第50話 果たし状
「全てを知ったと言ったけど、世界を救う方法は、わからなかった。だから、もう諦めよう…?」
「それでも、諦められないよ。幻想だとしても、現実にしてみせようよ」
この場で、リリアンだけが希望を持っていた。
「レイルも、それを望んでると思うんだ…」
「…なんでそんな事が言えるの?夢物語を語ったり、死んだ人の事を勝手に決めつけたり…!ああ、リリアンはいつもそうだったね…」
蘇る思い出に、リアリスは涙を流し始める。
「でも、でもっ、これだけは…どうしようも……」
「あるよ。いつもそうやって色々なこと、乗り越えてきたじゃん」
そう言ってリアリスの側に寄り添う。
「とりあえず、魔王さまをやっつけにいこう!」
「なんでそうなるの………」
「世界を救うなら、魔王を倒すべし!でしょ」
「そっか……とりあえず、この黒いモノは…あれ?消えてる…」
話に集中しすぎて気付かなかったが、黒いモノは別の場所へ逃げてしまったようだ。
…コツコツと、ヒールの音が聞こえる。
「一体どこからこんな果たし状のような物が…まあいい、ひねり潰すだけだ」
リーズンだ。
…それよりも前の出来事。
ハルカ達は山道を下っていると、戦いを終えて疲れきった髪ファサァおじさんに出会った。
「あ、おじさん!…神前の行方について何か知りませんか?」
「知らないも何も…おじさんこそがその神前だよ」
いや、それはない。
お金賭けられるくらいありえない。
「それは…ない…」
つい言ってしまう。
ハルカは慌てて口を手で塞いだ。
「…実は、こんな手紙が届いてね」
それは、ドゥパリバヤ・サーレのナニカット神殿に来い、というもの。
「ドゥパリなんとかって、リリアン達が行ってる所だよね!」
「このハルカって人を探していたんだ」
手紙の一番下には、おじさん宛てではなくハルカ宛てであることが明記されていた。
「ハルカ…私のこと?」
「お嬢ちゃんがハルカだったのか。いやあ、神前には"上"からのメッセージを受け取る役割があってね。たまにしか来ないけれど」
おじさんが神前だということは未だに信じられないというか、信じたくない。
だが、その"上"からのメッセージを受け取っているのは事実。
「よし、もう一回アーリさんの転移魔法を…!!」
…
……
「私を道具か何かと勘違いしてないか…」
「アーリさん!私をナニカット神殿に連れてって!」
アーリはため息をつきながらも、転移魔法のための魔法陣を描き始める。
「ああ、今回は私も同行しよう」
「えっ?」
なぜか、ハルカ達に絶対について行かなければならないと感じるらしい。
「私の予感は良いものも悪いものも、よく当たるんだ」
(あの者だけに任せるわけにはいかない…)
「今回は良いのかな?悪いのかな?」
「…悪いもの、だな」
そう聞いて、ハルカ達は覚悟を決める。
アーリと共に、ナニカット神殿へ向かう。
「さよなら、おじさん!」
「おう、幸運を祈るぞ」