第29話 クレメンの地へ
「じつは…」
歩いていると、ラフィンが突然携帯を取り出して言った。
「アーリさんとMINE交換してたの!」
「え~!ってことは、アーリさんと連絡が取れるってこと?」
それならかなり冒険が楽になりそう!
「うん、困ったら助けてくれると思う!多分!」
「多分、ねぇ…」
呆れたように言葉を漏らすミリア。
やったね!
これでスイーツ食べ放題についての研究があるか聞いてみたいな~!
「…ねー、ねー、レイア、なんか歌ってよ!」
「え…?」
「いや、戦闘以外だと空気だから話を振ってあげようかなーと…」
…しまった、無茶ぶりだったかもしれない!
まあいいや。仲間なんだし、これくらいは許してくれるよね…?
「べつに、平気」
そうなのか、よかったー…
ハルカは胸を撫で下ろす。
クレメンは四大大陸のうちの一つで、観光業が盛んな都市がある。
観光地の中でも有名なのが、ミズラー庭園だ。
美しい花々とそれに上手くマッチした、広いテラス。
一般客はそこで茶をたのしむ事もできる。
ただ、人気すぎて席が空いていないのがほとんどである。
ハルカたちはこれを事前に調べており、いつか行こう!と決めた。
いつ行くかはハルカ次第…
クレメン一帯は神前と呼ばれる王に統治されており、王が住むのはクレラニという都市である。
クレラニは商業が盛ん。
なかでも、武器商人は世界有数の品揃えを誇り、近くに名のある武器職人も。
「この電車に乗ろう」
この世界には、三つに分けて全ての大陸間を横断する鉄道がある。
ハルカたちはそれに乗ってクレメンへと向かう。
長い旅になるため、電車内では食事とベッドが用意されている。
「おいしそおおおおお!」
「おいしい!」
ごちそうに興奮しているハルカ、ものすごいスピードでご飯を食べるラフィン。
ミリアの中では、これはもう日常の風景となっていた。
レイアは食事に手をつけず窓の外を眺め、物思いにふけっている。
「おいしい!」
夜が来て、また食事の時間が来る。
「おいしい!」
朝が来て、また食事の時間。
「おいしい!」
夜が来て、朝が来て、また食事。
「ねえ、なんだかおかしいと思わない?」
感じる違和感に、ついにミリアが口を出す。
「え?」
ミリア以外の誰もそれに気付いてはいなかった。
『次は…ウィドウズ大陸』
そのアナウンスで、やっと全員は理解した。
「この電車に…モンスターが!?」
「やっと…気付いた」
車掌のような女性が現れ、帽子を外す…
と同時に、乗客が次々とモンスターの姿へ変貌していく。
「な、お客さんが…!!」
「本日はトルペ鉄道をご利用いただき、誠にありがとうございます。次は地獄、地獄に止まります」
ハルカ達は、襲い来る新たな敵に勝てるのか!?