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てちゃんのしろ  作者: おはぎ
21/54

第21話 偽物の心

ハルカは悪夢を見て、早起きした。



「念願の早起き…こんな形で…」


けだるげに体を伸ばす。


(現実くらいは良い一日になればいいな…悪夢はもうこりごり!)


「あれ!ハルカ今日は早起きだね!」


ラフィンは、もうバッチリ目が覚めている。


一体何時から起きているのか。





ハルカたちは悪夢のことなどを話しながら、朝ごはんを食べた。


そして昼間になると、ハルカ・ミリア・レイア・ラフィンは草原のモンスター退治に出かけた。



「あっ!」


ラフィンが突然立ち止まる。


「どうしたの?」


ハルカが聞くと、ラフィンは言った。



「魔法全部忘れた!」



全員にとって、この発言は今までで一番衝撃的だった。



「忘れた!?」




全員で考えた末思い付いたのは、「ラフィンを復活するまで休ませる」。



「みんな、おやすみー…」


皆と居られないことが気に食わなさそうだ…


ひとり部屋に戻り、ラフィンは眠る。




…見える範囲は退治し終わった。


「これで今日のモンスター退治は終了ですね」


「レイア、みんなも、お疲れさま!」


ハルカがそう言いながら、ミリアの背中をなでる。


「ちょ、やめてよ…!」


「えっへへー」


ハルカとミリアが楽しそうにしている中。


突然、辺りが闇に包まれた。



「な、なに!?」


全員は周囲を警戒し、後ずさりする。



「…我ハ神々ノ王ヲ探ス者」


魔法で切り裂かれた空間から、影のような全身が黒い物体が現れる。


黒い影は、神々の王の居場所はどこかと聞いてくる。


ハルカとミリアは影を恐れ、返事ができない。


(ミリア、な、な、なにあれ!)


(知らないわよ、ハルカっ…!)


(これは厳重に警戒したほうが良さそうです…)


レイアは、いつでも攻撃に対応できるよう刀を構えている。



「お、王様は知らないよ!」


ハルカがやっと恐怖を乗り越え、言った。



その瞬間、影はハルカを食らおうとする。


「危ない!ミンスルタカテクキテイア!」


「いったた…ありがと…」


ミリアの魔法で、ハルカは軽い傷で済んだ。



「ハルカに何をするの!」


影がゆっくりミリアに近づく。



すると、影が何者かの力によって闇の外へ吹き飛ばされた。


「グ……!」


「な、なになに!?」


ハルカは突然のことに、思わず飛び跳ねてしまう。


先ほどの影はいなくなった。


だが、影はいくら吹き飛ばされても次々と湧いてくる。


「フフフ……」


復活するどころか、どんどんと増えていく。


「ミツケタ」


影は誰も対応できないような速さで、全員を食らってしまった。



「え…?今、何が…」


一瞬の出来事で、何が起こったのか分からない。



見回すと、ハルカ達は牢屋に閉じ込められているのがわかった。



「え…どうするのよ、これ…!」


ミリアは力ずくで脱出しようと試みる。


しかし、牢屋は頑丈にできていて開かない。


「助けを待つしかないの…?」


ハルカは置いてきたラフィンの事が心配になった。


…レイアは何故か寝ている。


気絶しているのだろうか。





…一方、部屋にいたレイル・リオネス・リリアンは急に外が暗くなったのを見て、外に出た。



「何あれ!?」


レイルが闇の塊を見つけた。


ハルカ達を閉じ込めている檻だ。



全員は闇へと入ろうとした。


すると目の前に、なんとリーズンが立ちはだかった。



「久しぶりだな」


挨拶を返す暇も与えず、リーズンが拳でリリアンに襲いかかる。


「…元気そうで何より!」


リリアンは剣で守るが、体ごと押し飛ばされた。



「うっ…」


「どうした、全く力が無いな」


(見た目からして絶好調かと思ったが…今のリリアンの力は失う前の百分の一にも満たない…)


「弱い者に興味は無いのだが…お前との決着をつけるなら本気で戦いたい。ライバルだからな」



…気が付くと、その空間はリリアンとリーズンだけになっていた。



「ライバルじゃない…認めたくない…」


「あの時は決着がついたと思ったが…邪魔が入って残念だったな」


「いや…思い出させないで…」



リリアンは頭を抱えてうずくまる。




リーズンがしゃがんで目線を合わせ、言った。



「その傷、まだ治っていないのだろう」


「…あ………」





あの時…


世界をかけた決戦のとき…


私はリーズンに胸を突き刺されてしまった。


それで決着がついたんだ。



「リリアン!」


「お姉ちゃん…私が…いなくなっても…元気でいて…ね」


私はリオネスに抱かれて死んだ。


…はずだったが、何故か生きていた。


理由は分からない。


でも、その時の傷は今も痛んでいる。




リーズンが星も何も無い闇を見上げて話す。


「そういえば、お前は自分の事だけで他の奴の事を考えないよな…。とんだクソ野郎だ。良心の欠片も無い」



「クソ野郎にクソ野郎と言われる日が来るなんて…」


リリアンはよろめきながら立ち上がった。


「…ああ、でも初めて会った時のあの優しさは本物だったな」




「あれは偽善だよ」


リーズンはその言葉を聞いた瞬間、驚いた顔でリリアンを見た。


「…いや、それは嘘だ。あのお前の行動には、心の底からの優しさを、感じたんだよ。」


リリアンを説得するように、リーズンは語りかける。


「そこには幸せが溢れていた。一生の思い出だ」


両手を広げ、闇の空を仰ぐ。



「はあ」


リリアンはきょとんとしている。


「お前も感じただろ、幸せを。あの時感じていなくても、他の思い出で幸せを感じた事くらいはあるだろう」


「思い出…幸せ…」


リリアンは目を閉じ、沢山の記憶の中から、思い出を探す。





「なんで…おねえちゃん…どうして……あ、わかった…わたしが…」




「お前にこれを知る権利は無い。その訳は教えてやる。お前が…」




「あなたに手紙が届きました。読みますね……こんにちは。今日があなたにとって最悪の一日になるよう願っています。なぜなら…」




「ごめんね?なんでこんな事したかって?理由は…」




「わたし、あなたきらい、どうして?…」




「…どうしようもないクズだからだ」





思い出せば思い出す程、嫌な思い出だけがよみがえってくる。



「どうだ、幸せ、見つかったか?」



「………見つからなかった…」




リリアンは気付いてしまった。


「…私は、幸せを感じられない。幸せを分け与える事もできない」




リーズンはまた驚く。


「面白い冗談だ…」



一呼吸置いてから、再び話し出す。


「あの優しさは、嘘なのか?」


「嘘だよ」



「ふむ…」


「まだ信じられん。確かに感じたんだぞ……もし嘘だとしたら…」




「お前の心は、どうなっているんだ?」

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