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底辺悪魔の底辺冒険譚とその他  作者: 林集一
第1章 名もなき辺獄の放浪者
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第2話 魔なる鉱山

前回の底辺悪魔は〜


・目覚めたら辺獄。


・山羊瞳の人に色々教えて貰った。


・取り敢えず歩こう。


◇ ◇ ◇ ◇

 

 クレヨンで塗り潰した様な辺獄の空。目が慣れてきたのか、たまたま標高が高い所に来たのか、その更に上には巨大な鍾乳石がぶら下がる“天井”があった。


岩柱(アレ)が落ちてきたら一撃死だろうなー」


 先程の少年は「この上に地上があるよー」と言っていたから、辺獄ってのは地上と繋がっていて、地下の深い所にあるのだろう。


 とすると上に登れば地上に出る事が出来るのだろうか?


 考える事は尽きない。


 ……ん?


 何となく高い所を目指して山を登る様に歩いていると、ふもとを見下ろせる場所に辿り着いた。彼女が居ればステキ……と身体を預けてくるような光景だ。


 しかしまぁ彼女なんて居ないし、肩を抱く筈の手は尖った爪に水掻きの4本指。バリバリの怪物ハンドだ。


 落ちないように下を見ると、割と遠い所に沢山のインプがうごめいているのが見えた。


 何だろう、例えるなら蟻だ。何か明確な意図を持って仕事をしている様にも見える。


 指示を出してる人の形をした悪魔っぽい奴もいるな。


 何かを掘っているような……ああ、鉱山奴隷みたいなものか。インプって働き者やな。


 って俺もインプか。


 俺は見つからない様に身を低くして転がる事にする。


 奴隷にされてはたまらんからなー。


 折角なので頬杖を突いてゴロリと横になり、膝から上を宙に浮かせて、ブラブラさせた。


 ダラダラしながらデバガメ同族鑑賞の時間やな。



 ◇ ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇ ◇


「なるほど、数日で死ぬってのこう言う事か……!」


 露天鉱床らしき場所を見続けていると、たまたまインプが地面から産まれる所を見てしまった。


 何かこう……潰した粉瘤みたいにニュルッと出てくるんだな。


 その様子を「産まれたなー」なんて見ていると、人の形をした悪魔がツカツカと歩いて近付き、サッと手をかざした。


 すると、生まれたてホヤホヤベイビーのインプはビビビッと立ち上がり、他のインプと並んで採掘の仕事をし始めたのだ。


 おいおい。社畜ってレベルじゃねーぞ!


 生まれて1分もせずに強制労働とかこの辺獄の労働基準法はどうなってんねん!


 そりゃ死ぬわ!


 注意深く見ていたら、ちょいちょい死んで、地面へと吸い込まれるように消えていく奴もいた。


 ソ連の兵隊さんは畑から生えてくるとか言うギャグそのものだ。あのインプ達は死んで生まれ変わってすぐ操られて労働してまた死んで……の繰り返しループに捕らわれて居るんだ。


 可哀想に。生きてるだけで可哀想!


 しかしあれだ、生まれた場所がほんの少し違っていたら俺もあのループに捕われていたのか……。


 そう思うとゾッとした。


 アカンな。どうにかあの一団と関わらずに生き延びなければならない。


 それにはどうすれば良いのだろうか?


 このまま隠れておく? 腹は減らなさそうなので餓死こそしなさそうだが……餓死しないからと言ってずっと山の上に隠れている訳にも行くまいし……。


 ともかく、先の事でも考えるかと寝っ転がった。


 空は相変わらずトゲトゲしていて黒い。


「こういう時は酒でも飲んでひっくり返るのが男ってもんよ。酒もないけどなぁ……はぁ」


 特に宛もなくぼーっと周囲を見渡してみると、岩の隙間にキラリと光る物があった。


「……ん?」


 近付いてみると、微かに緑色に光る石があった。


 これは、もしかして下で発掘している石か?


 何だか、とても美味しそうに見えなくもない。


 今の俺はインプであるからして、インプの食うものが美味しそうに見えるのかも知れない。


 そう考えると、口に運ぶのは抵抗がなかった。


 カロ……。


 石を口の中に放り込むと、真夏の縁側で氷をかじるような音を立てて口の奥に消えていった。そして訪れるビリビリとした好感覚。


「なるほどはいはいそういう事ね」


 理屈じゃなく本能で分かった。


 この緑色の石は魔石的な物で、コレを食うと魔力っぽいエネルギーが身体中に行き渡ってギンギンになる。


 まるで炭酸を抜いた甘い炭酸飲料だ。


 正式名称はわからんが魔石と呼ぼう。


 体感的に飴玉程度の石でカロリーメイト1個分のエネルギーがありそうだ。そのエネルギーが直接身体に蓄えられるので、食べれば食べるほど身体が強靭になる……そう認識した。


「こりゃ、インプを操って集める訳だわ」


 改めてふもとを見おろしてインプの数を数えてみると、50はくだらない。そのインプが集める数の魔石を食ってるとしたら、あの人の形をした悪魔はどれだけ強いんだ……。


 その事実に軽く絶望しつつも、目標は見つかった。


「よし、先ずは目的イチ! その辺に落ちてる魔石を集めて喰らい、少しでも強くなる!」


 俺は尾根に背を向けて、此処より安全っぽい目覚めた場所へと向かって歩き始めた。


 

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