」

「え、いいんですか?」

「はい。報酬は今までどおりお支払いします」

「わかりました。それが必要なら、私、やります!」

 こうして、俺連行中にもかかわらず、またクエンと円を稼ぐことができるようになった。

 ありがたいことである。前程は稼げないが、これも立派な利益。できるだけ儲けたい。

 それに、儲けられればできることもある。

 俺は増えたお金を使って、移動中の騎士団とコランタさん、メレンナさん、フィーコさんに、ハンバーガーセットをふるまった。

「美味い!」

「美味しい!」

「やみつきになる!」

 皆喜んでくれた。皆折角俺のために力を貸してくれてるんだ。少しだけでもねぎらいたい。

「ナルさん。ところで、1つお願いしたいことがあるのですが」

「はい、なんでしょうか。メレンナさん」

「ナルさんさえよろしければ、シカがくる。を全巻いただけないでしょうか?」

「はあ。欲しいなら買ってきますよ。翻訳もしますね」

「ありがとうございます!」

 メレンナさんはそう言って、俺からシカが来る。をもらい、更に読み聞かせてあげると、メレンナさんは熱心に俺の言葉をノートに書き写した。

 そして、読み聞かせが終わった後日、メレンナさんだけ一足先にセイテアへと早馬で行ってしまった。

 一体何がメレンナさんを急がせたのかは知らないけど、無理はしないでほしい。


 今日は一日我が家でごろーっとする。

「うにゃー」

 ナゴメルもごろーっとしていた。

「はー。通販も前程頻繁にしないし、毎日のウレルナへの出品数も少ないし、何より異世界は今馬車の中一択だし、もう家の中でゆっくりするしかないー」

「同感であるー」

「結局日本円は商品の購入のせいであんまり稼げてないしなあー。クエンならいっぱいあるんだけど」

「まあ、日本円の稼ぎ方が限られておるしな」

「このまま異世界に行けなくなったら、半年分くらいの貯蓄しかないわけだけど、やっぱり今から何か仕事探さなきゃダメかなー」

「じゃあ探せばよかろう。異世界の方もどうなるかわからないのだ。ちょっとはこっちで頑張ってみれば?」

「そう思うのはやまやまなんだけどー。一回楽して儲けるうまみを味わうと、なかなかまじめに働けないというか」

「このダメ人間め」

「それを憶えさせたのはナゴメルでしょ」

「あーあーきこえないー」

「はあ。このまま打ち首決定だとやだなあ。ねえナゴメルー。ナゴメルの恩返し、もっとパワーアップさせることはできないの? せめて、今の状況を切り抜けられるくらい強くなりたい」

「やあ。人の子よ、怠けるでない。ちょっとの困難苦難くらい自力でのりこえてみい」

「行き倒れていた猫の言葉ではない気がする」

「我は運が良かったのー。お主に拾われてー。お主は運を天に任せる前に、何か自力であがいてみたらどうじゃ」

「それもそうだよなー。ネットでも見たら何か解決策のってないかな?」

「最近はAIも発達してるらしいし、試しに聞いてみたら?」

「それもそうか。一度やってみるか」

 試しにAIに聞いてみても、なんか意味なかった。

「ダメだ。AI先生でも打ち首を免れる案は出せなかった」

「所詮機械などそんなもんよ」

「あと俺に何ができるってんだ」

「そうさなあ。あ、メレンナはマンガに興味あったじゃろう。なにかオススメマンガでも見つけといて、後で紹介すれば?」

「あー。それくらいしかできない自分が情けない」

「やーいやーい。情けないやつー」

「お前仮にもペットなんだからご主人さまをもっと敬ったら?」

「我天使じゃし。むしろ敬われる側じゃし」

「あーあーそうでした。それじゃあ、マンガでも読んでみるか。なんか最近のマンガってアプリ経由だと一部無料らしいんだよね」

「へーそうなのー? サービス精神良すぎない?」

「だよなあ。まあ、こっちとしてはありがたいけどさ」

「ちょっと興味でてきた。ナルー。我にもマンガ読ませてー」

「別にいいけど、どんなの読みたいの?」

「猫と猫の激しい愛の物語」

「ぜってーねえよ」

 結局俺とナゴメルは、一日中ダラダラして、夕方騎士団達に顔を見せて、寝た。

 俺たち、あんまり危機感ないなー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ