第25話 契約を、ここに
女性による研究の長い長い説明が終わった後…
アーリから研究者三人に一件のMINEメールが届く。
『一体のクローンが例の装置を起動させたようだ。そしてそちらにいる来客を今から静寂の古城へ向かわせてくれ。そのクローンの友達なんだ。君たちは待機していろ』
「とのことですので……ふむ…ではあなた方にこの地図を渡します。MINEの通り静寂の古城へと向かってください」
「はい、わかりました」
ラフィンは地図を受け取った。
「みなさん!また会う日までー!」
女性が手を振っている。
こちらも手を振り返す。
ラフィンとレイア、レイルとリオネス四人は研究所を後にし、地図を見ながら静寂の古城を目指している。
「さっきのMINE、友達ってことは…ハルカのことかな」
ラフィンがつぶやく。
「そうだといいですね…あ、モンスターです、気をつけてください!」
若葉の姿のモンスターが草むらから飛び出してきた。
レイアは刀を構え、意識を集中させる。
「秘技・楼月」
六つの刃が一斉に敵を切り裂く。
…モンスターは木っ端微塵になった。
「弱くてよかった、こっちも片付いたよ」
レイルもまた、自慢の炎魔法で同じモンスターを焼き尽くしていた。
地図に従って、誰もいない森を歩いてゆく。
昼下がり、静寂の古城にて…
「ハルカ、大丈夫かなぁ」
「大丈夫ですよ、今から助けますので」
リリアンと女王、アーリが城の中へ到着した。
「ハルカ~ハルカ~ハルハルカ~」
ラフィンたちも、謎の歌を歌いながら城にたどり着いた。
ここで全員が再会する。
「わっ!リリアン…と女王さま!?」
ラフィンは女王がいることにびっくり。
「お久しぶりですね」
女王がふふっと笑う。
「ねえ、わたし…本当にハルカの家族にひどいことしたのかな…」
リリアンは申し訳なさそうな顔で言った。
「いま女王さまとここにいるってことは、リリアンは何も悪い事してないんだよ!だから大丈夫!」
とラフィン。
「そう、あなたはなにも悪くないの」
リオネスはリリアンの元へ近寄り、抱きしめる。
「ありがとう、おねーちゃん…」
涙を浮かべるリリアン。
…この城の奥深くに、ハルカとミリアはいた。
「ああ…ミリアだけがいれば、私はもう何もいらないの…」
「ああ、それだけで私のココロは満たされるの…」
「……はあ…愛くるしいそのお顔…」
「さあ…ミリア…誓いを、共にしましょう?」
ハルカは、朦朧としているミリアの顔を自分に近づける。
「お…お願い…元に…戻って…」
ミリアが苦しみながらも言葉を発する。
(早く…誰か助けて…!)
「…ん?今ミリアの声がした…?」
「私も、助けてと聞こえました」
全員は脳内で、ミリアの声を聞いた。
ミリアはハルカのような、テレパシーは持っていないはずなのに。
「…って、さっきからリリアンの隣にいる白い髪の人、だれ!?」
ラフィンがアーリを指さす。
「あ、このひとは新しい仲間だよ!アーリ、っていうの!」
「そうなんだ!」
ラフィンは納得した。
「いつのまに私が仲間に…?」
「……君たちがMINEを見てきた、研究所の来客か」
そう尋ねられ、レイルは答える。
「はい、あなたがMINEの主だったんですね」
アーリが頷く。
「おそらくお友達はあの階段を登った先にいるだろう」
と言って奥の螺旋階段を指さす。
「私はここでモンスターの出入りを防いでおくから、君たちはあの上を目指すといい」
「うん、じゃあ、また会おうね!わたしのクローンさん!」
リリアンが手を振って階段へ向かう。
「……クローンは君だよ…」
ぼそっとつぶやくアーリ。
「クローン?」
…とラフィンが聞いてきたので、先ほどのアーリの説明と王国の言い伝えを女王が話す。
「な、なるほど…?」
一斉に情報が入ってきて、整理しきれない。
共有はできた…のか?
とりあえず、リリアンを追って螺旋階段へと向かおう。
途中何も起こらず、難なく階段を登りきった全員。
そこにはミリアを抱いたハルカが宙に浮かんでいた。
「あら、お邪魔虫が入ってきちゃった」
ハルカが一気に不機嫌な顔つきになる。
「じゃあ、ここで決着をつけましょうか~ミリアっ」
人差し指を立てて、ミリアの口に付ける。
「サルバトルマズルカベータ」
【契約を、ここに】
その瞬間、ミリアはハルカのもとから離れ床に落ちた。
そして再び浮き、操り人形のように手足をぶらぶらさせる。
「…これでミリアは私の眷属…永遠に、私のものよ!」