第51話 希望
ハルカ達が転移魔法で神殿に足を踏み入れる。
そこで見たものは…
リリアンとリオネス、ラニス、リアリスがリーズンと出会った所。
(またリがいっぱい…ってそんな事言ってる場合じゃない!助けなきゃ!)
(そうね、ハルカ!)
「む…何故やつらがこんな所に…?」
ハルカとミリアが奇襲を仕掛ける前に、リーズンに気付かれた。
「アーリさん、あれが倒すべき敵、リーズン…!」
「あれが魔王リーズン…」
「会いたかったぞ、アーリ。お前こそがクローンの完成品…素晴らしい出来映えだ…!」
その口から発せられたのは、思いもよらない言葉だった。
「それは違う…私は…ずっと"アーリ"として生きてきた…」
クローンは、リリアンではなかったのか…?
「いいか、アーリ…という人物は、最初からいない。お前が勝手に名乗っていただけ。お前は…」
「……本当は全て、わかっていた。それなのに、あの者は…私が"アーリ"として生きる事を勧めた」
話を遮るように告げるアーリ。
「あの者……どいつだ?」
「名を聞いてもはぐらかすばかりで、何も教えてくれる事はない…だが、絶対に悪い者ではない。そう信じている」
ハルカはその存在を知らないが、静かに頷く。
「それも自らが勝手に思い込んでいるだけだ。ただの…幻想だ。ああ、この世界も幻想で出来ているのだったな」
リーズンは上を向いて深呼吸した後、ハルカ達に視線を向ける。
「この終わった世界で足掻く意味はない…どれだけ悪に染まっても、善を貫いても、全ては無に帰す…救いはない」
そう語る目は、どこか悲しげだった。
「全て、無駄になるとわかっていても…諦めきれません。まだ、意味なく足掻いていたい。だって今、生きているから」
レイアは右足を一歩前に、力強く踏み出す。
そして…
「希望を持っちゃ、駄目なんですか!」
リーズンに訴えかける。
…場にしばらくの沈黙が流れた。
それを破った言葉は…
「…希望?希望など、とっくの昔に潰えたわ!!あああああ!実に不快な響きだ!もういい、全て、全て滅びてしまえ!!全部、全部、全部ッ!!」
その叫びに応じるように、神殿が崩れ始める。
リーズンは悲鳴をあげながら膝から崩れ落ち、その背中から黒いモノが、とてつもない速さで沸き上がってきた。
「な、なにあれ…!?」
3mほどの高さに達すると、どんどんと形を取り始めてゆく。
大きな羽根に光り輝くヘイロー、まるで天使のようだ。
この世のものとは信じられない風貌に、ハルカ達は少しの恐怖を覚える。
恐怖は少しだけ。
もう、一体の敵に腰をぬかすような者ではない。
「こ、このでっかい黒いのがモンスター……!?」
「いや、これはモンスターなんかじゃない…」
「"異形"だ」
アーリはそう言った。
次回、最終決戦。