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てちゃんのしろ  作者: おはぎ
19/54

第19話 決戦

…ソウル。


そのモンスターは100年前から存在し、世界を幾度も恐怖に陥れた。


普段はプレテキテラのあった場所に住んでいるが、時々人の住む草原などに現れる。


そして、立ち向かった者達は全員生還できなかったという。



ハルカは、ここで冒険が終わらない事を願っていた。


もちろん、他の者たちもそう思っている。


今から始まる戦いで、命を落とす者がいるかもしれない…。



…全員は覚悟を決めて、ソウルの前に立ちはだかった。




「……」


ソウルの姿は翼を生やした人間のようで、頭は眩しく光っていて、直視ができない。


全身が黒く包まれ、手足が霊のように透けている。



「………」


ハルカの額から、汗が流れる。



「…行こう」


そう言ったラフィンもまた、内心では怯えていた。



「…みんな、順番に攻撃して、効く攻撃を探しましょ」


ミリアが細かく指示を出す。



「最初は…私!」


ザッザッ!


ハルカが飛び出していく。


(お父さん…お母さん…お兄ちゃん…私、頑張るから、見ていて…!)



ハルカが深く息を吸い、両手を構えた。



それをミリアは固唾をのんで見守る。


(ハルカ、がんばって)


ハルカは神経を研ぎ澄まし、手に魔力を集中させる。


キッとソウルを睨む。



「…バルデニテンステンスッ!」



……


…炎が出てこない。



「な、なんで…」


ハルカだけでなく、全員は気付いた。


ソウルの近くでは魔法が使えないのだ。



全員は絶望する。



「どうしよう…魔法が使えないなんて…このままじゃ、王国が滅んじゃう…」


ラフィンはこれまでにないほどの、悲しみの顔を見せた。



…すると、リリアンが鍔に美しい装飾が施された二つの剣を取り出し、ソウルに向かって高く飛び上がった。



「えっ…リリアン!?待って!!」


ハルカはリリアンが死んでしまうのではないかと思い、追いかける。


(私だって、飛べるはず!)


全身に力を込めて高くジャンプすると、段々とリリアンに追い付いてきた。


(…よし…!)


体が浮いているのがわかった。


飛ぶことができたのだ。


ハルカは必死に手を伸ばし、リリアンの腕を掴む。



「リリアン!やめて!お願い!」


…リリアンは首を横に振った。



掴んだ腕から手が離れていってしまう。



「いや!リリアン!」


ハルカの言葉を聞かず、リリアンがソウルに剣を降り下ろした。



「……!…!」


…空間が歪む。


これがソウルの声なのだろうか。




その瞬間、ソウルにリリアンが薙ぎ払われた。


腕から生えたトゲがリリアンの身体を裂く。



「リリアンッ!!」


それを見たハルカが必死で助けに行った。



ソウルは傷が全て治り、次の攻撃に備える。



ハルカが、落ちていくリリアンの両手を掴んで、地上にゆっくり降りた。



「リリアン!リリアン!」



リリアンは気を失っている。



「生きてる…よね…!ね!?」




「うーん…」



すぐに目を覚ましたが、傷は深い。



「もう無茶しないでね」



ハルカは、リリアンを力強く抱きしめていると、気付いた。



傷がもう治ってきている事に。



「わ!ちょっと!あぶない!」



ハルカがあまりにも強く押すので、二人は倒れた。



リリアンはハルカの下敷きになってしまった。



「ごめんけど、下敷きになってくれて助かった…」



ハルカはリリアンの上で寝転んでいる。



「痛いから降りてくれないかな…」



「はーい」




「遊んでる場合じゃないわ。こっちに向かって来てる」



遠くからゆっくりとソウルが近づいてくる。



「戦える人は戦って」



ミリアの指示で、魔法以外で戦えるレイアとリリアンが、ソウルの方へ向かっていった。




レイアがソウルに斬りかかる。



「秘技・楼月」



美しい斬撃で、ソウルは動けなくなった。



「やーっ!」



そして、リリアンがソウルを斬り刻む。



大きな傷を負い、何もできなくなったソウルに、光が集まっていく。



自爆をするつもりだ。



巻き込まれないよう急いでハルカ達のもとへ戻る。




「ソウルがもうすぐ爆発する。逃げて」



レイアの言葉を聞いたハルカ達は、急いで部屋に帰った。



帰ってすぐに、外から爆発音がした。



見ると、ソウルの姿は無かった。




「やった…倒したみたい!」



ハルカ達は一つの試練を乗り越えた。



「みんな!お疲れ様!」



今夜はお祝いパーティーだ。

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