第32話 時計仕掛けの運命
同時刻、リリアンとリオネス、レイルチームは難なくドゥパリバヤ・サーレに到着していた。
「思ったより早く着いたね」
「なんだか順調すぎて怖いくらいだよ!…へー、ここがドゥパリバヤ・サーレかー!」
切り開かれた森の中に建つ、中世風の街並み。
その美しさに、思わず息をのんだ。
ここを統治しているのは時を操る力があるという女性。
その名はサルタヤ。
「どんなところなのかな、どんな人がいるのかな!うーん、なんだかワクワクしてきたっ!!」
初めての場所に興奮が止まらないリリアン。
目の前にあるのはアリク・メドという街。
三人は街の中に入ると、不思議なものを見た。
「あれ?昼なのに流れ星?」
雲一つない青空を、赤紫色の光がゆっくりと走る。
街の喧騒など気にも留めずに。
それは自分の目を疑うような光景で、でも見惚れてしまうほどに美しかった。
「お、おい、あれ見ろ!」
「な、なんだって…!?」
しかし、現地の人々はそれを美しいとは思わない。
なぜなら…
「しゅ、終末じゃ……!!」
慌てふためく老人。
「終末…って、どういうこと…?」
三人は当然何も知らず、美しい空を見る。
人々もまた、「終末」の訪れにただ流れ星を見上げるしかなかった。
すると、近くに建っていた塔の上に、一人の女性が現れた。
黄金の長髪を風になびかせ、目を不思議な柄の黒い布で覆い隠している。
その姿は表情がうかがえず、どこか神聖な雰囲気を纏う。
「紅い星が流れ、この塔の鐘が鳴った時、終末は訪れる…」
ここで、「終末」の言い伝えを知る。
街中は女性の登場に、安心感を覚えた。
「でも、心配することはないわ。」
「終末は、わたくしと"救世主"が止める」
その言葉を聞くと、瞬く間に歓声が上がって…
「そこにいる彼女らが、その救世主よ」
「えっ」
まさかとは思ったが、女性は確実に三人の方を指している。
「そ、そんなわけないよね…」
リオネスもレイルも、そんなわけないと言った。
女性は塔を降りて、自分たちの方に歩いてくる。
「えっ、えっ…」
ついに目の前に来て止まった。
そしてこちらを向いて話し始める。
「リリアン、よね。それに、リオネスとレイル。」
「さ、サルタヤさん…だよね。あの、イバラキ屋でまんじゅう売ってた…」
「ふふ、そんな事もあったわね…」
昔のことについて語りあった。
思い出話を始めると、出てくるのは今ここにはいない存在。
「リアリス…ラニス…今なにしてるんだろう」
心地のよい風が吹き抜け、落ち葉をさらった。
「あら、話が弾みすぎちゃったわ。さあ行きましょう、救世主さん」
「えっと…救世主って…」
「もう過ちは繰り返したくないの…」
サルタヤはそう呟く。
「なんでもないわ。行きましょう、ゲドニー・マル魔窟へ」
救世主として何をすればいいのか聞けなかったが、ゲドニー・マル魔窟というのが次の目的地のようだ。
三人はサルタヤについていくことにした。