第9話 エイサヌースラエイベー
「えい!えい!」
昼下がり、ハルカがサンドバッグをぺちぺちしている。
これがどう魔法の習得に繋がるのだろうか。
「ふんっ!」
やっとまともなパンチが出た。
「いいねー!」
「あの、なんでサンドバッグを?」
レイアが不思議そうにミリアに聞く。
「これは持論だけど、筋肉を付けると魔法の威力が上がるのよ!そして、ついでに魔法が習得できたり…!」
ミリアが自慢気に腕を組み、鼻を鳴らす。
「持論ですか…そして、筋肉を付けるなら他のトレーニングがいいのでは」
「ひい…ひい…」
ハルカはもう限界そうだ。
「ハルカ!あと千回よ!」
ハルカは一時間近くパンチし続けたというのに、このミリアはまだ千回もやらせようとする。
「さすがに止めたほうが…」
「ええ?なんだって!?」
今日のミリアはすごく怖い。
「うおおおおお!」
ハルカは最後の力を振り絞り、高速パンチを繰り出した。
「おー!いいね!その調子であと800回!」
「うええ…」
鬼モードミリアの特訓は三時間も続いた。
「よし!次は妨害されない魔法の習得だ!」
「やっと…終わった…」
ハルカは戦いが終わったかのような笑顔をしていた。
まずは魔法の呪文を覚える事から始める。
「エイサヌースラエイベー!エイサヌースラエイベー!」
ボロボロの本を片手に、ハルカが呪文を唱える。
「6時までそうしてて!」
「ええっ!?」
2時間休みなしでこのままはキツすぎる。
「ううあぁ…レイア、助けて…」
ハルカが助けを求める。
だが、レイアは疲れて寝ていた。
「うわーん!もうやーだー!」
その夜ハルカは、これまでにない程ぐっすり眠れた。
ハルカはこんな夢を見た。
「やあ、ようこそプレテキテラへ」
暗闇から出てきたのは、優しそうなマントの男。
「あなたは誰ですか…?プレテキテラって何ですか?」
ハルカが問う。
「それは企業秘密なんだ…でも、教える代わりに君の願いを一つ叶えてあげよう」
「えっ、願いを、叶える…?」
(うーん…何にしよう)
ハルカは魔王との戦いが終わって欲しいと伝えた。
「いい願いだ」
マントの男はそう言うと、暗闇に消えた。
「はっ!夢か…」
本当に願いは叶うのか。