第33話 物語の傍観者
四人とテくんは魔法を使って、なんとか列車の外へ出ることができた。
「ここからどうしよう?」
ハルカは必死すぎて本来の目的を忘れてしまう。
「クレメンに行くんだよ…」
全員で口を揃えて言った。
「…あっ、そうだった!じゃあ、どうやって行こう…電車はもう壊れてるし歩いて行くのも難しいし………そうだ!アーリさん助けてくれないかな!!」
困った時のために連絡先を交換したから、ここで助けを求めてもいいかもしれない。
ラフィンの携帯を借りて連絡を取る。
しばらくして…
「アーリさん来てくれるって!」
「おっ、それは良かった!」
足音が聞こえてくる…
「クレメンに行くのか。なら私の魔法で連れていってあげよう」
「…来るのはやっ!」
また全員息ピッタリで言った。
…慣れた手つきで魔法陣を作る。
そしてその上にみんなで乗った。
「気をつけて」
「はい!ありがとうございました!…行ってきます!」
ハルカたちは転移魔法でクレメンへ。
そしてアーリは…
…
「…またキミか」
「居心地が良いとは言えないが…落ち着ける場所はここしかないんだ」
忘れ去られた遺跡の、奥深く。
そこにはアーリとほぼ同じ姿をした者が、崩れかけた台座に腰をおろしていた。
「それで…ハルカだっけ?…うん、その子はどんな感じなんだい?悪魔がどーたらこーたら言ってたけど」
「見ればわかるだろう」
この者は色々なものを見渡せる力がある。
現在の世界も、過去も未来も。
それなのに…
「あー、そうだけど…なんか…ね?」
上を向いて首を傾け…
なにか別の事を考えて話しているように見える。
「それは…」
「私が直々に手を下すまでもない、ということだよ」
そう言いながら手に持っていた、道端で拾い集めたような不揃いの花束を散らした。
「何を言って…」
「うん。悪魔はかつての私たちにも影響を与えた事がある、おそろし~い存在だよ。でも、あの子には…ハルカには、まだ別の力が眠っている。そんな気がするんだ」
"別の力"がこの者の力を伝ってこちらを認識しないように、視る能力を使わなかったらしい。
なら…その"別の力"のように、私たちから何か仕掛けることは出来ないだろうか。
「…とか考えていそうだが、私はその気にならないんだ」
「その気になればいいという事か?」
「うーん、今日はなんだか察しが悪くないかい?いつもなら…」
…
どうしてだろう、発言や態度に怒りを覚えてしまって、その場から逃げ出した。
足首に痛みを感じる。
走った時に瓦礫が少し刺さってしまったようだ。
「おーい!まだ話してる途中でしょうが!」
声が聞こえてくる。
気持ちがおさまった頃に戻ることにした。